第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会...

48
臨床血圧脈波研究会   15PWV/ABI と中心血圧・ AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・ IVRセンター長) 当番世話人 プログラム・抄録集 日本高血圧学会生涯教育講演会

Transcript of 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会...

Page 1: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

臨床血圧脈波研究会   第15回PWV/ABIと中心血圧・AI基礎から臨床・予防への応用まで

吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

当番世話人

プログラム・抄録集

日本高血圧学会生涯教育講演会

Page 2: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

演題発表プログラム

10:00〜 開会挨拶 吉川 公彦奈良県立医科大学放射線医学教室・IVRセンター

10:05〜 高得点演題

【座長】今井 潤東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想講座

河盛 隆造順天堂大学大学院スポートロジーセンター

10:05〜10:17 H-1 新たな動脈スティフネスの指標としての足関節上腕血圧比(ABI)-OPAD Study- 石田 明夫

琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学 4

10:17〜10:29 H-2 中心動脈圧、AIと眼底異常との関連:the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS) 崔 仁哲

大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 5

10:29〜10:41 H-3 積分化したFMD値の低下はbaPWV高値に関連し、ハイリスク高齢者の心血管イベント発生の予測因子である 甲谷 友幸

自治医科大学内科学講座循環器内科学 6

10:41〜10:53 H-4 日本人一般男性集団において冠動脈石灰化の同定に最適なbaPWVのカットオフ値:SESSA 鳥居 さゆ希

滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門 7

10:53〜11:05 H-5 高血圧患者における高食塩摂取は血管内皮機能障害と関連する 今泉 悠希自治医科大学内科学講座循環器内科学部門

8

11:05〜11:17 H-6 高血圧患者の起立時血圧上昇と早期動脈硬化危険因子との関連 金田 真澄和歌山県立医科大学

9

11:20〜 特別講演【座長】島田 和幸

地方独立行政法人新小山市民病院

11:20〜12:10 The ankle-brachial index: the ubiquitous marker of atherosclerosis and cardiovascular prognosis VICTOR ABOYANS

Department of Cardiology, Dupuytren University Hospital10

12:10〜 ランチョンセミナー 共催:カルピス株式会社【座長】重松 宏

国際医療福祉大学臨床研修医学研究センター山王メディカルセンター

12:10〜13:10 ASO診療と脈波 ―血管外科の立場から― 宮田 哲郎山王病院・山王メディカルセンター

14

13:10〜 休 憩

13:25〜 ポスター演題A【座長】宗像 正徳

東北労災病院治療就労両立支援センター

13:25〜13:32 P-1 原爆被爆者における末梢動脈疾患の有病率 高橋 郁乃放射線影響研究所臨床研究部

16

13:32〜13:39 P-2 「フォルム診断サポートシステム」によるPAD検出率の向上について 岩越 真一

奈良県立医科大学放射線科・IVRセンター17

13:39〜13:46 P-3 下肢閉塞動脈硬化症(PAD)患者を対象としたABI測定時の痛みの評価と看護の必要性 上西 和代

奈良県立医科大学附属病院看護部18

13:46〜13:53 P-4 バスキュラーラボでの脈波および超音波計測指標による動脈硬化評価の試み 春日 靖洋

医療法人仁心会宇治川病院検査室19

13:53〜14:00 P-5 若年男性における動脈壁硬化と早食いの密接な関係 服部 朝美東北労災病院生活習慣病研究センター

20

14:00〜14:07 P-6 高い全身持久力を有する者ではbaPWVの上昇が小さい-2年間の縦断的観察研究- 丸藤 祐子

(独)国立健康・栄養研究所21

13:25〜 ポスター演題B【座長】 冨山 博史東京医科大学循環器内科

13:25〜13:32 P-7 高齢者において動脈スティフネスの進展は冠動脈石灰化と有意に関係する 櫻木 悟

国立病院機構岩国医療センター循環器内科22

13:32〜13:39 P-8 非肥満者における血圧脈波検査と内臓/皮下脂肪面積測定の意義 小山 晃英京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学

23

13:39〜13:46 P-9 高血圧症例における脈波速度と血流依存性血管拡張反応の関連の検討 木村 一貴

東京医科大学循環器内科24

13:46〜13:53 P-10 円錐動脈幹異常(conotruncal anomaly heart disease; CAHD)におけるpulse wave velocity(PWV)の検討 浅田 大

京都府立医科大学小児循環器腎臓科25

13:53〜14:00 P-11 粥状硬化進行に伴い大動脈局所脈波速度と大動脈脈波速度との関係は保持されるか―ウサギでの実験的検討― 勝田 新一郎

福島県立医科大学医学部細胞統合生理学講座26

13:25〜 ポスター演題C【座長】江口 和男

自治医科大学内科学講座循環器内科学部門

13:25〜13:32 P-12 2型糖尿病患者において上腕血圧は中心血圧よりアルブミン尿とより強く関連する 北川 功幸

京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学27

13:32〜13:39 P-13 成人男性における脈圧増幅と肥満の関連-脈圧増幅の評価部位に着目した検討- 吉川 徹

筑波大学大学院スポーツ医学専攻28

13:39〜13:46 P-14 呼吸状態変化が脈波波形に与える影響 ~息止めと深呼吸の影響について~ 北脇 知己

関西医科大学医学部29

ページ▼

Page 3: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

13:46〜13:53 P-15 成人先天性心疾患患者は血圧が高い 村上 智明千葉県こども病院循環器内科

30

13:53〜14:00 P-16 橈骨動脈波波形解析とPWVとの併用意義の検討 宮下 洋自治医科大学健診センター

31

14:15〜 フィーチャリングセッション 末梢動脈疾患(PAD)の評価と診療

【座長】吉川 公彦奈良県立医科大学放射線医学教室・IVRセンター

鈴木 洋通武蔵野徳洲会病院

14:15〜14:30 F-1 “Steno-Stiffness Marker” の概念とForm ABI/PWVを用いた動脈硬化疾患診療フローチャート 山科 章

東京医科大学循環器内科32

14:30〜14:45 F-2 末梢動脈疾患(PAD)の評価と診察波形解析指標(% MAP、UT)を用いた評価 吉川 公彦

奈良県立医科大学放射線医学教室・IVRセンター34

14:45〜15:00 F-3 PAD早期診断指標として、脈波UT延長がABI低値に先行する-縦断的検討から 沢山 俊民

さわやまクリニック、川崎医科大学循環器内科36

15:00〜15:15 F-4 足関節上腕血圧比と上腕-足首脈波伝播速度による糖尿病患者の全死亡、心血管イベントの予測アルゴリズム:九州動脈硬化予防研究 前田 泰孝

九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点37

15:15〜15:30 F-5 末梢動脈疾患と心血管病発症の関係:久山町研究 二宮 利治九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター

38

15:30〜 特別報告【座長】河野 雄平

帝京大学福岡医療技術学部医療技術学科

15:30〜15:45 上腕―足首間脈波速度の予後予測指標としての有用性検証のメタ解析(individual participants meta-analysis):その進捗状況 冨山 博史

東京医科大学循環器内科39

15:45〜 休 憩

16:00〜 CVTセッション 動脈硬化診療にABIを活かす【座長】松尾 汎

医療法人松尾クリニック40

16:00〜16:15 C-1 CVTからみたABI検査の実際とピットフォール 三木 俊東北大学病院生理検査センター診療技術部生理検査部門

41

16:15〜16:30 C-2 CVTナースからみたABIの位置づけ 溝端 美貴独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院

43

16:30〜16:45 C-3 脈管専門医からみたABIの位置づけ 濱口 浩敏北播磨総合医療センター神経内科

45

16:45〜17:00 【総括】 松尾 汎医療法人松尾クリニック

17:00〜 高得点演題表彰・閉会挨拶

吉川 公彦奈良県立医科大学放射線医学教室・IVRセンター

高沢 謙二東京医科大学病院健診予防医学センター

17:00〜17:10

※「特別講演」は英語の講演にて、同時通訳が入ります。

Page 4: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

高得点演題

4

■ 目 的

人間ドック受診者ではABIは若年者ほど低く、60歳代まで加齢に伴い上昇していた。つまり、加齢に伴う収縮期血圧上昇は上腕より足関節で急峻であった。そこで、下肢動脈狭窄がない場合、ABIは加齢や動脈スティフネスの進行で上昇し、ABI高値が動脈スティフネスによる臓器障害と関連するという仮説を検証した。

■ 方 法

人間ドックでABI検査を受けた者(21-89歳)を対象とした。検尿受診者13,193名を解析し、試験紙法で蛋白尿を評価した。心電図検査受診者13,203名を解析し、ミネソタコードで左室肥大を評価した。頭部MR検査受診者990名を解析し、脳内微小出血を評価した。

■ 結 果

蛋白尿、左室肥大、脳内微小出血の陽性群は、それぞれ陰性群よりABI値が有意に高かった。蛋白尿の有病率は、正常高値群(1.2≦ ABI <1.4)は正常群(1.0≦ ABI <1.2)より多く、多変量調整オッズ比は、60歳未満では正常高値群のみが正常群より有意に高かった。左室肥大の有病率は、正常高値群は正常群より多く、多変量調整オッズ比は、正常高値群は正常群より有意に高かった。脳内微小出血陽性に対するカットオフABI値は1.12で、多変量調整オッズ比は、 ABI ≧1.12で有意に高かった。

■ 結 論

非高齢者では、ABI正常高値は蛋白尿、左室肥大、脳内微小出血と関連していた。ABI低値は下肢動脈狭窄の指標であるが、非高齢者では、ABI高値が動脈スティフネス進行とその臓器障害の指標となる可能性がある。

○石田 明夫1)、金城 よしの1)、當間 裕一郎1)、金城 幸善2)、井関 邦敏3)、大屋 祐輔1)

1) 琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学、2) 沖縄県健康づくり財団、3) 琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部

新たな動脈スティフネスの指標としての足関節上腕血圧比(ABI)-OPAD Study -

H-1

Page 5: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

5

高得点演題

■ 背景と目的

高血圧と眼底の動脈硬化性変化との関連が報告されている。しかしながら、中心動脈圧・AI との関連についての成績は限られている。

■ 方 法

本研究は、CIRCS対象地域の大阪府Y市M地区、秋田県I町と茨城県T市K地区において、2010年1月~ 2011年6月の間に循環器健診受診者中40-79歳の男女3,002人を対象に、中心血圧測定装置(HEM-9000AI、オムロンコーリン社製)を用いて中心動脈圧・AIを測定した。眼底異常は高血圧性変化または動脈硬化性変化(Scheie's分類Ⅱ度以上)とした。糖尿病は、空腹時血糖値7.0mmol/L以上とし、非空腹時血糖値11.1mmol/L以上または治療者とした。高血圧者は、上腕血圧により、収縮期血圧値140mmHg以上、拡張期血圧値90mmHg以上、または降圧剤服薬者とした。中心動脈圧値・AI値を3分位に分け、低値群を基準とし、眼底異常のオッズ比を算出した。さらに、上記の関連について性別、年齢(<65歳vs ≧65歳以上)、高血圧・糖尿病の有無別に解析した。解析において、年齢、性、地域とその他の循環器疾患のリスクファクターを調整した。

■ 結 果

中心血圧値・AI値の低値群に比べ、高値群での多変量調整の眼底異常のオッズ比(95% CI)は、それぞれに2.8(1.5-5.1)と1.8(1.0-3.3)であった。上記の関連は、年齢低値群、非糖尿病群と高血圧群において明らかであった。

■ 結 論

中心血圧・AIが循環器疾患リスクファクターと独立して眼底異常と関連することが示された。

○崔 仁哲1)、Gero Krisztina1)、劉 克洋1)、山岸 良匡2,3)、梅澤 光政4)、今野 弘規1,3)、 大平 哲也3,5)、木山 昌彦3)、岡田 武夫3)、北村 明彦1,3)、山海 知子6)、磯 博康1)

1) 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学、2) 筑波大学医学医療系社会健康医学、3) 大阪がん循環器病予防センター、4) 獨協医科大学公衆衛生学、5) 福島県立医科大学医学部疫学講座、6) 筑波大学大学院地域健康学

中心動脈圧、AI と眼底異常との関連:the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS)

H-2

Page 6: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

高得点演題

6

■ 目 的

我々は積分化したFMD値(FMD-AUC)が心血管リスクに関連することを報告しているが、動脈硬化の指標や予後との関連は不明である。本研究の目的はFMD-AUCと動脈硬化、予後との関連を調べることである。

■ 方 法

心血管リスクをもつ706名(平均63±12歳、男性55%) を対象とした。連続測定できるFMD機器で従来のΔFMDと120秒までの積分値(FMD-AUC120)を測定した。ΔFMD, FMD-AUC120を3群に分け、baPWV,総死亡および心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、入院を要する心不全)を比較した。

