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ツイートデータを用いた徳島市中心部の地域イメージに関する研究 渡辺 公次郎・辻岡 卓 Regional Image Analysis in Tokushima Downtown Area by Tweet Data Kojiro WATANABE and Suguru Tsujioka Abstract: The purpose of this paper is to show characteristics of the regional image in Tokushima downtown area by tweet data. We analyzed the regional image by three steps. Step 1 is the morphological analysis to show the frequently appearing words contained in tweet data. Step 2 is the co-occurrence network analysis to show the connection between the frequently appearing words. Step 3 is the viewpoint and view object analysis by photos with tweet data. From these results, the big event, some famous foods and land features are important factors constitute of regional image in Tokushima downtown area. Keywords: 地域イメージ(Regional Image), ツイッター(Twitter), テキストマイニング(Text Mining), 中心市街地(Downtown area) 1. はじめに かつて、四国最大の商業地であった徳島市中心 市街地は、近年、衰退化が著しい。将来に渡り、 徳島を持続させていくためには、中心市街地の位 置づけを明確にし、それを踏まえたまちづくりが 求められる。徳島市中心市街地には、阿波踊り、 マチアソビなど全国的にも知名度の高いイベン トがいくつか存在しており、県内外から多くの来 訪者がある。しかし、普段は人通りも少なく、閑 散としている。 では、なぜ人が来ないのか。その理由として、 地域資源の価値が来訪者に伝わっておらず、市街 地整備でそれらを活用できていないことが考え られる。もし、来訪者が徳島市中心市街地で興味 を持った対象やその印象、すなわち地域イメージ が分かれば、地域資源の伝え方や来訪者に対する 市街地整備を考える際の基礎的な情報となる。し かし、彼らの興味は多種多様であり、その調査に は多大な労力を要する。 ところで近年、若年層を中心に SNS の利用が 爆発的に広まっている。スマートフォンなどモバ イル機器類の進化、普及に加え、Wi-Fi が利用可 能な地域も増えており、来訪者が興味を持った対 象を、その場で、即時的に Web 上に投稿できる 環境が整いつつある。 以上の背景から本研究では、 SNS の一つである ツイッターのデータ(ツイート)を用いて、徳島 市中心市街地の地域イメージを分析する。 2. 研究対象地域 研究対象地域は、図 1、図 2 に示す徳島市中心 部、具体的には、徳島駅を中心に半径 2.5km の範 囲とする。この中には、徳島市の中心市街地が含 まれており、阿波踊り期間中には、多くの来訪者 で賑わう。徳島市は吉野川河口部に発展したまち であり、中心部に小規模河川が多く存在する。全 体的に平地であるが、南西部には眉山があり、市 のシンボル的存在となっている。 渡辺公次郎 〒770-8506 徳島市南常三島町 2-1 徳島大学大学院社会産業理工学研究部 電話(088)656-7612 E-mail: [email protected]

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ツイートデータを用いた徳島市中心部の地域イメージに関する研究

渡辺 公次郎・辻岡 卓

Regional Image Analysis in Tokushima Downtown Area by Tweet Data

Kojiro WATANABE and Suguru Tsujioka

Abstract: The purpose of this paper is to show characteristics of the regional image in Tokushima

downtown area by tweet data. We analyzed the regional image by three steps. Step 1 is the

morphological analysis to show the frequently appearing words contained in tweet data. Step 2 is

the co-occurrence network analysis to show the connection between the frequently appearing

words. Step 3 is the viewpoint and view object analysis by photos with tweet data. From these

results, the big event, some famous foods and land features are important factors constitute of

regional image in Tokushima downtown area.

Keywords:地域イメージ(Regional Image), ツイッター(Twitter), テキストマイニング(Text

Mining), 中心市街地(Downtown area)

