特集 “光”新世代ビジョン - NTT · 6 ntt技術ジャーナル 2003.2 特集...

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NTT技術ジャーナル 2003.2 6 “光”新世代ビジョン ブロードバンド&ユビキ タス時代の到来 NTTは,技術革新に基づく将来構 想をビジョンとして作成するとともに, これに沿うかたちで基礎研究や実証実 験を行い,その成果を新しいサービス として花開かせてきました. 1979年のINS構想では,それまで の電話時代から高度情報化社会の多 様なニーズに対応できるISDN(サー ビス総合ディジタル網)構築に向けて 技術的検証や利用方法の開拓を行い, 1988年に世界に先駆けて国際標準に 準拠したINSネットサービスを開始し ました. 1 9 9 0 年には,ネットワークのディジ タル化の推進を背景に,グローバルな 高度情報通信社会の実現を目指した VI &P構想を提唱し,光アクセス技術 を用いた広帯域サービス実験や無線 アクセス技術を用いたパーソナル通信 サービス実験を中心とする総合実験を 通じて,技術の蓄積を図ってきました. VI &P構想をより具体化して,マル チメディアが世の中に与えるインパク トを明示したマルチメディア基本構想 を1994年に発表し,これに基づき新 しい利用方法,利用技術(アプリケ ケーション)の開発・創造を目的とす るマルチメディア共同利用実験を行い ました.この成果に基づき,I P 系サー ビスの先駆けであるOCN(Open Computer Network)を開発・提 供するとともに,1998年の情報流通 構想により,ディジタルネットワーク を活用した異分野技術との融合による 新しい領域の開拓を進めてきました. 特に,ここ数年は,フレッツ系サービ スや企業向けI Pサービスであるワイド LANサービスなど新しいブロードバンド サービスを開発・提供し,市場のニー ズにこたえてきました. I Tに対する世の中の期待度が,これ までどのように変化してきたかを図1 に示します. ちょうどN T TがV I &P構想を発表し た90年代初頭に,米国においてイン ターネットの商用利用が拡大し始め, それまでの電話中心のコミュニケー ションから,インターネットによるコン ピュータ通信の普及へ,という大きな 変化が始まりました.そして,マルチ メディア基本構想を発表した直後の 1 9 9 5 年 ごろから,“ . c o m ( ドットコ ム)”と呼ばれるインターネットを利用 した新しいビジネスを立ち上げようと “光”新世代ビジョン ―ブロードバンドでレゾナントコミュニケーションの世界へ― NTTは,5年先の光による本格的ブロードバンド&ユビキタス 時代の社会生活・企業活動の変革を展望するとともに,NTTグ ループの取り組みをとりまとめた「“光”新世代ビジョン」を発 表しました.ここでは,昨年11月に開催された「NTT R&Dフォー ラム2002 in 武蔵野」において,和田紀夫NTT代表取締役社長が 講演した「“光”新世代ビジョンとR&Dの取り組み」について紹 介します. 和田 紀夫 NTT代表取締役社長

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NTT技術ジャーナル 2003.26

特 集

“光”新世代ビジョン

ブロードバンド&ユビキタス時代の到来

NTTは,技術革新に基づく将来構

想をビジョンとして作成するとともに,

これに沿うかたちで基礎研究や実証実

験を行い,その成果を新しいサービス

として花開かせてきました.

1979年のINS構想では,それまで

の電話時代から高度情報化社会の多

様なニーズに対応できるISDN(サー

ビス総合ディジタル網)構築に向けて

技術的検証や利用方法の開拓を行い,

1988年に世界に先駆けて国際標準に

準拠したINSネットサービスを開始し

ました.

1990年には,ネットワークのディジ

タル化の推進を背景に,グローバルな

高度情報通信社会の実現を目指した

VI&P構想を提唱し,光アクセス技術

を用いた広帯域サービス実験や無線

アクセス技術を用いたパーソナル通信

サービス実験を中心とする総合実験を

通じて,技術の蓄積を図ってきました.

