Paper No. 10385 - G-TOOL ·...

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概     要

 ブリストルブラスティングは、優れた新腐食除去処理として、金属等表面処理業界の技術者や専門家

の間で急速に広く受入れられている。この新しい処理には、「主軸回転速度≒ 2,500rpm」を出す特徴的

な設計の電動(エアー)ワイヤーブラシ工具を使う。使用時の基本的原理は、表面にブラシ先端が当た

ってすぐに引き戻る「連続的な跳ね返り機構」による繰返し衝撃で、極小の凹(窪み)を作って、多層

の腐食除去や新たな基層材料を露出すると同時に、必要とされるアンカープロファイル(表面の質感等)

を形成する。

 本報告ではブリストルブラスティング処理により生じる、表面の清浄度と質感を検証し、報告する。

具体的な成果は、清浄度や表面粗度をはじめ、通常造船業で施される部材除去等、目的に沿った高い表

面処理仕上げの評価である。

 加えて、工具としての耐久性と表面質感との関係も評価し、ブリストルブラスティング手法の包括的

な総寿命を予測する基本的情報を報告する。

 最後に、ブリストルブラスティング処理の推奨基準に関する基本的問題を端的に紹介する。そして、

ブリストルブラスティング工具と、通常の表面仕上げ工具使用時の表面質感(表面清浄度と表面性状)

等を比較した。この検証結果に基づき、ブリストルブラスティング処理による表面の状態は、グリッド

ブラスティング技術と似通っていることが明らかになった。

キーワード

アンカープロファイル、ブリストルブラスティング、腐食除去、表面清浄処理、表面処理

ブリストルブラスティング処理による、造船用スチール (ABS-A) の表面処理

Robert J. Stango 教授、博士号取得者

Raymond A. Fournelle 教授、博士号取得者

Jorge A. Martinez, Piyush Khullar

マーケット大学機械工学部

1515 West Wisconsin Avenue

Marquette University

Milwaukee, WI 53233 USA

Paper No.

10385

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機械的表面清浄技法の考察

 本項では、金属表面の清浄度と質感確保に現在使用されている機械的技法処理を端的に考察する。し

かし、ブリストルブラスティングは比較的新しい処理なので、ハードウェア、技巧、並びにこの先端技

法特有の形態について、更に詳細な説明を検証する。本項の結びで、ブリストルブラスティング特有の

主要問題をいくつか概要として繰返し述べる。

ワイヤーブラシ

 ワイヤーブラシは柔軟性のある金属ブラシから成り、図 1a のようにハブ(回転軸)に固定されている。

ハブが回転するにつれ、ワイヤー先端が繰返し処理をすべき標的表面に接触し、作業中に筋状の痕(引

掻き線)が徐々にできる。これらはブラシの先端により生じるもので、特に接触部分に凹(窪み)を作

る。その為、表面の腐食破片と母材表層との双方を除去する並列した繊細な溝を多数形成する。作業後

の表面状態は、図 1b で示す筋状の痕(引掻き線)となる。これは複数の金属ブラシの先端が、部材除去

処理中に繰返し作用した跡である。

ニードルガン

 図 2a のニードルガンは、一束に並列するワイヤー(別名“のみ”)から成り、作業表面と接触するよ

うに置く。工具を作動するとワイヤーが軸方向に(前後)に素早く振動して、ワイヤー先端と標的表面

図 1:(a) 従来のワイヤーブラシ (b) ブラシ後の表面質感(連続的な接触で生じた引掻き線)

(a) (b)

図 2:(a)12 ロッド空気圧式ニードルガン (b) 腐食除去後の典型的な表面質感

(a) (b)