1. はじめに

かつて、四国最大の商業地であった徳島市中心

市街地は、近年、衰退化が著しい。将来に渡り、

徳島を持続させていくためには、中心市街地の位

置づけを明確にし、それを踏まえたまちづくりが

求められる。徳島市中心市街地には、阿波踊り、

マチアソビなど全国的にも知名度の高いイベン

トがいくつか存在しており、県内外から多くの来

訪者がある。しかし、普段は人通りも少なく、閑

散としている。

では、なぜ人が来ないのか。その理由として、

地域資源の価値が来訪者に伝わっておらず、市街

地整備でそれらを活用できていないことが考え

られる。もし、来訪者が徳島市中心市街地で興味

を持った対象やその印象、すなわち地域イメージ

が分かれば、地域資源の伝え方や来訪者に対する

市街地整備を考える際の基礎的な情報となる。し

かし、彼らの興味は多種多様であり、その調査に

は多大な労力を要する。

ところで近年、若年層を中心に SNS の利用が

爆発的に広まっている。スマートフォンなどモバ

イル機器類の進化、普及に加え、Wi-Fi が利用可

能な地域も増えており、来訪者が興味を持った対

象を、その場で、即時的に Web 上に投稿できる

環境が整いつつある。

以上の背景から本研究では、SNS の一つである

ツイッターのデータ(ツイート)を用いて、徳島

市中心市街地の地域イメージを分析する。

2. 研究対象地域

研究対象地域は、図 1、図 2 に示す徳島市中心

部、具体的には、徳島駅を中心に半径 2.5km の範

囲とする。この中には、徳島市の中心市街地が含

まれており、阿波踊り期間中には、多くの来訪者

で賑わう。徳島市は吉野川河口部に発展したまち

であり、中心部に小規模河川が多く存在する。全

体的に平地であるが、南西部には眉山があり、市

のシンボル的存在となっている。

渡辺公次郎 〒770-8506 徳島市南常三島町 2-1

徳島大学大学院社会産業理工学研究部

電話(088)656-7612

E-mail: [email protected]

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図-1 研究対象地域の位置

図-2 徳島市中心市街地

3. 分析の概要

3.1 用いたデータ

本研究で用いるツイートは、ツイッターの API

機能を用いて、2016 年 7 月 14 日~10 月 31 日ま

でのジオタグ付きツイートを収集した。収集した

データはツイートされた日時、場所の緯度経度、

ユーザ名、言語種別、ツイート本文である。これ

を徳島駅から半径 2.5km の範囲内で取り出し、自

動投稿と考えられるツイートを削除し、残った

2651 件を分析で用いた。

3.2 分析の方法

これらのツイートに対し、(1)形態素解析により、

品詞を抽出し、話題になっている語を把握し、(2)

共起ネットワーク図を作成し、意味的なつながり

から語を分類する。(3)最後に、ツイートに添付さ

れている写真を抽出し、視点場、視対象の位置を

地図上に記入することで、興味を持った対象物の

場所を把握する。以上の結果より、徳島市中心部

の地域イメージの特徴を示す。

4. 地域イメージの分析

4.1 形態素解析による品詞の抽出

分析対象データに対し、KH Coder(樋口 2014)

を用いて形態素解析を行い、品詞を抽出した。25

回以上現れている語の一覧を表 1 に示す。表 1 に

よると、時期的な影響もあり、「阿波踊り 1)」「マ

チアソビ 2)」およびその関連語が上位に出現して

いる。時期とは関係ないが、徳島の名物でもある

「ラーメン」も頻出している。これ以外には、阿

波踊りやマチアソビに関連する地名などが現れ

ている。

表-1 ツイートに含まれる品詞

4.2 共起ネットワーク図の作成

次に、出現パターンが似通った語のつながりを

示すために、KH Coder を用いて共起ネットワー

ク図を作成する。ツイートデータより、意味のな

い記号(#、ーなど)、英語(Tokushima など)を

削除し、25 箇所以上に出現している語のみを用い

て、共起ネットワーク図を作成した。次に、各語

の意味的なつながりを考慮し、5 つに分類(図 3)

した。

グループ 1 は、「阿波踊り」「演舞」「踊る」「藍

場浜(演舞場)」など、阿波踊りに関連するイメ

ージが出現している。グループ 2 は、「マチアソ

ビ」やその会場(眉山など)など、マチアソビ関

連のイメージが出現している。グループ 3 は、「ラ

ーメン」やラーメン店(東大など)、「ランチ」「食

べる」「美味しい」など、食べ物やそれに関連す

るイメージが出現している。徳島駅周辺にラーメ

ン店が多く立地していることから「駅前」も含ま

順位 キーワード 頻度 種類 順位 キーワード 頻度 種類 順位 キーワード 頻度 種類1 徳島 3456 地名 20 美味しい 53 形容詞 39 楽しい 33 形容詞2 阿波踊り 363 名詞 21 公園 50 名詞 40 ロープウェイ 33 名詞3 ラーメン 237 名詞 22 東大 48 組織名 41 バス 32 名詞4 眉山 126 地名 23 藍場浜 48 地名 42 最終 31 名詞5 来る 126 動詞 24 ま 46 感動詞 43 踊る 31 動詞6 阿波おどり 124 名詞 25 中華 44 名詞 44 暑い 31 形容詞7 会場 121 名詞 26 バスターミナル 40 名詞 45 良い 28 形容詞8 本店 103 名詞 27 四国 40 地名 46 コーヒー 27 名詞9 マチアソビ 88 名詞 28 ありがとう 40 感動詞 47 ランチ 27 名詞