VI&P構想をより具体化して,マル

チメディアが世の中に与えるインパク

トを明示したマルチメディア基本構想

を1994年に発表し,これに基づき新

しい利用方法,利用技術(アプリケ

ケーション)の開発・創造を目的とす

るマルチメディア共同利用実験を行い

ました.この成果に基づき,IP系サー

ビスの先駆けであるOCN(Open

Computer Network)を開発・提

供するとともに,1998年の情報流通

構想により,ディジタルネットワーク

を活用した異分野技術との融合による

新しい領域の開拓を進めてきました.

特に,ここ数年は,フレッツ系サービ

スや企業向けIPサービスであるワイド

LANサービスなど新しいブロードバンド

サービスを開発・提供し,市場のニー

ズにこたえてきました.

ITに対する世の中の期待度が,これ

までどのように変化してきたかを図1

に示します.

ちょうどNTTがVI&P構想を発表し

た90年代初頭に,米国においてイン

ターネットの商用利用が拡大し始め,

それまでの電話中心のコミュニケー

ションから,インターネットによるコン

ピュータ通信の普及へ,という大きな

変化が始まりました.そして,マルチ

メディア基本構想を発表した直後の

1995年ごろから,“.com(ドットコ

ム)”と呼ばれるインターネットを利用

した新しいビジネスを立ち上げようと

“光”新世代ビジョン―ブロードバンドでレゾナントコミュニケーションの世界へ―

NTTは,5年先の光による本格的ブロードバンド&ユビキタス時代の社会生活・企業活動の変革を展望するとともに,NTTグループの取り組みをとりまとめた「“光”新世代ビジョン」を発表しました.ここでは,昨年11月に開催された「NTT R&Dフォーラム2002 in 武蔵野」において,和田紀夫NTT代表取締役社長が講演した「“光”新世代ビジョンとR&Dの取り組み」について紹介します.

和田 紀夫

NTT代表取締役社長

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特集

NTT技術ジャーナル 2003.2 7

いう企業が数多く生まれました.この

ころから,ITの可能性を信じて投資家

の期待度が急上昇し,日本でマザーズ

やナスダックジャパンが生まれた1999

年にはそれがピークに達しました.そ

の後は,過度に膨らんだITへの期待が

急速に減退するとともにそれまでの過

剰投資が大きく影響し,“.com”企業

の淘汰,さらには米国大手通信事業

者の経営破たんという事態に至りまし

た.私たちは,ITは現在幻滅期にある

と認識していますが,これからの本格

的ブロードバンド&ユビキタス時代に

向けた市場の活性化が始まると確信し

ています.

“光”新世代ビジョン

これらの歴史的変遷を踏まえ,今,

“光”新世代ビジョンを策定した背景

と目的について3つのポイントを述べ

ます.

1つ目は,現在インターネットが

「ナローバンドからブロードバンド」へ

の大きな変革期を迎えており,いわゆ

るIT革命の第2フェーズに入ってきた

重要な時期にあることです.その際,

主流となるサービスは,映像による双

方向コミュニケーション型であり,そ

の意味から高速・広帯域,常時接続,

双方向性に優れた光がこれからのネッ

トワークの本命になります.

2つ目は,光による映像の双方向コ

ミュニケーションを基本とする種々の

アプリケーションが,「時間と距離の制

約」の解消によるグローバルな“知”

の共有化,“知”のビジネス化を可能

とし,安全で豊かな社会生活の実現や

企業活動の生産性・競争力の強化に

資すること,また,現在の日本が抱え

る少子高齢化や環境問題等の社会的

課題を解決する重要なファクターの1

つになり得ることです.

3つ目は,この“光”新世代に向け

た,NTTグループの取り組みについて

明らかにすることです.つまり,副題

に掲げた「光によるレゾナントコミュ

ニケーション環境」の実現に向けて研

究開発を推進するとともに,グローバ

ル情報流通事業に携わるものとして果

たすべき役割・ミッションについてそ

の方向性を明らかにすることです.