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が繰返し接触し、凹(窪み)が生じる。

 これを順次継続することで、図 2b のように表面の腐食破片を取除くと同時に、表面はザラザラした質

感になる。

ボンデッドアブラシブ

 ボンデッドアブラシブという用語は様々な研磨工具を示し、鋭い粒状鉱物を使用して腐食面を磨く。

この工具の機構や形状は多岐にわたり、様々な回転やレシプロ(往復)塗装アブラシブパッド、ディス

ク(図 3a 参照)、又はホイール、並びに不繊アブラシブパッド、ディスク叉はホイール等がある。いず

れにせよ、両者の基本的原理は似ている。

 つまり、研磨剤を付着させた工具に力を加えると、鉱物が表面の不純物と基幹金属の双方を磨く。そ

の結果、表面質感は筋状の痕(引掻き線)となり、部材除去処理における繊細な個々の溝状況が把握で

きる。(図 3b 参照)

 これらの工具を使用すると基層内の温度は上昇し、表面が焼焦げたり色落ちする場合がある。表面温

度の上昇により、基層に損傷(劣化)が起き、清浄面の腐食を早め易いと言われている。研磨工具によ

り大きな力を加えることで表面温度が増す可能性があり、基層に更なる損傷(劣化)をもたらす。

 従って、工具に過度の力を加えることは、例えば、清浄作業員の生産性が上がっても、避けなければ

ならない。エンジニアリング業界では、こんな工学技術倫理が一般に広く知れ渡っているが、著者の 1

人が SSPC/NACE 表面処理規準を概念的に考察したところ、表面処理業界の専門家に伝えられるような、

警告的な有益情報は入手できていない。

グリッドブラスティング

 グリットブラスティング処理は“発射”砥粒を使用し、それが図 4で示すように標的表面に向かって

飛散する。複数の砥粒の衝撃で“クレーターのような”極小凹(窪み)の形成と同時に、もろい腐食箇

所を除去して新しい基層材料を露出させる。

 図 4b のような極小の凹(窪み)が繰返し生じると、“山と谷”からなる表面質感が形成され、これが

再発性衝撃と作業表面の変形に関連する。

図 3:(a) 電動アブラシブディスク (b) 接触部分に研磨用鉱物を施したことにより形成された引掻き線を示す基層(処理後の表面)

(a) (b)

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ブリストルブラスティング

 最近開発されたブリストルブラスティング工具(図 5a 参照)は、ブラシのような外観で、尖った先端

のワイヤーが疎らに取付けられている。

 ブラシが回転することにより、各ブラシの先端は金属表面に当ると即座に跳ね返り(若干の後退)、

グリットブラスティング処理時とよく似た、極小の凹(窪み)を多数形成する。このように繰返される

と、腐食層が除去され、図 5b で示すザラザラした模様の新たな表面質感が浮かび上がる。

 

工具デザインと基本的原理

 図 6に、ブリストルブラスティング工具のデザインと衝撃メカニックの詳細を示す。まばらに植毛さ

れたブラシがベルトを突き抜ける形で取り付けられている(図 6a)。これらは柔軟性があり、高強度、

繊維強化のポリマーからなり、腐食処理ではエネルギーを分散させると共に、蓄える働きもある。

 図 6b は、工具の力学的特徴を示す。ここでは「時計と逆方向に 2,500 回転/分」する 1本のブラシの

様子を描く為に、高速デジタルカメラによる連続画像を重ね合わせている。ブラシの先端が作業表面に

近づくにつれ(動きは左→右方向)、先ず予め記された衝撃箇所に接触する。標的表面に当たると、直

ぐにクレーターのような極小の凹(窪み)が形成される。その後ブラシ先端は連続的に表面から跳ね返

る。この間、ハブは回転を続け、ブラシ先端の最後の軌道により主な衝撃箇所が表面形成される。延性

鋼表面に形成される典型的な衝撃クレーターが図 7であり、グリットブラスト媒体によって通常生じる、

ショベルクレーターと関連付けられている。

図 4:(a) アブレイシブブラスティング処理の略図 (b)G16 スチール媒体により形成された特徴的なグリットブラスト表面

(a) (b)