■ 結 果

FMD-AUC120低 値 群(FMD-AUC120<5.6, N=235) は 高 値 群(FMD-AUC120≧12, N=240)よりbaPWVが高値 (1652±314 vs. 1524±282 cm/s, p=0.023)で,ΔFMD低値群(ΔFMD <4, N=236)は高値群 (ΔFMD≧6.4, N=236)よりbaPWVが高値であった(1656±363 vs. 1539±319 cm/s, p=0.046)。平均34±24か月で11例の死亡、38例の心血管イベントが発生した。FMD-AUC120, ΔFMDとも3群で有意差はなかったが、65歳で分けると, 65歳以上でFMD-AUC120低値群は総死亡(Log rank 4.93, p=0.026)、心血管イベント(Log rank 4.69, p=0.030)と関連し、年齢・性を補正後も有意であった(総死亡:5.26倍, 95% CI 1.05-26.32;心血管イベント2.40倍, 95%CI 1.08-5.32)。

■ 結 語

FMD-AUC120低値はPWV高値に関連し、65歳以上で心血管イベントの予測因子であり、心血管リスクを持つ患者のサロゲートマーカーとして有用な可能性が示唆された。

○甲谷 友幸、星出 聡、苅尾 七臣自治医科大学内科学講座循環器内科学

積分化した FMD値の低下は baPWV高値に関連し、ハイリスク高齢者の心血管イベント発生の予測因子である

H-3

Page 7: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

7

高得点演題

■ 目 的

上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)は動脈壁硬化の指標である。一方、冠動脈石灰化(CAC)は有用な潜在性動脈硬化指標である。本研究では、日本人男性の断面調査の成績からCACの同定に最適なbaPWVのカットオフ値を検討した。

■ 方 法

滋賀県草津市住民から無作為抽出した40 ~ 79歳男性のうち、心血管病の既往のない986名を対象とした。baPWVを四分位で分け(<1378、1378-1563、1564-1848、1848cm/秒)、 CACとの関連を検討した。他の心血管病危険因子を調整した多重ロジスティック回帰分析も行った。さらにROC解析を行い、左上隅からの距離およびYouden indexを用いてCACの同定に最適なbaPWVのカットオフ値を検討した。

■ 結 果

CAC陽性率は、baPWV最低群で20.7% 、第二分位群で41.3% 、第三分位で55.9% 、第四分位で66.7%と、baPWVの上昇とともに有意に増加した(P trend<0.001)。多重ロジスティック回帰 分 析 に お い て もbaPWVの 増 加 と と も にCACの リ ス ク は 有 意 に 上 昇 し た(P trend=0.04)。ROC解析において、左上隅からの距離が最小かつYouden indexが最大となるbaPWVのカットオフ値は1612cm/秒(感度0.61、特異度0.70)であった。

■ 結 論

日本人男性において、baPWVは他の危険因子と独立してCAC陽性と関連していた。CACの同定に最適なbaPWVのカットオフ値(約1600cm/秒)は、高血圧治療ガイドライン2014において心血管病のリスクが上昇する閾値とされる1800cm/秒よりも低かった。

○鳥居 さゆ希1)、有馬 久富1,2)、門田 文1,2)、久松 隆史1,2)、門脇 紗也佳1)、鈴木 仙太朗1)、 高嶋 直敬1)、藤吉 朗1)、大久保 孝義3)、三浦 克之1,2)、上島 弘嗣1,2)

1) 滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門、2) 滋賀医科大学アジア疫学研究センター、3) 帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座

日本人一般男性集団において冠動脈石灰化の同定に最適な baPWVのカットオフ値:SESSA

H-4

Page 8: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

高得点演題

8

■ 目 的

Flow-mediated dilation(FMD)による血管内皮機能は早期血管障害を反映し古典的心血管リスクとは独立した予後指標である。減塩でFMD値が改善したとの報告はあるが、少人数や心血管低リスク者での研究である。高食塩摂取の中高年高血圧患者にて食塩摂取量とFMD値が関連するかどうか本研究を行った。

■ 方 法

自治医大附属病院もしくは関連病院通院中の高血圧患者221名を対象とした。食塩摂取量の指標は早朝随時尿による塩分排泄量推定値とした。血管内皮機能の指標は上腕動脈で測定したFMD値のうちFMD(%)、阻血解除120秒後の血管径変化量積分値(FMDAUC120)] とした。独立変数を年齢、性、BMI、外来収縮期血圧、食塩摂取量、喫煙、糖尿病、脂質異常、従属変数をFMD各指標とし重回帰分析を行った。

■ 結 果

対象者は平均61.2歳、女性は55.1%であった。食塩摂取量は平均9.5g/日で、FMD(%)、FMDAUC120と関連した(全てp<0.01)。重回帰分析でも食塩摂取量とFMD(%)(β=-0.20、p<0.01)、FMDAUC120(β=-0.24、p<0.01)は関連した。ベースライン径で補正後も食塩摂取量とFMD(%)(β=-0.13、p<0.05)、FMDAUC120(β=-0.19、p=0.01)は有意に関連した。

■ 結 論

高血圧患者における高食塩摂取は他の危険因子と独立して血管内皮機能障害と有意に関連した。血圧や他の危険因子がコントロールされた状態でも食塩摂取量の評価は臨床的に重要と考えられた。

○今泉 悠希、江口 和男、甲谷 友幸、苅尾 七臣自治医科大学内科学講座循環器内科学部門

高血圧患者における高食塩摂取は血管内皮機能障害と関連する

H-5

Page 9: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

9

高得点演題

■ 目 的

起立負荷検査で血圧の過剰低下は心血管疾患のリスクが高いとされるが、簡便な起立負荷検査と心血管疾患リスクとの関連をみた研究は少ない。本研究では、地域住民を対象に簡便な起立負荷検査による血圧上昇と早期動脈硬化危険因子との関連を検討した。

■ 方 法

対象は特定健診受診者のうち、簡便な起立負荷検査を実施した351名(平均年齢60.4±8.7歳)の高血圧患者で、座位(2分)→立位(2分)→座位(1分30秒)の簡便法で行った。検査中は血圧、心拍数を1分おきに自動測定し、R-R間隔変動係数(CVRR)、交感神経指標(LF/HF)、副 交 感 神 経 指 標(CCVHF) を 記 録 し、 自 律 神 経 機 能 を 評 価 し た。BMI、SBP、DBP、baPWV、SBP2、Mean-IMTを早期動脈硬化危険因子とした。

■ 結 果

起立時の血圧変動は、正常血圧反応283名、起立性低血圧(OH:ΔSBP≦-20mmHg)30名、起立性高血圧(OHT:ΔSBP≧10mmHg)38名であった。OHT群では、ΔSBP(15.0 vs-3.25mmHg;p<0.0001)、ΔDBP(3.3 vs -0.27mmHg;p<0.001)、安静時SBP(145.4 vs 138.7mmHg;p=0.002)、SBP2(134.6 vs 125.9mmHg; p=0.001)、baPWV(1757 vs 1637 mm/s;p=0.014)、立位LF/HF(6.17 vs 3.86;p=0.015)、立位CVRR(2.95 vs 2.56 ; p=0.031)がOHT(-)群に比べて有意に高値であった。

■ 結 論

簡便な起立負荷検査で血圧上昇群ではSBP,SBP2,baPWV,LF/HF, CVRRが有意に高値であり、起立負荷時の血圧上昇は早期動脈硬化危険因子と関連することが示唆された。

○金田 真澄、宮井 信行、山本 美緒、岡 檀、内海 みよ子、志波 充、有田 幹雄和歌山県立医科大学

高血圧患者の起立時血圧上昇と早期動脈硬化危険因子との関連

H-6

Page 10: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

10

特別講演

The ankle-brachial index:the ubiquitous marker of atherosclerosis

and cardiovascular prognosis

【講師】VICTOR ABOYANS, MD, PhD, FESC, FAHA

Department of Cardiology, Dupuytren University Hospital, 2, Ave. Martin Luther King, 87042, Limoges, FRANCE

CITIZENSHIP: FRANCEMedical License number (N° inscription à l’ Ordre des Médecins de la Haute-Vienne): 87/2605RPPS (National Prescription Reference Number): 10002939808EDUCATION:1. Limoges University, Limoges, France (2008): National Diploma of Habilitation to Conduct

Research (Habilitation à Diriger des Recherches).2. Paul Sabatier University, Toulouse, France (2001): Doctorate of Philosophy (PhD) in Public

Health. Thesis: Analysis and development of non-invasive criteria for the definition of peripheral artery disease in the setting of epidemiology.

3. Paul Sabatier University, Toulouse, France (1998): Master of Public Health. Thesis: Definition of peripheral artery disease in epidemiology.

4. Limoges University, School of Medicine, Limoges, France(1995): Doctorate of Medicine (MD). Thesis: The prevalence of sleep apnea syndrome after myocardial infarction.

5. Limoges University, Limoges, France (1993): Bachelor of Science.6. Parc Imperial High School, Nice, France (1983): High-School Diploma (Baccalauréat)PROFESSIONAL TRAINING:1. Post-Doctorate Research Fellow, University of California, San Diego, CA, USA; 04/05 – 04/06.2. Vascular Medicine Fellow, Limoges School of Medicine, Limoges, France; 11/95 – 11/963. Cardiovascular Medicine Residency, Limoges School of Medicine, Limoges, France; 05/92 – 11/954. General Medicine Residency, School of Medicine, Nice, France; 11/91 – 05/92.5. Medical Student Fellow, School of Medicine, Nice, France; 10/88 – 06/91ACADEMIC APPOINTMENTS – EMPLOYMENT HISTORY:1. Head of Dept. of Cardiology, Dupuytren University Hospital, 09/2013-present.2. Professor of Medicine, Chair of Cardiology, Limoges School of Medicine, 09/2011- present.3. Senior Staff Physician, Dept. of cardiology, Dupuytren University Hospital, 11/2010-09/2011.4. Senior scientist of research team INSERM 1098, Epidemiology of Tropical Diseases, Limoges

University, France, 06/2008-present.5. Senior Staff Physician, Dept. Thoracic & Cardiovascular Surgery and Angiology, Dupuytren

University Hospital, 05/01 – 10/2010.6. Assistant Clinical Professor of Medicine Professor, Dept. Thoracic & Cardiovascular Surgery

and Angiology, Dupuytren University Hospital, 05/97-05/01.7. Associate Physician, Dept. Thoracic & Cardiovascular Surgery and Angiology, and Dept. of

Cardiology, Dupuytren University Hospital, 11/95-05/97.CERTIFICATIONS/QUALIFICATIONS/LICENSURE:1. Medical English, University Diploma, Limoges, France, 2001.2. Cardiac Pacing, Joint University Diploma, Limoges and Bordeaux, France, 1998.3. Smoking Cessation Management, University Diploma, Paris XI, France, 1996.

Page 11: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

11

4. Echocardiography, University Diploma, Bordeaux, France, 1995.5. Human Nutrition, University Diploma, Limoges, France, 1993.PROFESSIONAL ORGANIZATIONS/COMMITTEES:1. French Cardiac Society (1995 – present) and President of the Thrombosis/Vascular Medicine

Working Group, 01/2012 – present. 2. European Society of Cardiology, 1995 – present, Fellow (FESC) since 2011.

a. Member of the Peripheral Circulation Working Group (01/08 – present), and member of the nucleus (2013-present).

b. Co-chair of the ESC Task Force for guidelines on the Management of Peripheral Artery Diseases (2011).

c. Co-chair of the ESC Task Force for Guidelines on the Management of Aortic Diseases (2014). d. Member of the Committee for Practice Guidelines (2014-present)

3. French Society of Vascular Medicine (formerly French Language Society of Angiology), 1996 – present: Member of the Scientific Committee, 09/07 – 01/12.

4. French College of Vascular Medicine Lecturers, 2003 – present.5. Ethical Committee of the Limoges University Hospital, 2006 – 2012.6. American Heart Association, 01/08 – present. International Fellow (FAHA): 2012.

a. Member of the Council of Epidemiology, 01/08 - presentb. Member of the IWG on Peripheral Arterial Disease, 01/08 - present.c. Chair of the Writing Group for the AHA Scientific Statement on the Standardization of the

Measurement and Calculation of the Ankle-Brachial Index (2012).d. International member of the PAD leadership committee (2013-2015).