レゾナントとは,「共鳴する,共振

する,響く」の意味を持つ英語で,レ

ゾナントコミュニケーションとは,「人

や企業など世の中のあらゆるものが」

「ブロードバンドで双方向(インタラク

ティブ)に」「“いつでも,どこでも,

誰(何)とでも”ユビキタスにネット

ワークに結ばれ」「“安全・確実・簡

単”でユーザビリティに優れ」,世の中

と「共鳴」しながら進歩する,光によ

る新世代のコミュニケーション環境を

意味するものとして,ネーミングした

図1 ITへの期待度の変化�

幻 滅 期�テクノロジの�黎明期�

過度な期待�のピーク期� 啓蒙活動期� 安定期�

1975~1980~1985~1990~1995 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

Gartner資料をベースに作成�

期待度�

1994年�

1979年�1990年� 1998年� 2002年�

日本,欧州�1999年IPO

米国1997~98年�IPO

投資家の興味減退�

“.com”企業の�株価暴落と淘汰�

“.com”�の始まり�

電話中心の�コミュニケーション�

インターネット,�Web

企業の�興味減退�

本格的ブロードバンド&�ユビキタス時代の到来�

マルチメディア基本構想�

INS構想�VI&P構想� 情報流通構想�

“光”新世代ビジョン�

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“光”新世代ビジョン

NTT技術ジャーナル 2003.28

ものです.

レゾナントコミュニケーション環境

レゾナントコミュニケーション時代

の社会では,ナローバンドでは実現で

きなかった,映像等の利用によるリア

ルで自然なコミュニケーションを可能

とし,通信本来のミッションである

「時間と距離の克服」を実現したいと

考えます(図2).

時間の克服により,人の可処分時間

が,そして距離の克服により人や企業

の活動範囲が飛躍的に拡大し,国,

地域,業際や世代を超えて,人や企

業が持つ知(知識)の共有化,リア

リティの共有化,商(商取引)のボー

ダレス化が進展します.これにより個

人や企業は,世界中に存在する“知”

の最適な選択・組み合わせ,つまり

「知の協創」が可能となり,社会生活

や企業活動を大きく変革する新たな2

つの行動モデルが出現すると考えます.

1つ目が,個人の「個倍化」という

行動モデルです.個倍化とは,1人の

人間が複数の立場になるという意味の

造語で,大きく次の3つの特徴を持っ

ています.

・ビジュアルなFace-to-Faceのコ

ミュニケーションによる人と人と

のリアルな交流

・グローバルに地域・世代を超えた

新たなコミュニティの形成

・主婦やシニア等の社会・経済活動

への参画が可能となり,個人が有

する「知(知識)」や「価値」の

ビジネス化が大きく進展

図3は子供を持つ主婦の例で,「ビ

ジネスウーマン」「母親」として時間や

知識を最大限活用することが可能とな

ります.

図4は,シニアの社会参画を事例と

して取りあげています.宮崎県にお住

まいの高校の美術の先生を定年退職し

たご主人と奥さんのご夫婦がモデルで,

子供夫婦は東京に住んでいます.ご主

人は,フランスのバーチャル大学にネッ

ト留学し,絵画の歴史を学んでいます.

自動通訳・翻訳が装備されているの

で,言語の壁はありません.また,自

宅で絵の創作活動を続け,バーチャル

展覧会に出展したり,ネットを通じて,

全国の絵を趣味とする人に,週2回有

料で絵画の指導を行っています.地元

郷土料理が得意な奥さんも,料理好

きの若い主婦ネットワークのコミュニ

ティメンバに頼まれて,レシピ解説や

つくり方を映像で公開しています.