図 5:(a) 最近開発されたブリストルブラスティングシステム(これは空気圧式タイプ)および (b) ブリストルブラスティング処理により形成された特徴的な表面

(a) (b)

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グリットブラスト媒体 対 ブリストルブラストワイヤーの運動エネルギー

 ブラスト手法によるグリットブラスト粒子のエネルギー量は、腐食層除去や必要なアンカープロファ

イル(表面の質感等)となる極小の凹(窪み)形成の両面で、その能力があるかどうかを評価する重要

な手段と見なされている。本項では、グリット粒子並びに回転ブラシの各運動エネルギーを計算する。

同時に異なる 2つの処理を施す際に考えられる相対的な性能を比較する基となる。

 図 4a は、グリットブラスティング処理の略図で、通常毎秒 30-120m/s 内の速度でノズルから媒体が突

出するという圧縮方式である。グリット粒子 epの運動エネルギーは

ep= 1/2 mpvp2 sin2α (1)

で通例、計算される。この時、Vpは質量Mpを持つグリット粒子の速度で、その供給ノズルを平面の標

的表面に対応する角度に傾ける。

 次に、ワイヤーブラシの概算運動エネルギー量は図 5a のように、加速バーを使用する回転工具用に計

算される。この工具は、回転ブラシの経路上に配された固定棒からなり、図 8に詳しい説明がある。つ

まり、ブラシが加速バーに接近して当たり、その結果後退(湾曲)する(図 8a)。より大きな潜在的エ

ネルギーを放つ前に保存される。跳ね返るとすぐに(図 8b)、潜在エネルギーが運動エネルギーに変わ

って、ブラシ先端は標的表面と衝突する前に更に加速する。現在の著者 2名が最近、高速デジタルカメ

ラを用いてこの問題点を検証した。以下は彼らの検査結果(詳細は参考文献 9)の要約である。

図 7:ブリストルブラスティング工具(部材系統:API 5L)により形成された典型的な衝撃クレーター

図 6:(a) ブリストルブラスティング工具のデザインと形成状態、(b) は高速デジタルカメラで撮影された 1本のブラシの連続画像で、接近(フレーム 1,2,3)、接触・腐食処理(フレーム 4)、それに続く逆戻り(フレーム 5)、ブラシ均衡位置に戻る(フレーム 6-11)

(a) (b)

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 グリッドブラストの速度Vpと、ブリストルブラスティング工具 n(rpm) の主軸速度との関係が、容易

に計算できることを示すものだ。

(2) 

(2.1)

(2.2)

 この時、ブラシの質量はMb、ブラシの許容長さは L、ブラシ工具ハブの径 rh(図 8b 参照)、並びに

K=1280.5 である。方程式 (1) と方程式 (2) は、ふたつの異なった処理のエネルギー等価を比較する基と

なり、その結果が図 9に要約してある。実際に例を挙げると、ノズル出口速度が 95m/s である G16 スチ

ール媒体を使用することは、主軸速度 n=2,600rpm で作動するブリストルブラスティング工具の使用に相

図 8:(a) ブラシ先端と加速バーの最初の接触、並びにその後の後部に後退(湾曲)する様子 (b) 加速バーから離れた直後、標的表面方向にブラシ先端が加速

(a) (b)

21sinα 1

AAmm

vp

bp= + { }

A1 = + 2

30π

2 hrnKL

,

A2 = 21

12(LK ) ,

図 9:主軸速度(ブラシの強化運動を含む)と様々なスチール媒体のグリット速度の関係(注:主軸速度2,600rpmが G16 媒体のグリッド速度 95m/s に相当する。この際のワイヤーブラシの寸法・・・フェース幅 =22mm、ハブの半径 =7.5mm ブラシワイヤー直径 =0.73mm、ブラシ長さ:27mm、ブラシ密度~ 480)