7. Member of the Peripheral Artery Disease/Aorta Aneurysm expert group of the WHO-Global Burden Disease 2010 project.

Editorial Board MembershipVascular MedicineAnnales de Cardiologie et Angeiolologie (Paris)Le Cardiologue (Paris)(CME-journal)Publications: pubmed-referenced articles: 108, book chapters: 7, CME publications: 40.Top 10 publications:1. Aboyans V, et al. Subclinical peripheral arterial disease and incompressible ankle arteries are both long-term

prognostic factors in patients undergoing coronary artery bypass grafting. J Am Coll Cardiol 2005;46:815-20.2. Aboyans V, et al. Risk factors for progression of peripheral arterial disease in large and small vessels.

Circulation 2006;113:2623-9.3. Aboyans V, Lacroix P. Carotid Bruit : Good for the Silent Cardiovascular Disease? Lancet 2008;371:1554-6.4. Aboyans V, et al. The epidemiology of subclavian stenosis and its association with markers of subclinical

atherosclerosis: the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA). Atherosclerosis 2010;211:266-70.5. Aboyans V, et al. The general prognosis of patients with peripheral arterial disease differs according to the

disease localization. J Am Coll Cardiol 2010;55:898-903.6. Aboyans V, et al. Lower extremity peripheral artery disease in the absence of traditional risk factors. The

Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis. Atherosclerosis 2011;214:169-73.7. Tendera M (chair), Aboyans V (co-chair), et al. ESC Guidelines on the diagnosis and treatment of peripheral

artery diseases. Eur Heart J. 2011;32:2851-906.8. Aboyans V, et al. Measurement and Interpretation of the Ankle-Brachial Index: A Scientific Statement From

the American Heart Association. Circulation. 2012;126:2890-909.9. Erbel R (chair), Aboyans V (chair), et al; ESC Committee for Practice Guidelines. 2014 ESC Guidelines on

the diagnosis and treatment of aortic diseases: Document covering acute and chronic aortic diseases of the thoracic and abdominal aorta of the adult. The Task Force for the Diagnosis and Treatment of Aortic Diseases of the European Society of Cardiology (ESC). Eur Heart J. 2014;35:2873-926.

10. Aboyans V, et al; On Behalf the ESC Working Group of Peripheral Circulation. The year in cardiology 2014: peripheral circulation. Eur Heart J. 2015 (in press).

Page 12: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

12

特別講演

In physiology, systolic arterial pressure amplifies with increasing distance from the heart, so the ankles systolic pressure is naturally higher than in the arms. However, ankles pressure may drop in case of developed atherosclerosis in the lower limbs, this phenomenon being by far more rare in the arms. These are the basics for the use of the ankle/arm systolic pressure ratio, so called the ankle-brachial index (ABI) to diagnose lower-extremities peripheral artery disease (PAD). First described as a non-invasive method to diagnose lower extremity PAD, ABI has been subsequently identified as a marker of CV disease prognosis, since patients with PAD have frequently multifocal atherosclerosis and are at high risk of cardiovascular events and mortality.

The first description of the utility for comparison of ankles pressures to the ones measured in the arms for the diagnosis of PAD was based on invasive methods, but non-invasive methods for the determination of the ABI are described since 50 years ago. Despite, the measurement and determination of the ABI measurement have been only very recently standardized, through an international experts consensus presented as a scientific statement of the American Heart Association.

The standard mode of measurement requires a continuous wave Doppler device and a manual BP cuff. Further studies are still needed to definitely validate automatic oscillometric methods as alternatives. While ABI is traditionally calculated at each ankle by taking the highest pressure between the systolic BPs of the posterior tibial and dorsalis pedis artery divided by the highest systolic BP between both arms, the lower of the 2 lower limbs ABI is retained to assess CV risk of the subject. The ABI was the method used to address the public health consequences of PAD in the 2010 Global Burden Disease project lead by the World Health Organization.

One of the main interests of the ABI is in that many patients with PAD are asymptomatic for many years before occurrence of symptoms, while their cardiovascular events risk is already increased, so that the identification of these patients may lead to faster preventive strategies to reduce the risk of overt PAD and cardiovascular events. Nowadays, the epidemiology of PAD is mostly based on the measurement of the ABI in population. For the diagnosis of PAD, an ABI<0.90 has a moderate sensitivity but very specificity. The sensitivity can be improved by repeating the ABI after treadmill exercise. Patients with ABI at rest within the 0.91-1.00 range are considered as “borderline PAD” . It is recommended to repeat ankles and arms blood pressure measurements when ABI is within the 0.80-1.00 range, so to reduce measurement variability around the 0.90 threshold.

In an individual-based meta-analysis collecting data of about 45,000 individuals in general population, an ABI <0.90 is associated with increased risk of mortality. The ABI is able to improve the risk stratification provided by scores based on age, sex and risk factors (e.g. the Framingham Risk score). The risk of mortality/CV events increases with ABI<1.10, but becomes more significant and consistent below 0.90. Subjects with an ABI between 1.10-1.40 are at the

Page 13: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

13

lowest risk. In case of high (>1.40) ABI, the risk of total/CV mortality is also increased, but the arterial pressure cannot be accurately estimated, because of stiffened arteries occurring mostly in the elderly, or in diabetic patients or those with end-stage renal disease.

The ABI index is probably one of the cheapest methods which can be used everywhere, in every physician’ s office, worldwide. It can be measured by trained nurses, and the training period for accurate measurement is not extensive.

In Europe, its use is recommended as the first-line method for the diagnosis of PAD. However, despite the recommendations, its generalizability in daily practice can be improved. The main barriers for its wider use can be the absence of reimbursement of this test in most countries. Also, while the ABI is definitely acknowledged as a valuable cardiovascular prognostic marker, trials able to evidence the interest of this test to improve cardiovascular outcome after population screening for PAD are still awaited. Several studies on cost-effectiveness are underway.

Page 14: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

14

ランチョンセミナー 

ASO 診療と脈波 ―血管外科の立場から―

【講師】宮田 哲郎

山王病院・山王メディカルセンター

学 歴:昭和 54 年 3 月 東京大学医学部医学科卒業

職 歴:1979 年 6 月 東京大学第二外科において外科研修開始    1989 年 7 月 米国 Harvard 大学 Brigham and Women’ s Hospital research fellow (Vascular Surgery)    1998 年 4 月 東京大学大学院医学系研究科血管外科学講師    2003 年 11 月 東京大学大学院医学系研究科血管外科学助教授    2004 年 4 月 東京大学医学部附属病院血管外科診療科長    2012 年 7 月 東京大学医学部附属病院血管外科病院教授    2013 年 11 月 国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授 山王メディカルセンター血管病センター副センター長    2014 年 4 月 山王病院・山王メディカルセンター血管病センター長    現在に至る

学会活動: 日本血管外科学会(理事長、評議員、専門医)、日本心臓血管外科学会(理事、評議員、専門医)、日本脈管学会(理事、評議員、専門医)、日本静脈学会(理事、評議員)、日本外科学会(認定医、専門医、指導医)、日本フットケア学会(特別理事)、リンパ浮腫療法士認定機構(理事)、Asian Society for Vascular Surgery

(Councilor)、Japan Chapter of Society for Vascular Surgery(President)、Annals of Vascular Disease(Editor-in-Chief)、Surgical Case Reports(Associate Editor)など

Page 15: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

15

 高齢者や糖尿病患者の増加に伴い、本邦の ASO の患者数は数百万人とも推定されている。ASO は下肢動脈の慢性閉塞だが、動脈硬化症は全身に生じるため、冠動脈疾患や脳血管疾患を合併する頻度が高く、下肢血流障害に加え、健康寿命が短く生命予後が悪いという問題も抱えている。こういった背景から、冠動脈疾患(coronary arterial disease: CAD)や脳血管疾患(cerebrovascular disease: CVD)に対応して、末梢動脈疾患

(peripheral arterial disease: PAD)と呼称されることも多くなった。ASO の下肢症状は側副血行路の機能を反映しており、動脈本幹が閉塞しても側副血行路が充分発達している場合は下肢虚血症状が出現しない。側副血行路が歩行時に必要な血流を賄えないときに、歩行筋の張りや痛みが出現する。歩行のためには休息して筋肉の血流回復を待たねばならず、これを繰り返すのが間歇性跛行である。下肢の虚血が更に悪化すると、足趾に疼痛や潰瘍・壊死が生じる重症下肢虚血となる。人格が変わる程足全体が締め付けられる痛みが続く場合や、下垂で痛みが軽減するため睡眠も座位となり、浮腫で更に血流障害が悪化する場合がある。ASO で下肢血流を担っている側副血行路の機能評価が脈波検査である。ABI(足関節上腕血圧比;ankle brachial index)、%MAP(% mean arterial pressure:標準値 45% 未満)、UT(upstroke time:標準値 180msec 未満)も含めた下肢脈波検査は ASO の大変有用な診断手段となっており、本邦では自動測定装置が普及している。ABI の標準値は 0.90 ~ 1.40 だが、糖尿病や透析患者では、動脈の石灰化により ABI 値が正確に虚血を反映しない場合があり、%MAP や UT に加え、TBI(足趾上腕血圧比;toe brachial index)を併用して診断する。足趾血圧は足関節部血圧より 20 ~ 40mmHg 低く、TBI は 0.7 未満で血行障害と判定する。精密検査にも脈波が使用されており、間歇性跛行ではトレッドミル歩行負荷検査後の足関節血圧低下の程度を評価する。重症下肢虚血では皮膚血流評価法の皮膚潅流圧測定を行う。脈波による機能検査に加えて、CTA や MRA など画像検査(閉塞部位検査)を実施して治療方針を決定する。ASO の治療目的は、生命予後を改善することと、下肢虚血を克服して QOL を改善することである。症状にかかわらず、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症といったリスク因子のコントロールと抗血小板薬投与を行い、動脈硬化進展を防止し、脳心血管イベントを減らし生命予後の改善を図ることが治療の基本である。ABI は動脈の閉塞のみならず、生命予後予測因子の役割も注目されており、2011年の ACCF/AHA ガイドラインでは 65 歳以上の高齢者、50 歳以上の糖尿病患者と喫煙者で ABI 測定が推奨されている。ABI で診断された無症候性 ASO に対する脳血管イベントの抑制治療についての検討もなされている。間歇性跛行治療の第一選択は運動療法で、薬物治療と合わせた保存治療で 8 割以上が軽快する。疼痛のため歩いてはいけないと誤解しているので、患者には歩行運動の重要性を強調する必要がある。生命予後と異なり、間歇性跛行肢の下肢の自然予後は良好なため、切断予防を目的とした血行再建は不要であり禁忌である。保存的治療にもかかわらず日常生活に制限が残る場合に、患者の希望で血行再建を検討する。一方、重症下肢虚血の場合は、放置すると切断となる危機に直面しているために、血行再建が治療の第一選択である。しかし、合併する重篤な冠動脈疾患や脳血管疾患などで血行再建ができない場合も少なくなく問題である。血行再建には従来からある外科的血行再建に加え、血管内治療が低侵襲治療として発達してきた。それぞれの治療が適した病態が明らかになってきている。血行再建後の患者追跡にも脈波検査が低侵襲で重要な役割を担っている。

Page 16: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

16

■ 目 的

日本では65歳以上の高齢者人口の割合が2割を超え、高齢化が進んでいる。同時に生活様式の変化が社会の疾病構造を変え、動脈硬化性疾患が増加している。末梢動脈疾患(PAD)は加齢や糖尿病を背景とした動脈硬化性疾患であり、今後も増加すると考えられるが、日本人の発生頻度に関する疫学調査報告は殆どない。放影研は成人健康調査とよばれる臨床研究により、2万人以上の原爆被爆者を対象に、50年以上、2年毎に健康診断を実施し、放射線が健康に及ぼす影響を評価している。近年なお生存者の約70%の協力が得られている。我々は2010年からの健診サイクルで、一般的な健康診断項目に加え、足関節上腕血圧比(ABI)を測定した。現在データ整理の段階であるが、得られたデータから原爆被爆者におけるPADについて報告する。

■ 方 法

2010年4月から2014年3月に調査への参加に同意が得られ、ABI測定が実施された3739人を本研究の対象者とする。ABIはFORMを用いて上腕足首血圧比から算出し、何れかの下肢でABI≦0.9を認める場合にABI低値(≒PAD)とした。

■ 成 績

対象者の平均年齢75.0歳、85人( 2% )がABI低値を示したが、既にPAD術後の対象者がABI正常集団に含まれている。

■ 結 論

PAD有病率および危険因子(原爆放射線被曝線量を含む)との関連について、今後さらに詳細な検討が必要である。

○高橋 郁乃放射線影響研究所臨床研究部

原爆被爆者における末梢動脈疾患の有病率P-1

Page 17: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

17

ポスター演題

■ 目 的

当教室はオムロンヘルスケア(株)と共同で、PAD検出率の向上を目的に%MAP,UT,baPWVなどの指標を用いてPAD診断サポートの開発を行い、機器の測定結果にPADの可能性を表示している。2011年のAHAガイドラインではABI0.91 ~ 0.99は境界域に変更された背景もあり、診断サポートによるPAD検出率を再評価した。