東京で生活している息子夫婦と孫た

ちには,夏休みに会うだけでなく,互

いのダイニングを大画面テレビ映像で

つないで食卓を共にし,いつもコミュ

ニケーションを欠かしません.一方,

毎日自動送信される健康管理データを

基に,定期的に双方向映像による主治

拡大�

:要素間の“結びつき”�

図2 レゾナントコミュニケ-ション環境�

ブロードバンド�・高速・広帯域�・常時接続�・双方向(インタラクティブ)�

ユビキタス�・いつでも�・どこでも�・誰/何とでも�

安全・確実・簡単で�シームレスな�ユーザビリティ�

ユーザ要望に応じた�エンド・ツー・エンドの�コネクティビティ�

時間と距離�の克服�

可処分時間�の拡大�

活動範囲�の拡大��

ブロードバンド化�

リアリティ・感性の交流  情報の伝達�

企業      個人     物(機械)�

ブロードバンドの広がり�

レゾナント�コミュニケーション�環境がもたらすもの�

「知」の共有化�

「リアリティ」の共有化�

「商」のボーダレス化�

「知」の協創��

個人�企業�

企業�

個人�

個人�

個人�情報�

個人�

企業�

情報�

情報�

モニタ�リング�

コマース� 情報発信�

コラボ�レーション�情報検索�

eCRM

映像ライブ�

映像�コミュニ�ケーション�

個人�ビジネス�

プレゼンテーション�

ビデオオンデマンド�コミュニティ�企業�

情報�

企業�企業�情報�

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特集

NTT技術ジャーナル 2003.2 9

医による健康診断を受けています.

2つ目は,企業活動の視点です.グ

ローバルに存在する知(知識),リアリ

ティが共有され,商(商取引)のボー

ダレス化が進み,消費者,企業など各

種の価値の連鎖が生み出す「Web的

連鎖」という行動モデルが出現します

(図5).これにより,企業の生産性向

上や新たなビジネスの創出が進みます.

「Web的連鎖」は,次の3つの特徴を

持っています.

・企業におけるビジネスプロセス

(バリューチェーン)の変革による

効率化や競争力強化

・SOHO型経営等バーチャルカンパ

ニー化による新たなビジネス機会

の創出

・業際を超えたグローバルな新たな

個倍化の実現!�

知の共有�-在宅勤務-�

リアルな交流�-介護支援-�

リアリティの共有�-モニタリング-�

リアルな交流�-単身赴任-�

価値のビジネス化�-英会話の指導-�

コミュニティの形成�-趣味の仲間-�

・ビジュアルなFace-to-Faceコミュニケーションによる人と人とのリアルな交流     ����・グローバルに地域・世代を超えた新たなコミュニティの形成����・主婦やシニア等の社会・経済活動への参画による,個人が有する“知”“価値”のビジネス化�

図3 新たな行動モデル“個倍化”の出現�

“ 個 倍 化 ”のイメージ� 特  徴�

図4 シニアの社会参画モデル�

フランスの大学で�美術史を教える教授�

〔フランス〕�

可処分時間の活用��

バーチャル大学で世界の美術史

を学ぶ�(自動通訳)�

リアリティの共有��

子どもや孫と食卓を�共にする�

世代を超えた“知”の共有�

油絵を教える�

ビジュアルな Face-to-Faceによる�リアリティの共有�

医者に健康相談する�

毎日,自動送信されている健康管理データで診断�

〔大学病院〕�

大画面テレビで息子家族と�

元高校美術教師�〔宮崎〕�

〔全国〕�

〔東京〕�

〔全国〕�:レゾナントコミュニケーション環境による結び付き�

“知”のビジネス化�

地元郷土料理が得意な奥さん�

家庭料理を�教える�

料理好きのコミュニティメンバ�

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“光”新世代ビジョン

NTT技術ジャーナル 2003.210

ビジネスモデルの創出

図6は,企業のビジネスプロセスの

効率化という視点で,自動車会社を

事例として取り上げています.2年は

かかるという新車の開発プロセスでは,

新車のコンセプトづくりからデザイン

設計・試作・評価などの商品化まで

のすべてを,プロダクトプロデューサと

いう責任者を中心に取り組みが行われ

ます.企画プロセスでは,映像でモニ

タ顧客や販売店の方に具体的なコンセ

プトデザイン案等をお見せしながら,

より具体的な顧客のニーズを収集でき

ます.

開発・設計プロセスでは,世界各地

工場�

図5 新たな行動モデルの出現(企業の“Web 的連鎖”)�

“ Web的連鎖 ”のイメージ� 特  徴�

Web的連鎖�〔コミュニティ等〕�

マーケッター�(在宅勤務)�

Face-to-Face のコミュニケーションによるマーケティング力の強化�

コラボレーション による商品開発力の強化�

生産現場のモニタリング による危機管理の強化�および一体感の醸成�

映像表現による商品訴求力向上とEC系チャネルの強化�

Face-to-Face の対応によるカスタマリレーション

の強化�

カスタマ�センタ�

メンテナンス�Web的連鎖� 顧 客�

Web 的連鎖の広がり�

販売店�

Web 的連鎖�〔EC等〕�

材料会社�

Web 的連鎖�の広がり��

設計� 顧客�

販売�

Web 的連鎖�〔コミュニティ等〕�

販売店�

・企業におけるビジネスプロセス(バリューチェーン)の変革による効率化,競争力の強化����・SOHO型経営等バーチャルカンパニー化による新たなビジネス機会の創出����・業際を超えたグローバルな新たなビジネスモデルの創出�

モニタ顧客�

デザイナー�

商品開発�

マーケティング� 製 造�

顧客サポート�営業・販売�

“ Web的連鎖 ”�の実現�

図6 企業におけるビジネスプロセスの効率化モデル�

「商品開発プロセス」のリードタイムの短縮�

国内外�顧客�

新車のデザイン等を映像で見せながら,顧客ニーズを収集�

Face-to-Face�

“見えるニーズ”�

設計画面,写真,映像データ等の部品情報を用いて工場との生産打ち合わせ�

部品会社�

工場�(海外)�

リアルタイム�

“見える調達”�

米国のデザイナーと設計者が,3D映像を使ってデザイン設計�

自動車会社の事例�

調達・製造�

営業・�販売�

保守・修理�

市場�調査�

商品開発�

グローバルに広がる研究所と新技術の適用についての打ち合わせ�

コラボレーション��

“見える技術”�

Web連鎖の�広がり�

設計�事務所�

研究所�

CG画像�DB

デザイナー�

販売店�3D映像�

“見える開発”�

評 価�Web連鎖�の広がり�

Web連鎖�の広がり�

計測�コラボレーション�

“見える評価”�

開発・� 設計�

生産� 準備�

調達�試作・評価�

商品�企画�

プロダクト�プロデューサ�

物流�事業者�

プロ�ドライバー�

工場�(国内)�

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特集

NTT技術ジャーナル 2003.2 11

の契約デザイナーと新技術担当の研究

技術者や設計技師との間で,3D映像

等のビジュアルなデータベースやモック

アップを用いて,会議や打ち合わせな

どの移動に時間を費やすことなく効率

的な開発を進めることができます.生

産準備プロセスでは,グローバルに広

がる研究所との間で,新車の生産への

新技術の適用について,Face-to-Face

の打ち合わせが行われます.このよう

なレゾナントコミュニケーション環境に

より,商品開発にかかわる多くの人々

の“知”がグローバルに共有され,商品

開発の大幅な短縮が可能となります.

社会的課題解決への活用

レゾナントコミュニケーション環境

は,社会生活や企業活動に大きな恩恵

をもたらすので,現在の日本が抱える

数々の社会的課題の解決にも活用で

きると考えています.

少子高齢化問題では,これまで経済

活動等への参画が困難であった家庭の

主婦やシニアの方々,諸事情により地

域から離れられない人々の自宅からの

経済活動等への参画が可能となる結

果,労働需給のミスマッチの緩和,労

働人口の確保や経済活動の活性化に

役立つことになります.日本の人口は

2006年をピークとし,その後は減少す

ると予測されています.

環境・エネルギー問題では,「移動」

するためのエネルギーが大きく節約さ

れ,環境への負荷が軽減されるほか,

東京一極集中の緩和にも役立つことに

なります.

安全・安心・セキュリティ問題で

は,双方向映像を用いた介護支援,

センサ技術等による予防医療の質の向

上と保険費用の低減,また映像モニタ

リングによる犯罪防止などの課題解決

が期待できます.

教育問題では,都市と地域間にお

ける教育レベルの格差是正や教育機会

の多様化が期待されます.

経済発展への活用

経済的発展への活用では,産業競

争力の強化に加えて,業際を超えたコ

ラボレーションや新たなビジネス創出

により,2007年には日本経済へのレゾ

ナントコミュニケーション環境が与え

るインパクトは約64兆円/年規模とな

ります(表1).

レゾナントコミュニケーション環境

に向けたNTTグループの取り組み

ブロードバンドに関するアンケート

結果(図7)によると,光による本格

的ブロードバンドのニーズはすでに顕

在化しており,リアルな双方向コミュ

ニケーションやセキュリティ・個人情

報保護の強化とユビキタス機能に優れ

たユーザビリティに強い要望があるこ

とがわかります.