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当する。

ブリストルブラスティング処理の実施

 手動式工具による表面処理を施すためには、手先の器用さと充分な視力、そして表面仕上げ機器の性

能に影響を及ぼす主なパラメーター(機構と数値)を基本的に理解していなければならない。それには

訓練と実施体験こそ重要で、これらにより作業員は望まれる結果を出すための技術を修得できるように

なる。ブリストルブラスティング処理を適格に施すのに必要不可欠な様々な技術は、他の表面処理に要

する技術とかなり似ており、次の 3点が含まれる。1)標的表面処理に関する工具の取扱い方、2)標的

表面に生じる力のコントロール、3)作業中の工具の作業速度と方向の把握。以下に、作業員が一般的な

腐食処理を実施する手順を端的に取上げる。

・清浄パラミーター処理の初期化

 ブリストルブラスティング処理のパラメーターを適格に選択するためにはまず、表面の清浄箇所を見

つけ、最初に清浄又は検査するその表面の一部分を決める。一般に工具ハブの表面は図 10 のように、そ

れを使用する間は処理表面に対して垂直に向ける。腐食除去を施す間、ブラシ先端を直接腐食表面に接

触させて、最小の力を加える。その後、回転工具を横方向に徐々に「作業員の左⇔右」のどちらかに動

かす(図 10a 参照)。つまり工具に適切な圧力と速度を加えるためには、作業員自らが直接経験し、試行

する箇所を視覚的に確かめ、求められる清浄水準や必要条件に適うようにしなければならない。

・継続的及び系統的な清浄方法 / 様式

 作業員は腐食除去に適格な処理パラミーターを修得したら、処理すべく特定箇所を確かめ、それを完

全に網羅する簡単な計画を立てる。例えば図 10a のように、腐食したスチールコンポーネントの表面を

清浄しなければならない。同様に作業員はコンポーネント(構成部品)の最左端から腐食除去処理を始

めるようにし、例えば「左→右、横方向」に工具の表面に沿って動かす。

 このような手順を踏むと、その横の列は清浄されて表面が図 10a のザラザラした質感になるが、これ

が図 10a である。同様に、作業員は腐食表面の最先端部分に沿って清浄を進めることも重要だ。その後

図 10:腐食除去用のブリストルブラスティング工具の正しい使い方。最初に、最小限度の力と一定の速度を駆使して水平な列を設定する(図 10(a))。この処理はその後、清浄済みの前の列に第 2列を重ね合わせて繰り返す(図 10(b))。全ての箇所を網羅するまで、以前に清浄した箇所(列)に次の列を重ね合わせることを繰り返し、最終的に表面全体が清浄される(図 10(c))。

(a) (c)(b)

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の清浄作業は、それ以前の清浄箇所の下に次の開始地点に列を重複させて行なう。つまり、工具を正し

く使用し、最適な清浄や表面処理性能へ導くには、事前に清浄された箇所や列の下に連続的に重複した

列を重ね合わせていくことが必要となる。従って図 10b のように、作業員は清浄箇所や列を正しく重ね

合わせて、次の列を設定し清浄できるよう、回転工具を作動させる表面を順次作業を施す表面の下に直

接置くようにする。

・腐食除去処理の完成

 腐食部分はこれまで説明した手順を繰り返すことで完全に清浄される。図 10c を見れば、腐食箇所の

上面が完全に清浄されていることが分る。又、作業員は残りの表面箇所のどこからでも腐食除去ができ

る。最終的に、その表面に不十分な清浄箇所があっても、必要に応じて仕上げの“タッチアップ”清浄

をその箇所に施す。(部分処理も可能)