■ 対 象

当院にPAD疑いで紹介された108人、216肢。期間は2010年6月~ 2012年12月。平均年齢71.2±8.1才、男性94人。

■ 方 法

PADの定義として、CTAで下肢に狭窄率51%以上の病変が見られた場合、ABIは0.1 ~ 0.99、診断サポートでは、閉塞、狭窄、狭窄の疑いのコメント表示が出たものとした。精度検証として感度・特異度・PPV・NPV、狭窄率別の感度の比較を行った。

■ 成 績

CTAではPADと診断された21肢がABI境界域に含まれていた。診断サポートの検出率は90%であった。また、ABIでは測定エラーとなった9肢に対する検出率は100%であった。ABI単独と診断サポート付加の精度は、感度90%、94%、特異度84%、64%、PPV95%、91%、NPV69%、74%であった。狭窄率別感度は、100%閉塞で86%、99%、75%狭窄で92%、99%、50%狭窄で64%、71%であった。

■ 結 論

診断サポートにより、PAD検出感度は向上した。また、ABI単独値だけでは判断の難しい境界域や測定エラーとなった症例では、診断サポートによりPADを疑うことが可能であり、有用なシステムであると考えられる。

○岩越 真一1)、橋本 朋子1,2)、市橋 成夫1)、伊藤 博文1)、吉川 公彦1)

1) 奈良県立医科大学放射線科・IVR センター、2) オムロンヘルスケア(株)商品応用技術開発部

「フォルム診断サポートシステム」によるPAD検出率の向上について

P-2

Page 18: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

18

■ 目 的

近年、生活習慣病の増加に伴いPAD患者が増加している。当院放射線科では外来に通院するPAD患者全員にABI測定を行っているが、重症例では、測定時に痛みを訴えることが多い。 今回PAD患者のABI測定時の痛みの定量評価と検査時の看護の必要性を検討した。

■ 方 法

対象:放射線科外来に通院するPAD患者57名。平均年齢68.4±7.4歳、男性41名、女性16名。方法:痛みの評価にはNRSを用い、ABI測定時の下肢最高血圧値からの加圧値との関連を検討した。看護についてはABI測定後にアンケート調査を行った。

■ 結 果

NSRでは0が4名8肢(7% )1 ~ 7が41名82肢(72%)7 ~ 10が12名24肢(21%)であった。下肢収縮期血圧から40mmHg以上の加圧を行った57名中、NSR0の4名を除く全ての人がNSR 1以上の痛みがあった。痛みの理由としてカフの圧力が強い、患部の圧迫が多かった。アンケートから、検査時の注意点説明、測定直前の深呼吸の励行、細やかな患者の反応を観察し、心理的サポートを図ることなどが安心、安楽につながる肯定的な結果を得た。

■ 結 論

PAD患者のABI測定で40mmHg以上の加圧で痛みが高率に発生するため、看護師は、ABI測定時の痛みを理解したうえで、安心と安楽につながる看護介入を行うことが重要である。

○上西 和代1,2,3)、松田 恵美1)、橋本 朋子2,3)、吉川 公彦3)、岩越 真一3)

1) 奈良県立医科大学附属病院看護部、2) オムロンヘルスケア(株)商品応用技術開発部、3) 奈良県立医科大学附属病院放射線科

下肢閉塞動脈硬化症(PAD)患者を対象としたABI 測定時の痛みの評価と看護の必要性

P-3

Page 19: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

19

ポスター演題

■ 目 的

バスキュラーラボを設立し、血管診療技師(CVT)による動脈硬化の評価を、従来より用いられている脈波伝搬速度(PWV)に加え、超音波による頸動脈肥厚、心筋拡張能を加え、機能的、器質的両面からの評価を試みた。

■ 方 法

対象は、当院運動療法室で運動療法施行前のメディカルチェックを施行した132例である。平均年齢66.2±8.4才、BMI;22.7±2.9である。虚血性心疾患の既往、著明な左室肥大、心筋症は除外した。PWVは上腕-足首間脈波伝搬速度を用い、心筋拡張能は、心臓超音波検査によるE/A、E/e’、e’ を拡張機能指標とした。同時に超音波による総頸動脈の内膜中膜肥厚度も計測した。同時期に空腹時採血を施行し、血清脂質、インスリン抵抗性指標としてHOMA指数を求めた。

■ 結 果

心臓超音波検査による心筋拡張能は、年齢とE/A、e’ と有意な負の関係を認めた。血清脂質、HOMA指数、血圧とは有意な関係を認めなかったが、平均総頸動脈内膜中膜肥厚度(mean‐IMT)と、E/A、e’ とは有意な負の関係を認め、E/e’ とは有意な正の関係を認めた。PWVはE/A、e’ と有意な負の関係を認めたが、E/e’ とは、有意な関係を認めなかった。しかし、60歳未満では有意な正の関係を認めた。

■ 総 括

バスキュラーラボにより総合的な動脈硬化評価が可能になり、PWVとともに心筋拡張能の評価も有用と考えられ、年齢により心筋拡張能やIMT、PWV等を選択的に観察していくことが重要と考えられた。

○春日 靖洋1)、木村 穣2)、滝川 瑠美3)、大西 朋世3)、葉山 典泰4)

1) 医療法人仁心会宇治川病院検査室、2) 関西医科大学健康科学センター、3) 医療法人仁心会宇治川病院運動療法室、4) 医療法人仁心会宇治川病院内科

バスキュラーラボでの脈波および超音波計測指標による動脈硬化評価の試み

P-4

Page 20: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

20

■ 背 景

動脈壁硬化の進行は脳、心臓疾患発症リスクとなり,若年からの動脈壁硬化予防が重要である。baPWVを決定する主要因は年齢と血圧であるが、食行動との関係は不明である。本研究では男性におけるbaPWVと食行動の関係を検討した。

■ 方 法

対象は当センターで生活指導を受けた男性(20-65歳,732名,期間:2008.4-2014.3)とした。質問票にて,喫煙,飲酒習慣,現治療の他、欠食,夜食,食べ方(速い,普通,遅い)を調査した。血圧,脈拍,baPWVを測定し(Form ABI/PWV)、体組成計測,空腹時採血を行った。対象者を 若 年(20-45歳,173名), 中 年(46-55歳,216名), 高 年 群(56-65歳,343名)に 分 け,baPWV1400cm/s以上群と未満群のデータ比較と,多重ロジスティック回帰分析を行った。

■ 結 果

baPWV1400cm/s以上群は,若年で71名,中年で127名,高年で252名であった。若年のbaPWV1400cm/s以 上 群 は, 食 べ 方 の 速 い 人 が 多 い 傾 向 に あ っ た(48.0 vs. 66.2%, p=0.052)。baPWV1400cm/s以上を目的変数とし,食べ方が普通の人に対して,年齢,BMI,SBP,HR,TG,喫煙,飲酒,高血圧治療で調整した食べ方が速い人のオッズ比は3.28 (95%CI:1.24-8.67)であった。中年群と高年群では食べ方の有意な関連はみられなかった。他の食生活因子はいずれの群でもbaPWVと関連しなかった。

■ 結 論

若年の男性において,早食いと動脈壁硬化は正の関係を示した。早食い是正の指導は,若年男性の動脈壁硬化予防に繋がる可能性がある。

○服部 朝美1)、根本 友紀2)、佐藤 友則2)、内海 貴子2)、田中 聖子2)、金野 敏3)、宗像 正徳1,2,3)

1) 東北労災病院生活習慣病研究センター、2) 東北労災病院治療就労両立支援センター、3) 東北労災病院高血圧内科

若年男性における動脈壁硬化と早食いの密接な関係P-5

Page 21: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

21

ポスター演題

■ 目 的

全身持久力が高い者では加齢に伴う動脈壁の硬化度が低い。しかしながら、全身持久力が動脈壁の硬化度の進展に関連しているかを縦断的に評価した研究は少なく、特に、上腕-足首間脈波伝播速度(baPWV)の経時変化と全身持久力との関係を報告した研究はない。そこで本研究では、2年間の縦断的観察研究によって、全身持久力とbaPWVとの関連を検討した。

■ 方 法

様々な全身持久力レベルを有する健康な男女(年齢:26-69歳)で、測定初年度に全身持久力およびbaPWVを測定し、2年後にbaPWVを追跡測定として実施できた470名を対象とした。全身持久力は、自転車エルゴメーターにより最高酸素摂取量(Vo2peak)を測定した。

■ 結 果

単回帰分析の結果、Vo2peakは2年間のbaPWV変化(ΔbaPWV:2年後のbaPWV-測定初年度のbaPWV)に対して負の相関関係を示した(r = -0.112, P = 0.015)。対象者を全身持久力により性年代別に3分位(Low群、Middle群、High群)に群分けし、測定初年度のbaPWVおよび空腹時血糖を共変量として共分散分析を行った結果、ΔbaPWV(cm/sec)の平均値±標準誤差は、Low群:25.2 ± 7.2、Middle群:17.6 ± 6.9、High群:0.6 ± 7.0であり、Low群と比較してHigh群で有意に低かった(P<0.05)。

■ 結 論

高い全身持久力を有する者では、baPWVの上昇が小さかった。全身持久力を高く保つことは、加齢による動脈壁硬化の進行を減弱させる可能性が示唆された。

○丸藤 祐子1)、村上 晴香1)、川上 諒子1)、山元 健太2)、河野 寛3)、田中 憲子1)、澤田 亨1)、 宮武 伸行4)、宮地 元彦1)

1)(独)国立健康・栄養研究所、2) 北テキサス大学健康科学センター、3) 国士舘大学、4) 香川大学

高い全身持久力を有する者では baPWVの上昇が小さい-2年間の縦断的観察研究-

P-6

Page 22: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

22

■ 背 景

冠動脈石灰化スコア (CAC score) は冠動脈硬化の指標であり,虚血性心疾患の検出や予後判定に有用である.大血管硬化の指標である脈波伝搬速度 (pulse wave velocity : PWV) とCAC scoreの関係について検討した.

■ 方 法

対象は,当院外来を受診した心血管疾患の既往のない758症例(68±13才,男性364名).東芝社製の64列のmulti-detector row CT (MDCT) にてCT検査を行い,ZIO SOFT社製のワークステーションを用いてCAC scoreを算出した.日本コーリン/オムロン社製form PWV/ABIにて上腕足首間PWV (baPWV) を測定した. CAC scoreにて症例を4群に分類した (0-10, 10-100, 100-400, 400以上).

■ 結 果

CAC score高値群ではbaPWVも高値であった (p<0.0001).単変量解析において,baPWVはlog (CACscore+1)と有意に関係していた (r=0.396, p<0.0001).多変量解析においても,baPWVはlog (CACscore+1)と関係していた (β=0.001, p=0.0027).その他,年齢,性別およびHbA1Cが石灰化スコアと有意に関係していた.年齢別にて同様の解析を行ったところ,多変量解析において,65歳以上ではbaPWVはlog (CACscore+1) と有意に関係していたが (p=0.0003),65歳未満では有意な関係は認めなかった.

■ 結 語

大動脈の硬化は,冠動脈の硬化と関係していた.しかし,その関係性は年齢により異なる可能性がある.