レゾナントコミュニケーション環境

の実現に向けたNTTの基本的考え方

を図8に示します.

電話網は,信頼性,高品質という

点で高い評価を受けてきましたが,高

コスト,多様化するユーザニーズへの

柔軟な対応の困難性から,衰退しつつ

あります.一方,インターネットは低

料金で利用できることから,大きく発

展してきていますが,ユーザ要望が高

度化するにつれて,セキュリティ,品

質,ユーザビリティの面で今なお課題

を抱えている状況にあります.ブロー

ドバンドに対するユーザの要望(図7)

は,どちらも満足するサービスを望ん

でいます.それがレゾナントコミュニ

ケーション環境の意味するものです.

レゾナントコミュニケーション環

境のネットワークイメージ

NTTグループが描く,光によるレゾ

ナントコミュニケーション環境は,ユー

ザに対して,今後とも進化するPC・

携帯電話・情報家電等の端末群や,

多種多様な地域LAN・無線LAN等の

アクセス手段など,ユーザの利用環境

にかかわらず,“安全”“確実”“簡単”

に不特定多数の通信相手と接続し,

情報流通を可能とするネットワークサ

ービスを提供するものです(図9).

このため,従来の高速・広帯域のベ

ストエフォート型通信(インターネッ

ト)サービスに加えて,現在のインター

ネットを構成するサーバクライアント型

では実現が困難なエンド・ツー・エン

ド型の高度の接続(リアルタイムコネ

クティビティ)や,品質,セキュリティ

が保証された信頼性の高いネットワー

クサービス,企業や個人の方々の新た

表1 経済的発展への活用

貢献する分野 レゾナントコミュニケーション環境の活用イメージ

産業競争力の強化

日本経済の活性化

地球規模での多様な企業・人材とのコラボレーションにより,バリューチェーンの変革,雇用の多様化が加速し,新たなビジネス機会が創出され,産業競争力が強化

・これまで経済化されなかった時間・才能・資金の経済活動への投入・企業単位や業界単位での事業の垣根(業際)が消滅し,ビジネスを構成する各種プロセス,社員,知識・ノウハウ単位でのコラボレーションが進行するなど企業活動が大きく変革する過程で,新たなビジネスが創出,2007年には日本経済へのインパクトが約64兆円/年規模