ブリストルブラスティング工具性能の実験的評価

 現在、文献の中で、表面処理を適用するブリストルブラスティング工具の性能を定量的尺度で示す情

報は殆ど無い。つまり、ブリストルブラスティング処理の性能を含む技術的情報は、API5L スチールや

同様の組成物からなる他の原料を使用するパイプラインまたは石油産業の用途に限られているようだ。

しかしながら本調査では、ブリストルブラスティング処理の性能は、酷く腐食したABS-A 鋼板のテスト

サンプルの清浄やプロファイルという状況下で検査した。ABS-A 鋼板は、造船時に一般に使われる部材

である。故に、本項での結果は、ブリストルブラスティング工具を使用する場合の性能を評価するため

に開発された研究テンプレート(枠)に付随し、これらの工具は表面仕上げ業界にとって重大な結果と

なった。

図 11:ブリストルブラスティング工具の腐食除去性能を評価するために使用された、ABS-A 鋼板の腐食箇所

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 つまり、図 11 の ABS-A テストサンプルを詳しく調べてみると、その表面はかなり凹(窪み)がある、

厚い腐食層から成っていることが分る。その結果、SSPC Condition D(窪みが 100%錆びた状態)は、

表面にできた当初の腐食の深刻さを正確に表しているようだ。

処理表面の清浄度と質感

 図 12 は、最初の腐食表面(上部)と、ブリストルブラスティングを施した清浄部分(下部)の比較を

示す。

 これら表面の詳しい検査結果が図 13a では更に高倍率で表され、ブリストルブラスティングを施され

た表面(図 13b)は、一様に腐食の無い状態で、清浄されたテストサンプルの凹(窪み)に腐食は認め

られない。

図 12:洗浄前(上部)の、何も手を施していないABS-A テストサンプルの最初の腐食表面と、ブリストルブラスティング清浄後(下部)の状態

図 13:(a) の写真は、何も手を施されていない配管の表面で、腐食や窪みの程度がわかる。(b) は腐食除去後のブリストルブラスティング処理された表面の清浄度。

(a) (b)

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 図 14 は、走査電子顕微鏡画像による清浄表面で、基板部材が露出し、表面の質感が詳細にわかる。こ