○櫻木 悟、市川 啓志、谷本 匡史、大塚 寛昭、山本 和彦、川本 健治、田中屋 真智子、 片山 祐介国立病院機構岩国医療センター循環器内科

高齢者において動脈スティフネスの進展は冠動脈石灰化と有意に関係する

P-7

Page 23: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

23

ポスター演題

■ 目 的

内臓脂肪の蓄積は、肥満症の主要因であり、動脈硬化や生活習慣病発症に繋がる。非肥満でも一定のリスクを有する者に対して、生活習慣病の発症予防への取り組みが必要であることが提唱されている。近年、内臓脂肪測定装置 (DUALSCAN)により、簡便に内臓脂肪面積(VFA)と皮下脂肪面積(SFA)の測定が可能となった。そこで、非肥満者における血圧脈波検査(baPWV、ABI、rAI)とVFA、SFA測定の意義を検討する。

■ 方 法

日本多施設共同コホート研究の京都フィールドに参加した、肥満者(BMI値25以上)と降圧剤服用者を除外した136名(平均年齢54.4歳、男性49名、女性87名)を対象とした。一般健診およびVFA、SFA、血圧脈波検査などの測定を実施し、これらの検査結果を比較検討した。

■ 結 果

男女共にVFA、SFAと血圧脈波検査に明らかな相関を認めなかった。VFA/SFA比を用いて内臓脂肪優位群と皮下脂肪優位群の2群に分けて比較すると、男性の内臓脂肪優位群では、皮下脂肪優位群と比べてrAI(p<0.01)とhsCRP(p<0.05)が有意に高値であった。一方、女性では2群間で、血圧脈波検査と明らかな関係を認めなかった。非肥満男性における内臓脂肪優位群は、皮下脂肪優位群と比べてrAI、hsCRPが高値となり、早期の動脈硬化性変化の存在を示唆している可能性がある。脂肪量の性差は、内分泌物質の性差と関連するとの報告もあり、今後さらなる解析を予定している。

○小山 晃英、栗山 長門、尾﨑 悦子、松井 大輔、渡邉 功、渡邊 能行京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学

非肥満者における血圧脈波検査と内臓 /皮下脂肪面積測定の意義

P-8

Page 24: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

24

■ 背 景

NO依存性の内皮機能を示す血流介在血管拡張反応(FMD), 動脈スティフネスを示す上腕動脈-足首動脈間脈波速度(baPWV), 形態的動脈硬化を示す頸動脈エコーによる内膜中膜厚(IMT)はいずれも血管内皮機能を反映しており動脈硬化の新たな指標として注目されている。しかし, これらの指標それぞれの関係性を調べた研究はない。今回我々は,baPWV,FMD,IMTの関連性を検討した。

■ 方 法

2007年7月より2014年8月まで当院高血圧外来に通院している高血圧治療患者281例(60±11歳)に対しbaPWV,IMT,FMDを測定し,それぞれの関連性を調査した。

■ 結 果

対象は男性194例,女性87例であった。baPWVは1649±284cm/sec, FMD 3.8±2.8%, IMTは0.78±0.12mmであった。相関分析によりbaPWV, FMD, IMTの関連を検討したところ, baPWVとIMTは有意な関連を認めたが(r=0.278, p<0.001), baPWVとFMD, FMDとIMTは有意な関連を認めなかった。

■ 結 論

PWVと比較してFMDは血管障害の形態的変化とは独立した機能的血管障害を反映する指標と考えられる。

○木村 一貴、冨山 博史、松本 知沙、小平 真理、椎名 一紀、山科 章東京医科大学循環器内科

高血圧症例における脈波速度と血流依存性血管拡張反応の関連の検討

P-9

Page 25: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

25

ポスター演題

■ 目 的

CAHDの1つであるファロー四徴症(TOF)では動脈stiffness亢進によりPWVが速く左室後負荷増大の危険因子とされるが、他のCAHDに関する報告は見られない。今回CAHD全般を対象に上行大動脈(aAo)と下行大動脈(dAo)のPWVを測定し、動脈stiffnessについて検討した。

■ 方 法

心臓カテーテル検査時にaAo(大動脈弁直上)、Arch (大動脈弓頂部)、dAo(横隔膜レベル)で圧波形を記録しaAo-Arch、Arch-dAoのカテーテル引抜き距離と脈波伝達時間よりPWV(cm/s)を各々 PWV(a)、PWV(d)とした。control群(n=24)は心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、肺動脈弁狭窄症、冠動脈病変のない川崎病とし、CAHD群(n=36)はTOF、完全大血管転位症、両大血管右室起始症、総動脈幹症とした。

■ 結 果

PVW(a)(cm/s); 833.2±641.0(CAHD) vs 662.1±413.5(control)(p=0.25)、PWV(d)(cm/s); 427.2±89.3(CAHD) vs 442.8±127.9(control)(p=0.58)と有意差は認めなかった。しかしPWV関連因子として、年齢、身長、血圧、心拍数には群間の有意差を認めなかった が、 減 速 因 子 で あ る 血 管 径 拡 大aAo径(mm)/BSA(㎡):29.2±13.6(CAHD) > 22.6±9.6(control)(p=0.049)、 血 液 粘 度 高 値Hb(g/dL): 13.9±2.3(CAHD) > 11.7±1.7(control)(p<0.01)をCAHD群に認めた。

■ 考 察

血管径拡大、高血液粘度をCAHD群で認めるにも関わらずPWV(a)がcontrol群に比べ有意に減速していないことは、上行大動脈における動脈stiffnessの亢進を表していると考えられた。

○浅田 大、糸井 利幸、西川 幸佑、森下 祐馬、久保 慎吾、河井 容子、池田 和幸、 中川 由美、西田 真佐志、濵岡 建城京都府立医科大学小児循環器腎臓科

円錐動脈幹異常 (conotruncal anomaly heart disease; CAHD) における pulse wave velocity(PWV) の検討

P-10

Page 26: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

26

■ 目 的

遺伝性高コレステロール血症(KHC)ウサギにおける大動脈局所脈波速度(LPWV)は粥状硬化病変の存在と大きさを反映することが示されている。大動脈各領域で求めたLPWVの平均値(avgLPWV)は大動脈全体の脈波速度(AoPWV)を意味すると考えられる。そこで、粥状硬化進行に伴い、LPWVとAoPWVとの関係がどこまで保持されるかについて、遺伝的に高コレステロール血症と粥状硬化を発症するKurosawa and Kusanagi-hypercholesterolemic (KHC)ウサギを用いて実験的に検討した。

■ 方 法

10-12、22-24および34-36か月齢の正常およびKHCウサギを用い、ペントバルビタール麻酔下で先端に圧センサーを40mm間隔で3個装着したミラー社製カテーテル圧トランスデューサー (3Fr)を大動脈弓遠位端から末梢部位へ移動させながら、大動脈弓部、胸部大動脈近位部、同中央部、同遠位部、腹部大動脈近位部、同中央部および同遠位部にて圧脈波を上行大動脈圧脈波と同時記録した。

■ 成 績

avgLPWVは、 10-12、22-24および34-36か月齢の正常群およびKHC群のいずれにおいてもAoPWVとほとんど差がなく、両群ともavgLPWVとAoPWVとの間には強い正相関が認められた。Bland & Altman Plotにおいては、avgLPWVとAoPWVの平均誤差とばらつきは正常群およびKHC群ともに月齢に関係なく小さかった。

■ 結 論

大動脈各領域で求めたLPWVの平均値は、粥状硬化病変の存在や進行度に関係なくAoPWVを的確に反映する。

○勝田 新一郎1)、高沢 謙二2)、日柳 政彦3)、挾間 章博1)

1) 福島県立医科大学医学部細胞統合生理学講座、2) 東京医科大学病院健診予防医学センター、3)(株)日本医科学動物資材研究所

粥状硬化進行に伴い大動脈局所脈波速度と大動脈脈波速度との関係は保持されるか―ウサギでの実験的検討―

P-11

Page 27: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

27

ポスター演題

■ 目 的

近年、中心血圧が上腕血圧より心血管イベントや死亡とより強く関連するとの知見が蓄積され高血圧患者における中心血圧とアルブミン尿の関連も報告されている。本研究では、2型糖尿病患者においてアルブミン尿と中心血圧の関連を評価し、さらに上腕血圧と中心血圧両者におけるアルブミン尿との関連性を比較検討した。

■ 方 法

外来通院中の2型糖尿病患者294名について横断研究を行った。上腕血圧と中心血圧をオムロンヘルスケア社製、HEM-9000AIを用いて同時に測定した。上腕血圧および中心血圧と尿中アルブミン排泄量との関係を重回帰分析で、アルブミン尿に対するオッズ比をロジスティック回帰分析で算出した。さらにROC解析にて両者の曲線下面積(AUC)を比較した。

■ 結 果

重回帰分析では上腕血圧 (β=0.255, P<0.0001) および中心血圧 (β=0.227, P< 0.0001) はともに尿中アルブミン排泄量を規定する有意な因子であった。多重ロジスティック回帰分析でのオッズ比(95%信頼区間)は、上腕血圧1.029(1.016-1.043) および中心血圧1.022(1.011-1.034)であった。ROC解析におけるAUCの比較では上腕血圧の方が中心血圧よりアルブミン尿と強い関連性を認めた (P=0.035)。

■ 結 論

2型糖尿病患者において中心血圧は尿中アルブミン排泄量と関連があるが、尿中アルブミン排泄量との相関は上腕血圧の方が強い。

○北川 功幸1)、岡田 博史2)、田中 武兵1)、木村 寿宏1)、橋本 善隆1)、浅野 麻衣1)、濵口 真英1)、 山﨑 真裕1)、福井 道明1)、長谷川 剛二2)、中埜 幸治3)、中村 直登1)

1) 京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学、2) 京都第二赤十字病院代謝・腎臓・リウマチ内科、3) 京都山城総合医療センター糖尿病・代謝内科

2型糖尿病患者において上腕血圧は中心血圧よりアルブミン尿とより強く関連する

P-12

Page 28: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

28

■ 目 的

末梢脈圧と中心脈圧の比で算出される脈圧増幅は、心血管疾患の優れた予測因子である。この脈圧増幅は評価部位により測定値が異なる可能性があるため、脈圧増幅の評価部位を考慮することは重要である。一方、肥満は心血管疾患の独立した危険因子であるが、肥満と脈圧増幅との関連については、十分に明らかにされていない。そこで、本研究は、脈圧増幅を評価する部位に着目し、脈圧増幅と肥満との関連について検討することを目的とした。

■ 方 法

成人男性116名(平均年齢46 ± 1歳)を対象に、大動脈-上腕動脈(上肢)および大動脈-大腿動脈(体幹)における脈圧増幅(末梢脈圧/中心脈圧×100)を評価した。Body mass index ≧ 25 kg/m2を肥満と定義し、標準体重群(n = 43)と肥満群(n = 73)の2群間において、脈圧増幅を比較検討した。

■ 結 果

上肢の脈圧増幅は、標準体重群と肥満群の間に有意な差は認められなかった(114 ± 1 vs. 113 ± 1 %, P = 0.621)。一方、体幹の脈圧増幅は、標準体重群よりも肥満群において有意に低値を示した(121 ± 2 vs. 115 ± 1 %, P = 0.005)。

■ 結 論

成人男性において、上肢の脈圧増幅は肥満により変化しないが、体幹の脈圧増幅は肥満により低下する可能性が示された。

○吉川 徹1)、膳法 亜沙子2)、熊谷 仁1)、辻本 健彦3)、蘇 リナ3)、田中 喜代次3)、前田 清司3)

1) 筑波大学大学院スポーツ医学専攻、2) 流通経済大学スポーツ健康科学部、3) 筑波大学体育系

成人男性における脈圧増幅と肥満の関連-脈圧増幅の評価部位に着目した検討-

P-13

Page 29: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

29

ポスター演題

■ 目 的

脈波波形から算出されるAIx(Augmentation Index)値は,測定に際して緊張などによって呼吸状態が変化することで値が変動する場合がある.しかし,呼吸状態の変化に対する脈波波形の変動を研究した例は少ない.そこで,本研究では呼吸状態と脈波波形を同時に連続測定することで,呼吸状態の変化が脈波波形に与える影響について検討した.

■ 方 法

脈波波形計測装置(オムロンヘルスケア:HEM-9000AI改)と気流量測定機器(Vernier:Spirometer)を用いて,被験者の呼吸状態を変化させながら脈波波形と呼吸波形を同時に連続測定した.実験は「安静呼吸に挟まれた深呼吸」と「安静呼吸に挟まれた息止め」の2つのプロトコルで行った。

■ 結果・考察

安静時に,脈波波形から算出される3つの指標AIx,PPI(脈拍間隔),SYS(収縮期血圧)に,呼吸変化に同期した変動が見られた.これらの指標値の変動は,息止め負荷によって小さくなる一方で,深呼吸負荷では大きくなった.また深呼吸負荷時に,指標値の変動と呼吸変化との間に位相差が現れる被験者があり,深呼吸時に位相が進む現象を示した.この呼吸変化に起因する指標値の変動は,呼吸による胸腔内圧の変化,静脈還流量の変化,一回拍出量の変動,が順に誘起されていることが原因だと推測される.

■ 結 論

呼吸状態の変化によって脈波波形が変化し,指標値に変動が現れる.このため臨床での計測時は安静呼吸で行うことが重要である.

