火熨斗・こて(炭火用) - Okazaki · 2 days ago · 学べる道具vol.26 <参考文献>...

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学べる道具 VOL.26 <参考文献> 『日本大百科全書』小学館、1989/『世界大百科事典』平凡社、2005 『絵引民具の事典』岩井宏美ほか 河出書房新社、2008 「火熨斗」や「こて」は、現在の電気アイロンに代わる道具で、 その歴史は古く、今から 1000 年以上前の平安時代から昭 和初期(1930 年代)頃まで使われていました。裁縫 さいほう の仕上げや、洗濯物 せんたくもの のしわを伸ばすなど広く 用いられていました。 鍋のような形をした「火熨斗」は、手に持つと適度な重さがあります。金属の器に炭火を入れて 熱し、柄を持って、平らになっている器の底の部分を布地の上にあて、その器の重みと、熱によ ってしわを押し伸ばすようにして使います。「こて」は金属部分のこて先を炭火で直に熱して使用 します。笹 ささ の葉の形をした笹ごては、先がとがっているため裁縫で細かな部分を仕上げるのに便 利です。現在も同じ形の電気で熱する「電気ごて」が見られます。炭火を利用する「火熨斗」や「こて」 は、当然 とうぜん 、現在の電気アイロンのような温度調整機能はないため、指に唾 つば をつけて金属部分をさ っと触 さわ ったり、頬 ほお に近づけて熱さの加減 かげん をはかり、あて布や霧吹 きりふ きなどを使い、布地を傷めない ように使用したそうです。 また「火熨斗」は、平安時代に貴族の布団 ふとん を温める道具としても使用されました。古くから使用 されてきた「火熨斗」も、明治時代(19 世紀末頃)にイギリスから「炭火アイロン」(西洋火熨斗)が伝 わり普及したため、徐々に使用されなくなりました。 熨斗 ・こて(炭火用) 火のし・こて(炭火用)/岡崎むかし館蔵 炭かご/岡崎むかし館蔵

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学べる道具VOL.26

り普及したため、徐々に使用されなくなりました。

火ひ

熨斗の し

・こて(炭火用)

火のし・こて(炭火用)/岡崎むかし館蔵

<参考文献> 『日本大百科全書』小学館、1989/『世界大百科事典』平凡社、2005

「火熨斗」や「こて」は、現在の電気アイロンに代わる道具で、

の歴史は古く、今から1000年以上前の平安時代から昭

初期(1930年代)頃まで使われていました。裁縫さいほう

の仕上げや、洗濯物せんたくもの

のしわを伸ばすなど広く

いられていました。

鍋のような形をした「火熨斗」は、手に持つと適度な重さがあります。金属の器に炭火を入れて

し、柄を持って、平らになっている器の底の部分を布地の上にあて、その器の重みと、熱によ

てしわを押し伸ばすようにして使います。「こて」は金属部分のこて先を炭火で直に熱して使用

ます。笹ささ

の葉の形をした笹ごては、先がとがっているため裁縫で細かな部分を仕上げるのに便

です。現在も同じ形の電気で熱する「電気ごて」が見られます。炭火を利用する「火熨斗」や「こて

、当然とうぜん

、現在の電気アイロンのような温度調整機能はないため、指に唾つば

をつけて金属部分をさ

と触さわ

ったり、頬ほお

に近づけて熱さの加減か げ ん

をはかり、あて布や霧吹き り ふ

きなどを使い、布地を傷めない

うに使用したそうです。

また「火熨斗」は、平安時代に貴族の布団ふ と ん

を温める道具としても使用されました。古くから使用

れてきた「火熨斗」も、明治時代(19 世紀末頃)にイギリスから「炭火アイロン」(西洋火熨斗)が伝

炭かご/岡崎むかし館蔵

『絵引民具の事典』岩井宏美ほか

河出書房新社、2008