の画像(50 倍)を詳しく観察してみると、表面には残存腐食部分は皆無で、図 7(極小の窪み)で見ら

れる特徴的な衝撃クレーター(即ち、ショベル型極小の窪み)が、清浄表面に沿って繰返し現れている。

 ブリストルブラスティング処理による表面の清浄度と、鋼構造塗装審議会(SSPC)により公表された

電動手工具による表面の清浄度とについて直接比較してみる。ここで明らかなのは、ブリストルブラス

ティング施工後の表面は、パワーブラシ、研磨ディスク、ニードルガン等、全電動工具の処理過程で特

定する清浄度より遥かに勝っていることだ。

 またブリストルブラスティング処理後の表面は SSPC 標準 SP11 で引用されているように、露出された

金属に対し、他の電動工具で清浄した際の清浄度や質感よりも優れている。つまり SP11 では、凹(窪

み)の底に腐食が残り、最低限 25 ミクロンの表面プロファイルがある。一方ブリストルブラスティング

処理後は、腐食性窪みは全く残っておらず、次項で説明するように、その表面プロファイルは 52 ~ 80

ミクロンと変化に富んでいる。

 また、ブリストルブラスティング処理と、いわゆる SSPC VIS1 と呼称されるアブレイシブブラスト清

浄標準との比較も可能だ。視覚的水準を求めて鋼構造物塗装審議会(SSPC)の写真を詳しく調べてみる

と、ブリストルブラスティングの清浄性能は、ブラシオフブラストクリーニング(SP7)、インダストリ

アルブラストクリーニング(SP14)コマーシャルブラストクリーニング(SP6)の性能よりも勝ってい

る。しかしながら、ブリストルブラスティング処理は総じて、準完全清浄ブラストクリーニング [near-

white blast cleaning] (SP10)や、完全清浄ブラストクリーニング [white metal blast cleaning] (SP5)に

匹敵するだろう。

部材除去の研究

 機械的に表面処理を施して何層にも重なった腐食を除去しようとすると、どうしても基盤となる金属

層まで除去してしまうことになる。しかし、基幹部材を過度に除去すると、特に薄型表面部分では、薄

い横断面のある箇所の部品や構造の一貫性が損なわれる。従って相当な数の実験を行ない、ブリストル

ブラスティング工具の部材除去性能を評価した。この結果の一部が図 15 及び図 16 である。部材除去処

理は、3本軸の研磨機械を使用し、特定又は予め定められた深さでABS-A の表面に突き刺すことで実施

図 14:図 13b で示された、ABS-A 鋼板の処理表面の走査電子顕微鏡による画像(50倍) ブラシ工具は 25分間連続作動する。

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する。結果として、その工具により遮断無く予め定められた時間間隔で(通常 5秒)、基幹部材を除去し

た。

 それぞれの間隔で高画質の走査電子顕微鏡を使って部材の重さを測量し、部材の重さの違い(除去材

と同等)を記録。

 図 15 では、25 分間連続使用と規定された工具により、3つの異なった貫通の深さが記されている。つ

まり、0.1 インチ(グラフ上の菱形)、0.15 インチ(グラフ上の円)、0.2 インチ(グラフ上の四角)の貫

通の深さで除去された部材を記録し、工具の部材除去性能は浅い貫通(例えば 0.1 インチ)の時に最小

だったが、工具の一番深く貫通した所(0.15 インチ、及び 0,2 インチ)ではかなり増えた。同様の実験

で、工具の使用年数が部材除去性能に与える影響が評価された。

 これらの結果が図 16 である。3つの異なる時間、つまり 5分(菱形)、25 分(円)、および 60 分(菱

図 15:異なった貫通の深さで、25分間のサイクルでブリストルブラスティング工具を使用し測定した、ABS-A テストサンプルの部材除去率  ブリストル工具の概算仕様・・・フェース幅 =22mm、ハブ径:27.5mm、ブラシワイヤー直径:0.73mm、ブラシの長さ:27mm、ブラシ密度~ 480

図 16:異なる作業時間にブリストルブラスティング工具を用いた、ABS-A テストサンプルによる部材除去率の測定。ブリストル工具の規格概要・・・フェース幅 =22mm、ハブ径 =27.5mm、ブラシワイヤー径=0.73mm、ブラシ長 =27mm、ブラシ密度~ 480 。

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形)を経た工具でテストサンプルからの除去材に関する記録だ。いずれの場合も、実験は通常の貫通の