○北脇 知己1)、亀井 美冴2)

1) 関西医科大学医学部、2) 愛媛大学医学部附属病院検査部

呼吸状態変化が脈波波形に与える影響 ~息止めと深呼吸の影響について~

P-14

Page 30: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

ポスター演題

30

■ 目 的

我々は成人先天性心疾患(ACHD)患者の血圧を検討し、高血圧患者は多くないと報告した。しかし対象患者の多くは若年で、ガイドラインの診断基準をそのまま適応して良いか疑問が残る。そこで年齢をあわせたgeneral populationの血圧と比較検討した。

■ 方 法

対象は千葉県循環器病センター ACHD診療部通院中のACHD患者100人。HEM9000AIを用いて計測した収縮期血圧(SBP)を、年代・性別毎に報告されたgeneral populationの血圧(Hypertens Res 2013;36:50-57)と比較検討した。血圧が140/90mmHgをこえたものを高血圧、SBPがgeneral populationの2SDをこえたものを血圧高値と規定した。

■ 成 績

年齢は37.0±15.0(20-76)歳、男性63名女性37名。NYHAはI;68人、II;25人、III;7人、IV;0人。BNP69.7±152.5pg/ml。 チ ア ノ ー ゼ(SpO2<95%)16人。SBPは117.7±20.1mmHg。高血圧を呈したのは13人であった。20人が血圧高値で、単変量解析では年齢、BMI、BNP、HbA1c、LDLコレステロール、総コレステロール、中性脂肪と有意な関連がみられた。ロジスティック回帰分析では血圧高値の規定因子は年齢(OR 1.091; 95%信頼区間 1.028-1.158; p=0.004)とBMI(1.230; 1.026-1.476; 0.025)であった。

■ 結 論

ACHD患者では血圧高値は少なくなく、また(年齢を考慮した基準値と比較しても)年齢が上がるほど増加する傾向がみられた。ACHD患者の体心室には出生時より負荷がかかっており、早期の介入が望ましい。

○村上 智明1,2)、名和 智裕1)、白石 真大1)、永峯 宏樹1)、小林 弘信1)、白神 一博1)、福岡 将司1)、 東 浩二1)、立野 滋2)、川副 泰隆2)、中島 弘道1)、青墳 裕之1)、丹羽 公一郎2,3)

1) 千葉県こども病院循環器内科、2) 千葉県循環器病センター成人先天性心疾患診療部、3) 聖路加国際病院循環器内科

成人先天性心疾患患者は血圧が高いP-15

Page 31: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

31

ポスター演題

■ 目 的

血圧脈波検査の内、PWVは動脈壁硬化・血管年齢および高血圧性血管障害との関連が確認されているが、橈骨動脈波波形解析(rPWA)指標は、これら血管特性以外の影響因子が多く、十分理解されていない。本研究では、rPWAとPWVを併用することで、rPWA指標からPWVと独立した血管機能・特性の分離を試みた。

■ 方 法

橈骨動脈波(HEM-9000AI®)および脈波速度(form®)検査を同日施行した、内服治療を受けていない健診受診者884名(男:女=434:450)で、baPWVおよびrPWA指標としてradial augmentation index (rAI)・systolic pressure amplification (SPA)を得た。rPWA指標を従属変数としbaPWVおよび検査データ・生活習慣・病歴等を含む総合健診データを独立変数とした重回帰モデルを検討した。

■ 成 績

rAI・SPAとも性別にかかわらず身長・DBP・心拍数・Albが共通の交絡因子であった。rAIではbaPWVとともに、男性で喫煙本数と乳製品摂取が、女性ではHbの他、魚類摂取が、それぞれ有意な関連を示した。SPAはbaPWVと関連がなく、男性でECG-LVH、eGFRに加え、喫煙本数、乳製品摂取と有意に関連したが、女性ではHb、脳卒中家族歴、メタボリスク数が関連因子であった。

■ 結 論

rPWAはPWVと併用することで、より精度の高い血管機能や高血圧病態の評価、生活習慣影響のモニター等に繋がる可能性が示唆された。

○宮下 洋1,2)、苅尾 七臣2)

1) 自治医科大学健診センター、2) 自治医科大学医学部循環器内科学部門

橈骨動脈波波形解析とPWVとの併用意義の検討P-16

Page 32: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

32

フィーチャリングセッション

 リスクファクターから血管機能障害、血管不全、臓器障害、臓器不全を経由して最終的に死へ至るプロセスは、「Cardiovascular disease continuum」としてVictor Dzauにより紹介され、広く受け入れられている。こういう連鎖を理解していても、残念ながら、その終末像である標的臓器障害を予防するのは容易でなく、多くの患者が臓器障害、臓器不全の状況で初めて受診する。その理由として、患者のみならず医師までもが血管障害・血管不全という概念について認知不足である点にある。リスクファクターに続く段階としての血管障害を意識し、より早期の段階で血管機能不全状態を検出し、適切な介入を行い、進展を予防すれば心血管疾患発症の予防につながるはずである。 心血管障害の最大の病因である動脈硬化はさまざまなリスクファクターを誘因に加齢とともに進行する。病変は内皮障害から内膜および中膜へと進み、進行すると、内膜の病変は粥腫atherosisとなり、中膜の病変は動脈壁硬化arterial stiffnessとなる。粥腫が進行すると狭窄による血流障害、あるいは、粥腫破綻をきたすと動脈閉塞による臓器灌流障害を発症する。動脈壁硬化は脈波伝播速度の亢進、脈圧の増大、中心血圧の上昇などを介して血行動態に影響をおよぼす。こういった血管障害の評価には超音波、CT、MRIなどの画像診断と血管内皮機能検査、脈波伝播速度(PWV)、心臓足首血管指数(CAVI)、中心血圧(CBP)、増大係数(AI)、上腕足関節血圧比(ABI)などの機能診断がある。臨床現場では画像診断と機能診断を適切に組み合わせて病態を評価し、治療方針を決定してゆくが、心血管スクリーニングにおける効率的な方法は確立されていない。 血管評価法が心血管疾患管理におけるバイオマーカとなるためには、①血管障害の進展程度がわかる、②心血管病の発病リスクないし予後の推定ができる、③介入による効果の評価ができる、④結果が改善すれば予後の改善につながる、などが必要であり、さらに臨床応用されるためには、①非侵襲的で簡便に計測でき、②低コストで普遍化が可能で、③精度および再現性が高く、④計測法が標準化されている、などの要件を満たす必要がある。そういった点から、PWVとABIは簡便に計測でき、再現性に優れ、同一の機種で計測できるため標準化されており、臨床応用可能な指標としてこれまで多くのデータが集積されている。日本循環器学会による循環器科ないし心臓血管外科を標榜する2,537施設を対象とした循環器疾患診療実態調査では2013年に行われた検査件数は PWV(ABIを含む)は約105万件、ABI単独が約70万件にも及ぶ。 日本循環器学会の血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドラインでは、ABIは症状からPADが疑われる症例、65歳以上、50歳以上で糖尿病か喫煙者などが推奨されており、baPWV測定を推奨する病態として、高血圧、糖尿病、CKD(慢性腎臓病)ステージ3 ~ 5、透析、冠動脈疾患などが挙げられている。ABI0.90以下は末梢動脈疾患(PAD)と診断され、PADは心血管疾患のハイリスクであることが確立されている。ABI 0.91~1.00は境界的異常とされているが、Form PWV/ABIの最大の利点は足関節の脈波波形を評価できる点である。脈波の遅脈の所見、すなわち%MAP(mean arterial pressure; 基線から上の波形面積平均値を脈波振幅で除した割合;正常≦45%)とUT(upstroke time;脈波の立ち上がりからピークに到達するまでの時間;正常≦180msec) を認めれば、有意狭窄があると推定できる。baPWVも心血管リスク指標としてエビデンスがそろっており、多くの報告から発症リスクのカットオフ値として

○山科 章東京医科大学循環器内科

“Steno-Stiffness Marker” の概念と Form ABI/PWVを用いた動脈硬化疾患診療フローチャート

F-1

Page 33: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

33

1800cm/秒が提案されている。 FormABI/PWVを用いればstenosisとstiffnessが同時に評価できるので、両指標を組み合わせればよりレベルの高い動脈硬化病変の診断をすることができる。両者を用いた診療フローチャートを紹介すると、まずABI≦0.90によりPADと診断すると同時に心血管疾患発症のハイリスクとして対応する。ABI 0.91~1.00については波形評価から% MAP(45%以上)ないしUT(180ms以上)のいずれかに該当すればPADに相当する動脈狭窄病変があるものとしてPADの 精 査 と 全 身 の 心 血 管 疾 患 リ ス ク 評 価 を 行 う。ABI>1.00で あ れ ばbaPWVを 評 価 し、1800m/秒以上はハイリスクに準拠して対応する。1800cm/秒以下であっても1400cm/秒以上は軽度以上のリスクがあり、生活習慣改善などを積極的に勧めている。 演者らはForm ABI/PWVによってStenosisとStiffnessの両指標が同時に計測できることから、 あ わ せ てSteno-Stiffness markerと 呼 ぶ こ と を 提 唱 し て き た。 本 講 演 で はSteno-Stiffness markerの有用性を示すエビデンスと両指標を用いたフローチャートを紹介し、今後の心血管リスク評価のあり方を提案したい。

Page 34: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

34

フィーチャリングセッション

 ABIはPADを検出するための簡便で再現性のある検査として確立されているが、AHAは2012年ABIに関するステートメント(Measurement and Interpretation of the ABI)を発表し、ABIはアテローム性動脈硬化症の指標であり、無症候性PADでも心血管イベント発症のリスクマーカであると述べている。 また、ABIが0.91以上1.00未満を「正常」ではなく、「境界域」であると発表した。 2008年のThe strong Heart studyのメタ解析によるとABIが1.11 ~ 1.20の症例に比べて、ABIが0.91 ~ 1.00の群では心血管イベントによる死亡は1.84倍となっており、軽度の狭窄例であっても、全身の動脈でのアテローム性動脈硬化が始まっていることが示唆され、心血管イベントの予防と早期発見の観点からも、軽度狭窄のPAD検出は重要である。 我々は、オムロンヘルスケア(株)社製formを用いてドプラ法との比較を行い、オシロメトリック法の精度の向上を行ってきたが、オシロメトリック法では重症PADの小さすぎる脈や血圧決定に影響するノイズの発生によりABI値が不正確になるなど、検出力に限界があることを認識している。CTA(CT angiography)をゴールドスタンダードとした当教室とオムロンヘルスケア(株)の共同研究でもABIによるPADの検出感度は、高度、中等度狭窄群に比べ軽度狭窄群では有意に低かった。 オシロメトリック法form機器には四肢の血圧測定後に、カフ圧を一定に保持し10秒間四肢の脈波形Pulse volume recording(PVR)を取り込み、波形の解析指標として%mean arterial pressure(% MAP)やUpstroke time(UT)を自動算出する機能がある。我々はABI, 年齢、性別、baPWVなどのパラメータにこの波形解析指標を加味した診断サポートシステムを構築し、PADの検出能の向上に努めてきた。 % MAPとは、脈波の基線から上の波形面積の平均値を脈波振幅で割り%で示したものである。 血管の狭窄が進行して内腔が狭くなり、単位時間内の血流量が減少すると波形が平坦化%MAPは高値になる。   

 UTとは、脈波の立ち上がりからピークに達するまでの時間であり、血管の内腔の狭窄が進行するとUTは延長する。

○吉川 公彦奈良県立医科大学放射線医学教室・IVR センター

末梢動脈疾患(PAD)の評価と診察波形解析指標(%MAP、UT)を用いた評価

F-2

Page 35: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

35

   

 2014年度に発行された日本循環器学会の血管機能の非侵襲的評価法に関するガイドラインの中で%MAP、UTの基準値が掲載されている。 今回、%MAP、UTに注目し、それぞれ指標を組み合わせることでABI値のみに比べてどのような有用性があるかをCTAをもとに検証した。その結果、脈波解析指標である%MAP、UT両方のパラメータをABIと組み合わせることにより、PADの検出感度はABI値単独より向上した。特に軽度狭窄の診断能の向上が認められたことより、%MAP、UTはPAD診断の有用な指標に成り得ることが示唆された。 今回の発表を通じて、ABI検査においてPAD検出診断能の向上に寄与する脈波の重要性を改めて認識していただきたい。

Page 36: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

36

フィーチャリングセッション

■ 背景と目的

過去12年間に約5000件、平均3 ヶ月毎にformPWV/ABIを用いて血圧脈波心機図検査を施行し、患者毎にABIとUTを “縦断的” に合わせ観察していると、ABIが終始1.0以上(不変)でもUTが徐々に延長(180msec以上)する「遅脈タイプ」例を少なからず経験するようになった。そこでABIとUTとの関連に強い関心を抱くようになり、今回「遅脈タイプ」例がどのような心血管疾患とリスク因子を有しているかについて、ABIと比較の上で縦断的に観察した結果から、PAD早期診断におけるUTの有用性について検討した。

■ 方 法

2002年9月から2014年10月までの間に当院でformPWV/ABI検査を計6回以上施行した患者226名を対象とした。ABI:0.9とUT:180msecを基準値として4群(下表)に分類し、初診から直近までの指標の推移に着目して検討した。