10 阿波 83 地名 29 写真 39 名詞 48 入る 27 動詞11 駅前 75 名詞 30 新町 39 地名 49 買う 27 動詞12 演舞 75 名詞 31 珈琲 38 名詞 50 紺屋町 27 地名13 会館 68 名詞 32 そごう 38 組織名 51 ケーキ 26 名詞14 行く 65 動詞 33 最高 37 名詞 52 久々 26 名詞15 見る 62 動詞 34 え 37 感動詞 53 おはよう 26 感動詞16 笑 59 人名 35 終わる 35 動詞 54 飲む 26 動詞17 食べる 57 動詞 36 ステージ 34 名詞 55 カフェ 25 名詞18 ホテル 56 名詞 37 久しぶり 34 名詞 56 林間 25 名詞19 帰る 54 動詞 38 山頂 33 名詞 57 新町橋東公園 25 地名

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れている。グループ 4 は、「ありがとう」「楽しい」

など、印象を表す語しか出てきていない。グルー

プ 1 の「踊る」とつながっていることから、阿波

踊りに関連するイメージと考えられる。グループ

5 は、「バスターミナル」「最終」など、バス利用

に関する語が含まれている。

図-3 共起ネットワーク

次に、各グループで抽出された語が含まれるツ

イートを識別し、50m メッシュ単位でその頻度を

集計し、GIS 上に表示させた。図 4~図 8 に示す。

グループ 1 の語が含まれるツイートは、阿波踊

りの演舞場付近や、イベント時に人通りが多い中

心商業地付近で多くつぶやかれている。阿波踊り

は、演舞場以外でも市内のあちこちで踊られてお

り、その賑わいがツイートにも反映されている。

グループ 2 の語が含まれるツイートは、マチア

ソビの会場でもある眉山山頂、新町橋付近で多く

つぶやかれている。このイベントでは、参加者同

士で写真撮影なども行われており、その場所が反

映されていると考えられる。

グループ 3 の語が含まれるツイートは、全ツイ

ート数に対して 35.8%と最も多い。中心市街地に

広く分布しており、有名なラーメン店や駅周辺を

中心につぶやかれている。

グループ 4 の語が含まれるツイートは、印象を

表す語のみであるため 5.3%とそれほど多くはな

いが、阿波踊りの演舞場や人通りの多い地域で多

くつぶやかれている。特に元町交差点付近で多く

つぶやかれていることから、この付近が徳島の印

象に影響していると考えられる。

グループ 5 の語が含まれるツイートは、バス利

用を表すことから、駅とその周辺で多くつぶやか

れている。

4.3 視点場、視対象の分析

次に、ツイートに添付されている写真を取り出

し、視点場と視対象を、写真を基に判断し、GIS

上に表示させた。図 9 に視点場と視対象を示す。

図 9 によると、視点場、視対象の分布は、両方

とも類似しており、比較的近距離から視対象を撮

影していることが分かる。視対象は新町川沿い、

徳島中央公園、演舞場付近、駅周辺、眉山で見ら

れる。視点場は橋の上、大通り、山頂など、ある

程度、周囲を見渡すことができる地点で見られる。

5. まとめ

以上、本研究では、ツイートデータを用いて、

徳島市中心市街地の地域イメージを分析した。

その結果、徳島市中心部の地域イメージは、阿

波踊りやマチアソビといった大規模イベントに

加え、ラーメンなどの名物、地形的な特徴により

表されることが分かった。今後は、つぶやかれた

語とその印象の関連性に加え、場所の時空間的特

徴との比較を行うことで、イメージ形成要因を詳

細に分析することが課題である。

1) 阿波踊りは、毎年 8 月 12 日~15 日にかけて、

徳島市をはじめ県内各地で開催される夏祭りで

ある。400 年以上の歴史を持ち、2016 年は 123 万

人の参加があった。

2) マチアソビとは、2009 年から始まったアニメ

関連のイベントである。毎年 5 月と 10 月頃に 3

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日~1 週間程度、徳島市中心部を会場に開催され

ており、最近では若年層を中心に毎回 8 万人程度

の参加がある。

参考文献

樋口耕一(2014):「社会調査のための計量テキスト

分析 ―内容分析の継承と発展を目指して―」ナ

カニシヤ出版

図-4 グループ 1 の分布

図-5 グループ 2 の分布

図-6 グループ 3 の分布

図-7 グループ 4 の分布

図-8 グループ 5 の分布

図-9 視点場と視対象の分布