深さ 0.15 インチで行なわれた。その結果から、工具の使用期間が長くなるにつれて、ブラシ先端部は次

第に磨耗および / または破損し、工具の部材除去性能が減退することがわかった。

表面質感及び工具寿命の評価

 表面清浄処理で様々な工具や媒体を使用すれば、特徴的な表面外観或は、工具と作業箇所のインター

フェース(やり取り・手順)に従って起こる接触や相互作用に特有な“痕跡”が生じるのは避けられな

い。しかし、表面形態を詳細に見極めるには視覚的には無理があるので、より正確に建設的な表面特性

を数値化するために、多くの表面質感パラミーターを提案した。それにより、平均的な表面粗度パラミ

ーターRz は、しばしば塗装やコーティングを施す前の洗浄表面の“アンカープロファイル”を測定す

るために使用される。

 ブリストルブラスティング処理により形成される表面質感を詳しく理解するために、図 10 のように、

まず作業員が手動で一定の力を表面に施す。つまり、テストサンプルは一度移動する(すなわち、一回

横方向に動かす)だけで、その後にバンド(列)内の表面質感パラミーターRz の数値は、標準的実験

装置 SC301 を使用する工具の運動方向に沿った、数箇所の均一間隔サンプルポジションで測定した。

 その結果が図 17 で、作業員が施した 3つの異なった貫通の深さ、つまり低(四角)、中(菱形)、高

(円)が記されており、一番粗野な質感は、貫通の深さが最小の場合に現れることが分る。質感測定値

が著しく減少(およそ 20%の削減)しているのは、作業員が最も深く貫通した場合である。

 最後に、概算的座標位置 s=0.1 インチ(図 17 参照)に沿って記録された実際の表面プロファイルが、

図 18 である。これはブリストルブラスト処理された表面の局所的性質を示す。

 ブリストルブラスティング工具で生じる質感は、フィラメント先端の磨耗や破損により工具の使用時

間が増加するにつれて多様化する。この工具性能面は、手動で腐食したABS-A(図 11)の洗浄後、定期

的に Rz を測定し、標準的な press-film replica tape[ テープの一種 ] を使って検証した。つまり、図 19 が

試用期間とプロファイルの質感との関係であり、使い始めたばかりの新品が平均的な表面プロファイル

Rz-80 を示す。だが、工具の使用時間が長くなるにつれ、表面質感は次第に衰え、使用後 1時間もすれ

図 17:ブリストルブラスティング工具を一度だけ動かして、接触箇所の範囲内の数箇所で測定した表面プロファイル。これらのデータにより、表面プロファイルが形成される際に作業員が適用した貫通の深さが、どれだけ影響しているかが分る。

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ば Rz-52 まで低下する。

概 要 と 結 論

 ブリストルブラスティングは、腐食層除去に適格で優良な処理であると同時に、目的のアンカープロ

ファイルを形成する。ブリストルブラスティング処理の、腐食除去能力や表面清浄性能は、グリットブ

ラスティング作業と一般な関連諸条件における標準値と同等である。

 電動手動工具の清浄度標準 SP11 と連結して、ブリストルブラスティング工具の性能を SSPC VIS3 と

直接比較評価すると、ブリストルブラスティング処理は、電動ブラシや研磨ディスク、及びニードルガ

図 19:ブリストル工具の劣化に伴う表面質感やアンカープロファイルの変化。表面プロファイルは標準的なpress-film replica tape[ テープの一種 ] を使って記録した。ブリストル工具の規格概要・・・フェース幅 =22mm、ハブ半径 =27.5mm、ブラシワイヤー直径 =0.73mm、ブラシの長さ= 27mm、ブラシ密度~ 480

図 18:利用者が一度だけ工具を移動させることで、表面計上測定装置により測定されたブリストルブラスティング処理表面の地形学的プロファイル。バンド(列)内の概算位置は s= 0.1 インチ(図 17 参照)に適用する。

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ンによる清浄用手動工具を含む全ての電動工具の特徴的な清浄処理の清浄度、ならびにプロファイルよ

り優良であることは明確である。さらに、ブリストルブラスティング処理とドライアブラシブブラステ

ィング清浄標準 SSPC VIS を比較評価すると、ブリストルブラスティング処理の性能は、ブラシオフブ

ラストクリーニング(SP 7)、 インダストリアルブラストクリーニング(SP14)コマーシャルブラス

トクリーニング(SP6)の性能より勝っていることが判る。ブリストルブラスティング処理は総じて、

準完全清浄ブラストクリーニング [near-white blast cleaning] (SP10)や、完全清浄ブラストクリーニン

グ [white metal blast cleaning] (SP5)に匹敵するだろう。つまり、本報告書によって、ブリストルブラ

スティング処理とSP11で引用された一般工具との差異から再評価をして、腐食や表面仕上げ業界に向け

て、正確な性能の伝承を提案したい。

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10. SSPC-VIS 3, Visual Standard for Power- and Hand-Cleaned Steel, Steel Structures Painting Council, Pittsburgh, PA 15213-3724.

11. SSPC-VIS 1, Guide and Reference Photographs for Steel Surfaces Prepared by Dry Abrasive Blast Cleaning, Steel Structures Painting Council, Pittsburgh, PA 15213-3724.

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翻訳者:那須まゆみ

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