■ 結 果

初診時の指標で4群に分類した結果は、ABI/UT共に異常群が5例、ABI異常/UT正常群は0例、ABI正常/UT異常群は13例、ABI/UT共に正常群が208例であった。平均観察期間7.4年経過後の直近の指標で4群での結果は、ABI/UT共に異常群が6例、ABI異常/UT正常群は0例、ABI正常/UT異常群は35例、ABI/UT共に正常群が185例であった。

ABI/UT共に異常 ABI異常/UT正常 ABI正常/UT異常 ABI/UT共に正常初診 5例 0例 13例 208例直近 6例 0例 35例 185例

経過観察期間中にABI異常群の増加が1例に対し、UT異常群の増加は23例であった。また、ABIとUTの推移グラフを個別に検討した結果から、ABI低下に先行してUTが延長する例が多く見られた。すでにPADとして加療中の群つまりABI/UT共に異常群以外に、ABI正常/UT異常群においてもリスク因子複数例、梗塞の既往例、後期高齢者が多かった。なお、UTと同時に計測されている%MAPも増加は示したが、UTほど大きな変化率は見られなかった。

■ 結 論

足首動脈波形のUT延長は、ABIが低下する以前に(ABIが0.9以上でも)、すでに下肢動脈の狭窄病変が進行していることを意味し、ABI低下に先行してPAD早期診断の指標になる可能性が示唆された。

○沢山 俊民さわやまクリニック、川崎医科大学循環器内科名誉教授

PAD早期診断指標として、脈波UT延長がABI低値に先行する-縦断的検討から

F-3

Page 37: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

37

フィーチャリングセッション

■ 目 的

足関節上腕血圧比(ABI)と上腕-足首脈波伝播速度(PWV)は非侵襲的な動脈硬化指標である。九州動脈硬化予防研究は糖尿病患者におけるABI低下とPWV上昇が古典的な動脈硬化危険因子とは独立した全死亡および心血管事故の予測因子であることを示した。今回は同時測定できるABI/PWVを併用した糖尿病患者の全死亡および心血管イベントの発症予測アルゴリズムを検討した。

■ 方法・対象

九州大学医学部第三内科とその関連17施設,琉球大学医学部第二内科とその関連6施設に通院中でABI/PWVを測定した糖尿病患者4272人を対象とした。追跡期間中の全死亡、冠血管・脳血管イベント発症について決定木分析に基づきABIとPWVの分枝アルゴリズムを求めた。次に各分類とイベント発症の相関についてロジスティック回帰モデルを用いてフラミンガムリスクスコア(FRS)と比較し、さらにABIまたはPWV単独の予測モデルと比較した。冠血管イベントは狭心症発作および致死性/非致死性心筋梗塞、脳血管イベントは致死性/非致死性脳卒中および一過性脳虚血発作と定義した。

■ 結 果

平均3.3年の追跡期間中に258例の死亡、181例の冠血管イベント、153例の脳血管イベントを認めた。対象の特徴(%または中央値(第1-第3四分位)):年齢 62(53-70)歳、男性 59%、BMI 24.2(21.9-26.8)、HbA1c 7.8(6.6-9.4)%。リスク分類をA=ABI, P=PWV(m/s)で示す。全死亡:低(A=>1, P<24)、中1(A=>1, P=>24)、中2(0.7<=A<1)、高(A<0.7)。冠血 管 イ ベ ン ト: 低(A=>1, P<14)、 中(A=>1, 14<=P<19)、 高1(A=>1, P=>19)、 高2(A<1)。 脳 血 管 イ ベ ン ト: 低(A=>1.1, P<14)、 中1(A=>1.1, 14<=P<23)、 中2(A<1.1)、高(A=>1.1, P=>23)。ロジスティック回帰モデルでは全ての分類がFRSとは独立した説明因子であり、低リスク群に対して中・高リスク群のオッズ比は有意に上昇した。高対低リスクのオッズ比(95%信頼区間):全死亡6.8(3.8-11.9)、冠血管イベント5.8(2.1-20.3)、脳血管イベント8.6(1.9-60.3)。各分類とABIまたはPWV単独のモデル比較では、全死亡と冠血管イベントに対しては有意なROC曲線下面積の改善を認めたが脳血管イベントではPWV単独と同等であった。

■ 結 論

全死亡にはABI低下が寄与し、0.7から1.0の境界例でもPWV高値(24m/s以上)と同等のリスクを示した。冠血管イベントにはABI(1未満)とPWV(19m/s以上)が相補的で、脳血管イベントはPWV上昇(23m/s以上)が重要であった。これらは大血管障害の成因の違いや死因の特徴を裏付けており興味深い。本研究で創出したABIとPWVを組み合わせた全死亡と心血管イベントの発症予測アルゴリズムを用いて糖尿病患者の予後をより正確に知ることの臨床的意義は大きい。

○前田 泰孝、井口 登與志九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点、九州大学大学院医学研究院病態制御内科学、九州動脈硬化予防研究グループ

足関節上腕血圧比と上腕-足首脈波伝播速度による糖尿病患者の全死亡、心血管イベントの予測アルゴリズム:九州動脈硬化予防研究

F-4

Page 38: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

38

フィーチャリングセッション

下肢末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)は、動脈硬化により下肢動脈の狭窄や閉塞を来す疾患であり、この疾患を有する人は心血管病の発症リスクが高いことが指摘されている。足関節上腕血圧比(Ankle-brachial index:ABI)は、足首と上腕の血圧の比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算したものである。米国のPADガイドラインでは、ABI値により1.00-1.40を正常群、0.91-0.99を境界群、0.90以下を低値群と分類している。また、心血管病発症の主な危険因子である動脈硬化度と血圧の両方を反映する血管障害の指標として、上腕-足首脈波伝播速度(Brachial-ankle pulse wave velocity:baPWV)が近年注目されている。わが国では、上腕および足首に血圧測定用のカフを装着するのみで、カフオシロメトリック法により短時間で簡便にABI値とbaPWV値を同時に測定することができる機器が開発されており、臨床の場でPADや動脈硬化度の評価に広く用いられている。しかしながら、地域住民を対象にABI値やbaPWV値と心血管病発症との関係を検討した研究は少ない。我々は2002年の福岡県久山町の一般住民2,954人を均7.1年間前向き研究の成績を用いて、ABI値と心血管病発症の関係を検討した。ABI値は米国のPADガイドラインに基づいて分類した。エンドポイントは、心血管病(虚血性心疾患または脳卒中)の発症とした。相対危険の算出には、Cox比例ハザードモデルを用いた。追跡対象者のうち、216人(7.3%)が境界群、40人(1.4%)が低値群であった。追跡期間中に134人が心血管病を発症した。心血管病の発症率(無調整、対1000人年)は、正常群 6.2人、境界群 7.6人、低値群 32.8人であり、ABI低値群は正常群に比べ、心血管病の発症リスクが5.4倍(95%信頼区間[CI] 2.6-11. 1)有意に高かった。ABI低値群における性、年齢、収縮期血圧値、降圧薬服用の有無、糖尿病、血清総コレステロール値、血清HDLコレステロール値、肥満、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣で多変量調整後の心血管発症の相対危険は2.4(95%CI 1.1-5.1)であった。心血管病の病型別にみると、ABI低値群の虚血性心疾患発症の相対危険(多変量調整後)は、正常群に比べ4.1倍(95%CI 1.6-10.6)高かった。ABI値と脳卒中発症の関係に有意な関連を認めなかった。さらに、同様の集団の追跡調査の成績を用いて、baPWV値と心血管病の関係を検討した。baPWV値 が<13.2 m/s、13.2-15.0 m/s、15.1-17.0 m/s、17.1-20.4 m/s、>20.4 m/sと上昇する毎に、性・年齢調整後の心血管病発症率(対1,000人年)は、1.0、2.1、6.1、7.2、13.2と有意に上昇した(p for trend =0.01)。baPWV値が20%上昇する毎に心血管病発症の相対危険(多変量調整後)は1.3倍(95%信頼区間[CI] 1.1-1.5)増加した。心血管病の病型別にみると、脳卒中の発症リスクは、baPWV値が20%上昇する毎に1.47倍(95% CI 1.21-1.80)上昇したが、baPWV値と虚血性心疾患の間に有意な関連を認めなかった。既知の心血管病危険因子のみで作成されたリスク関数に比べ、baPWV値を加えて作成されたリスク関数では、ROC(receiver operating characteristic)下曲線面積は有意に増加した(0.78対0.76、p=0.01)。心血管病発症の高リスク者を判別するためのbaPWVのカットオフ値をROC曲線検討したところ、17.6 m/sであった。以上の成績より、地域一般住民においてABI値やbaPWV値は、心血管病発症の簡便かつ有用な指標であることが示唆された。

○二宮 利治九州大学大学院医学研究院附属総合コホートセンター

末梢動脈疾患と心血管病発症の関係:久山町研究F-5

Page 39: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

39

特別報告

上腕―足首間脈波速度の予後予測指標としての有用性検証のメタ解析 (individual participants

meta-analysis):その進捗状況冨山 博史、山科 章

東京医科大学循環器内科

 検査の予後指標としてのエビデンスレベルを高める(Ia)には前向きコホート研究のシステマテックレビューによる有用性の確認が重要である。既にVlachopoulosらにより上腕―足首間脈波速度(baPWV)の予後予測指標としての有用性を実証するメタ解析の結果が報告されている。このVlachopoulosらのメタ解析では18の前向き研究、総勢8169例の成績から平均3.6年の経過観察でbaPWVが1m/sec増加するに従い12%心血管疾患発症リスクが増加することを報告している。しかし、このメタ解析には抄録のみの症例も含まれており、論文として発表されたものは15編にとどまり、多くが腎臓疾患、心疾患の症例での検討である。また、このメタ解析は個々の論文のハザード比などを再解析した解析であり、個々の症例のデータを再解析したindividual participants meta-analysisではない。このため、1. 予後予測指標としてbaPWV値レベルごとの有用性の評価が困難、2.baPWVの基準値が未設定、3.心血管疾患高リスク症例でなく、心血管疾患軽症―中等リスク症例におけるbaPWV予後予測指標としての有用性は不明、4.Framingham risk scoreなど従来のリスク評価指標とbaPWVの予後予測指標としての独立性が不明確、5.血圧の影響の評価が不明確、6.同時測定される足趾上腕血圧比(ABI)とbaPWVの予後予測指標としての有用性の対比は未実施、などの限界を有するメタ解析であった。 こうした背景からbaPWVの診療指標としてのエビデンスレベルを高めるには新たなメタ解析、特に個々の症例のデータを再解析したindividual participants meta-analysisが必要な状況にある。本プロジェクトは、これまでに発表された既報の前向き研究のbaPWV、心血管エベントの内容、ABI値、古典的心血管リスク指標数値のデータをExcel fileにて各施設から中央解析センターに集約し、解析(individual participants meta-analysis)を実施する予定である。現在、11施設から約1,1000例のデータが提出されており、この中には我が国の代表的循環器疫学コホートのいくつかも含まれている。可能な限り症例数を増やすため、2015年3月末を期日として現在、公募を行っている。6月の本発表ではこうした背景、メタ解析(individual participants meta-analysis)の進捗状況について報告する。

Page 40: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

CVTセッション

40

生活習慣の変化に伴い、動脈硬化性疾患の増加が指摘されて久しい。予防から診療、再発対策など多くの現場で取り組みがなされているが、早期発見・早期治療の原則に変わりはない。動脈硬化の早期発見には、血管内皮機能、脈波伝搬速度(PWV)等の指標があるが、今回は末梢動脈閉塞症(peripheral arterial occlusive disease: PAOD、以後PADと略)の早期発見に寄与するABI(ankle brachial pressure index:足首血圧を上腕血圧で除した血圧比でABPI、APIとも略される。通常は1.0以上、1.4未満)に注目してその意義について検討する。PADの中でも閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans: ASO)が重要で、PAD/ASOのスクリーニングには、心臓内科の外来で心疾患スクリーニングに心電図を実施するのと同様に、「ABI」を計測することが勧められている。スクリーニングの対象者としては高齢者とされていたが、最近になって対象を、下肢の症候を有する例、および無症候であっても糖尿病や喫煙者は50歳以上、そして65歳以上の全例とするよう推奨されている。ASOでは、全身の動脈硬化が進行し、脳血管障害、虚血性心疾患、腎虚血など全身の動脈硬化性疾患が合併している頻度が高い。動脈硬化の診療には生活習慣病(糖尿病・喫煙・脂質異常症・高血圧など)の管理が必須であり、進行すればそれぞれの臓器への運動療法、薬物療法、再灌流療法などの対策が必要となる。ABIはPAD/ASO発見及び経過観察の際に指標として用いられるが、その計測法に注意が必要である。我が国では、現在、フォルムなどの様な簡便な計測機器が普及しているが、その用い方のピットフォール、また通常のドプラ血流計と血圧計を用いる計測法の熟知、そしてABI値の意義、すなわちABI低値や高値の意味、変動値の評価、治療後の評価など、注意すべき課題もある。さらにABIが低値となると全身の動脈硬化性疾患の増悪も危惧される。また足趾血圧が必要な場合もあり、さらに経皮酸素分圧や皮膚灌流圧など他の指標と、どのように使い分けるかも周知しておく必要がある。このセッションでは、動脈硬化診療にABIを如何に活かすかを、技師、看護師、医師の立場から、それぞれにその計測法、ピットフォール、適応、意義などについて解説を戴く予定である。

○松尾 汎医療法人松尾クリニック

【座長の言葉】動脈硬化診療にABI を活かす

Page 41: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

41

CVTセッション

■ はじめに

血管診療技師(CVT:Clinical Vascular Technologist)は当センターに5名在籍、当院の脈管診療には欠かせない存在となっている。CVTの業務は、脈管領域の無侵襲診断、医師による侵襲的診断・治療の介助まで多くの診療に貢献している。脈管領域の検査であるABI(ankle brachial pressure index:ABPI,API も同義語)は比較的簡便で再現性の良い検査だが、ピットフォールも多く存在する。

■ ABIの評価

ABIは正確に血圧測定ができていれば健常肢で0.9未満になることはない。しかし、0.9以上でも狭窄病変が存在することもあり、ABIは確定診断ではなくあくまでもスクリーニング検査である。ABIは病態によって過小評価する場合も多く、結果報告する際には注意を要する。ABIのみ検査をしていると分かない場合あり、身体所見(問診・視診・聴診)や他のモダリティを考慮する必要がある。正常範囲は0.9 以上1.3 未満.この値であれば膝窩より中枢側の高度狭窄や閉塞などによる有意な血流低下の可能性が低い.0.9 ~ 1.0:border line.0.9 未満:下肢動脈に有意狭窄または閉塞の存在を疑う。0.4 未満:安静時疼痛が発生する重症虚血肢を疑う。0.25 未満:患肢切断の恐れのある重度のPAD を疑う。1.3 以上:圧迫不能の下肢動脈壁石灰化疑い、上肢動脈の狭窄を確認、TBI測定が望ましい。

■ TBIの評価

足趾上腕血圧比TBI(toe-brachial pressure index:TBI)は上腕の血圧と足趾血圧の比(足趾の最高血圧を上腕の最高血圧で割った値)であり、足首動脈石灰化が強い場合などに測定される。TBI の基準値は0.7 以上であり、0.6 以下の場合には下肢動脈に閉塞や狭窄の存在を疑う。糖尿病や透析患者では下腿動脈壁の石灰化が起こりやすく、ABIが正確に測定できない症例が見られる。足趾動脈は石灰化の影響が少ないため、石灰化の強い症例などABIが評価困難な場合に有効である。糖尿病や透析患者のような石灰化が疑われる症例では、ABI が1.3 未満であっても血管石灰化による偽正常化があるため、TBI の実施が推奨される。また、バージャー病では末梢動脈優位に病変が見られるため,全症例でTBI の測定が望ましい。当院では、ABI結果が1.3 以上や身体所見と合わない場合、末梢動脈の病変が疑われた場合にABIとTBIを合わせて施行している。

■ 注意点

血圧脈波測定時の注意点として、来院してすぐ測定すると、下肢に閉塞性病変がある患者は運動負荷後のように足関節の血圧低下が起きている可能性がある。健常者では 5分、下肢虚血が疑われる患者では 15分程度の安静時間が必要であるが、実際はベッド上での安静時間を取ることは難しい。当院では待合室を近い位置に設けることで待ち時間を安静時間とし、同時に施行する心電図検査を先に行うことで10分~ 15分程度の安静時間を確保できている。その他、食後、喫煙については 2 時間は控えるほうが望ましく、環境温度も22 ~ 25℃に保ち血圧変動の影

○三木 俊東北大学病院生理検査センター診療技術部生理検査部門

CVTからみたABI 検査の実際とピットフォールC-1

Page 42: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

42

響も考慮する。また、緊張感を和らげ、リラックスできる体位、検査の説明を十分に行い、患者の協力を得ることも重要である。

■ 最後に

ABI の測定は自動血圧計で簡便になったが、正確に測定できているかを判断するのは検査者の役割であり、四肢の血圧だけでなく脈波の% MAP(Mean Arterial Pressure)や下肢のUT (Upstroke Time)なども考慮して報告する必要がある。また、検査前に理学的所見などの問診・視診・触診を得てから測定し、CVTからみた数値の妥当性を評価することも重要である。

Page 43: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

43

CVTセッション

■ はじめに

末梢動脈疾患(PAD)の診断において、8年前(2007年)国際的な診断と治療のガイドライン「TASCⅡ」が発表された。その中に記載されている推奨事項11は私たち看護師も把握しておくべき内容であり、「PADリスクのある患者、または下肢機能低下がみられる患者では、末梢の拍動を評価する血管検査を行うべきである。」と記され「PADの病歴のある、またはPADが示唆された患者は、足関節上腕血圧比を含む客観的検査に進むべきである。」と示されている。看護師は医師が診察を行う前に問診を行い、医師はその問診票を参考に視診、触診、聴診を行い、検査指示を出す。診断、治療へと進むための重要な検査を、TASCⅡを踏まえたCVTナースとして理解し、どのように関わるべきか考え、実施してきたことを報告する。

■ 目 的

“PADの早期発見” そのためのアセスメントのひとつであるABI検査の必要性を、広く看護師に伝え実践する。

■ 実施経緯

2009年CVTを取得し、血管外科看護師として、透析サテライト施設を数多く管理している本院(民間総合病院)で勤務していた。すでに医師、検査技師などを含む血管外科チームの一員として、Vascular Labにナースステーションをおき、義肢装具士らと共にフットケア外来を行うなど、CLI(重症虚血肢)への積極的な介入を行っていた。しかし2010年医師らの移動により縮小化した診療へと変わっていった。患者のニーズは更に増すこととなり、フットケア看護科を立ち上げ、看護チームによる院内患者のフットケア強化が求められた。しかしながら透析患者など、多くの合併症を持つ患者の管理において、もっと早く、本人も看護師もこのような重症化を予測し対応していれば、状況は変わっていたのではないかと思われる症例を度々経験した。そして、基幹病院での早期教育や、地域施設での早期発見を充実させなければいけないという思いは募る一方であった。チーム看護してきた多くの患者様を後輩に託し2012年現在の基幹病院に移動し、糖尿病教室や腎不全教室の実施、近隣の看護師達を世話人とした「南大阪フットケア研究会」を立ち上げた。

■ 実施内容

フットケア研究会は、年2回のセミナーを計画し、前期は実技講習、後期は講演会を主として開催してきた。前回、第4回セミナーでは、テーマを「血流評価してますか」として、参加者全員に血圧計を用いた簡易的ABIの測定方法を実施した。各自ペアになり、上腕の血圧と両足関節の血圧を測定し、ABIを算出。この実践を臨床での血流障害早期発見の手段として、活かしていくよう促した。

○溝端 美貴独立行政法人 労働者健康福祉機構 大阪労災病院 CVT(血管診療技師)・フットケア指導士・透析療法指導看護師

CVTナースからみたABI の位置づけC-2

Page 44: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

44

■ 結 果

参加者は足関節で血圧測定をしたことがないという看護師が多く、血圧計でABIを測定できることも知らない看護師が多かった。参加者アンケートでは、「セミナーに参加して学ぶことが出来たか」との問いに、回収した67名全員が「学ぶことが出来た」と答えた。この回はSPPの機器を3台借入れ、企業説明のもとSPPを直接使用させてもらいえるという企画をメインとしていたが、「今回のセミナーで良かったと思える項目は何ですか」との問いに、60%もの人がABIと答え、SPPと答えた数を上回る結果となった。

■ 考 察

TASCⅡにも示されているように、ABIは大変重要な検査であるが、維持透析を行う小さなクリニックや診療所も含め参加者全員に、ABI機器があるか訊ねたところ、3割以上の施設が機器を持っていなかった。そうした点からもこの「血流評価」をテーマとしたセミナーの評価が高かったことが覗える。看護師は末梢血流障害の有無に関する観察と診断をもっと積極的に行うべきであり、末梢血流評価を単に冷感や足背動脈の触知のみで終わらせてはいけないと考えている。ABI検査の必要性は、看護師が問診し、足背を触診した時点で判断できなければいけない初歩的なものである。診察前の患者の血圧を測定するのと同じように、上腕血圧測定に続いて、足関節でも血圧を測定しABIを算出してから報告することが望ましい。実際そのように報告出来る看護師も増えてきている。異常時は更なるフォルムでの精査を、一般的な基本検査として捉え、広く普及することが望ましいと考える。セミナーにおけるアンケート結果においてもABIの実技が良かったとの回答が最も多かったことから、看護師の関心が強いこと、つまりその必要性を感じているということが示唆された。PAD早期発見のため、ABIの必要性を伝え、CVTナースとして下肢救済に貢献できるよう努めていきたいと考える。

Page 45: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

45

CVTセッション

■ はじめに

閉塞性動脈硬化症のスクリーニングにおいて,ABIは最も普及している検査法といえる.ABIが異常低値や異常高値を呈する場合,心筋梗塞などの心血管イベントの発症が多くなるため,TASC IIにおいて,ABIが0.90以下ならびに1.40を超える場合には潜在性心血管イベントの存在を疑うべきとされている.また,ACC/AHA 末梢動脈疾患診療ガイドライン2011においても0.90以下ならびに1.40以上を異常値としている.また,施設によっては血管内治療の前後で数値を確認し,改善の有無を判断することがルーチン化されている.今回,脈管専門医からみたABIの位置づけについて解説する.

■ ABIで読み解く血管病変

ABIを考える際,数値のみで評価していないだろうか? ABIが0.90以下の場合,下肢動脈に有意な狭窄を疑うが,透析患者や糖尿病患者においては,病変部の石灰化が高度になると重症下肢病変であってもABIが正常値や1.40以上を呈する場合がある.また,血管炎で狭窄している場合もあるため,ABI値のみで動脈硬化を考えるのではなく,血管病としてのABI検査の役割を考える必要がある.他にも,ABIの数値ではなく波形をみることにより,新たな病変が見つかることもある.特に上肢においては,左右の収縮期血圧のうち高い方で計算しているため,上肢血圧に左右差があった場合は波形および上肢血圧の数値を必ず確認する.同時に,検査者にはぜひとも異常波形を確認した場合は主治医に一報連絡する,あるいは実測で血圧値を再確認する習慣づけを依頼したい.

■ ABIを地域診療に活かす

公共交通網の整備が不十分な地方都市においては,自動車が主な交通手段であり,住民の歩行機会が少ないことが推測される.そのため,不認識の動脈硬化を有する市民や,跛行症状を呈しない潜伏性PAD患者の存在が疑われる.このような患者を拾い上げるには,市民講座にABIを導入する方法は有用である.様々な地域でTake ABIが開催されており,当院でも定期的に,「あなたの血管は大丈夫?」として市民講座を開催し,頸動脈エコーによる総頸動脈IMTとABI計測を組み合わせて評価している.昨年は100人の市民に対して検査を行ったところ,内頸動脈狭窄2例,ABIが0.9以下の症例を1例で認めた.また,上腕血圧の左右差が確認された症例も1例存在した.地方都市の高齢者における動脈硬化の進展状況は我々の想定を下回り有病者が少なかったが,検査の都合で人数制限をせざるをえず,健康志向の強い方が応募したことが一因と考えられた.

■ おわりに

ABIは簡便に動脈硬化の評価ができる有用な検査法といえる.脈管専門医としては,単に依頼をして数値結果を確認して下肢動脈の狭窄・閉塞を判断するのみではなく,様々なデータから疾患を読み解く必要がある.さらに,CVTと密に連携し,専門家としての啓蒙活動を行うことも重要な役割と考える.

○濱口 浩敏北播磨総合医療センター神経内科

脈管専門医からみたABI の位置づけC-3

Page 46: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

MEMO

Page 47: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

MEMO

Page 48: 第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABI AI - c …第15回臨床血圧脈波研究会 PWV/ABIと中心血圧・AI 基礎から臨床・予防への応用まで 吉川 公彦 (奈良県立医科大学放射線医学教室教授・IVRセンター長)

MEMO