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“光”新世代ビジョン

NTT技術ジャーナル 2003.212

図7 ブロードバンドに関するアンケート調査結果�

0 20 40 60 80 100% 0 20 40 60 80 100%

大いに期待�あまり期待しない�

ある程度期待�期待しない�

どちらともいえない��不明�

全体(N=4727)�光ファイバ(N=96)�

かなり普及する�あまり普及しない�

ある程度普及する�普及しない�

まだ何ともいえない�不明�

非常に期待�あまり期待しない�

やや期待�期待しない�

どちらともいえない�

�不明�

ネットワークの悪用,�

乱用防止,対応策�

ネットワークを利用した�

犯罪の取り締まり,防犯�

�ネットワークセキュ�リティの強化�

個人情報の保護�

�著作権等情報発信者�の権利保護�

情報通信利用環境の�バリアフリー化��

非常時に備えたバック�アップ体制�

�その他�

46.6�

55.2�

47.6�

59.4�

51.1�

56.3

1.1�

3.1

出典:情報通信総合研究所�

あらゆる端末から�ネット接続�

�音声入力等で�

端末操作が簡単��

手間かけずに情報,�サービス利用�

��思いついたら即�

情報,サービス利用��

思いついたら即�コミュニケーション�

�時間や場所にあわせて�情報,サービス利用�

�相互の都合にあわせて�コミュニケーション�

��生活環境が常に快適�

��

生活環境が常に安全���

いざというとき必要な�情報,サービス利用�

(c) 5年先のブロードバンドサービス� (d) ユーザの利用環境に関するニーズ�

家族や友人との映像電話��

在宅勤務の�TV・ミーティング�

�在宅学習の遠隔指導�

�在宅面接,�

オーディション��在宅型アルバイト�

�長編映画の�

ホームシアター��

在宅ライブハウス��

電子新聞配達��

お好み視聴選択��

バーチャル秘書��

遠隔ヘルプデスク��

遠隔相談サービス��

在宅受講��

お茶の間ブティック��

お茶の間体験ツアー�

簡便性�

即時性�

融通性�

安全性�

光ファイバ�(N=96)�

コミュニケーション�

高機能コンテンツ�

在宅型サービス�

(a) 本格的ブロードバンドへの期待�

現在の回線種別�

0 20 40 60 80 100% 0 20 40 60 80 100%

(b) ブロードバンドインターネットの課題�

88.6�

93.8�

87.6�

89.6�

89.4�

90.6�

90.5�

93.8

1.8

3.3

0.8

1.8

1.0

全体(N=4727)� 47.9 44.8 4.9

フレッツ・ISDN� (N=644)�

51.4 42.5 4.8

ADSL+CATV�(N=2901)�

47.7 45.2 4.8

44.8 47.9 6.3

ダイヤルアップ�(N=766)�

46.1 44.5 5.4

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特集

NTT技術ジャーナル 2003.2 13

ブロードバンド�の進展�

5~10年後�

★メリット!�

・信頼性,品質の確保�

電話時代�

図8 レゾナントコミュニケ-ション環境に向けたNTTグループの取り組み�

レゾナントコミュニケ-ション環境�

これから�

これまで�

 ★デメリット!�・セキュリティ,品質� の不安�

サーバ・クライアント型� エンド・ツー・エンド型�

2つの方向性の特長を活かした幅のある発展�

現在�

★メリット!�・低コストによる発展�

インターネット時代� ★デメリット!�・多様化するユーザ要望へ の柔軟な対応が困難�・高コスト�

デメリットによる停滞・衰退 メリットによる発展 デメリットによる停滞・衰退�

自律・分散型� 集中・管理型�

� �

企業LAN

企業LAN

ホームLAN

ホームLAN

ホームLAN

他ネットワーク�

他ネットワーク�

他ネットワーク�

他ネットワーク�

動画コンテンツ配信ビジネス�

ユビキタスにコンテンツ閲覧�

“知”“価値”のビジネス化�

商品開発コラボレーション�

遠隔地の現場管理�

祖母と孫の会話�

ライブ配信ビジネス�

企業LANインターネット�

インターネット� インターネット�

企業LAN

図9 レゾナントコミュニケーション環境のネットワークイメージ�

ネットワーク�プラットフォーム�

リアルタイムコネクションな�エンド・ツー・エンド型�

ネットワーク�

屋外��自宅�

設計者�家庭教師�

ユーザマネジメント�(認証,状態管理等)�

コネクティビティ�(エンドエンド,同報,多地点等)�

クオリティ�(速度・セキュリティ・遅延等)�

GW

GW

GW

GW

GWGW

コンテンツ�

アクセス�

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“光”新世代ビジョン

NTT技術ジャーナル 2003.214

なビジネス機会の創出をサポートする

課金などの機能やエージェント機能等

のプラットフォームサービスを実現して

いきます.また,ネットワークと連携

した端末の開発や,柔軟なエリア展開

や高品質で信頼性の高いサービスを可

能とする,新たなアクセスネットワー

クの構成方法についても検討を進めま

す.さらに,これらのネットワーク機

能を自由に選択でき,低廉で多様な料

金によるサービスの提供を実現します.

レゾナントコミュニケーション環

境のネットワーク構成イメージ

NTTグループは,これまで構築して

きた光ファイバのネットワーク基盤を

最大限に活用し,光ファイバの伝送容

量と伝送距離を拡大する大容量WDM

技術や,光波長レベルの高速転送を

可能とするGMPLS(General ized

Multiprotocol Label Switching)

による光ルータ技術などの研究開発成

果を用いることにより光ネットワーク

基盤の大容量化を図り,拡張性に優

れた経済的なネットワークを構築して

いきます(図10).

サービスの実現にあたっては,ユー

ザの利用環境を認識し,これを管理す

るプレゼンス機能やユーザどうしを接

続をするためのセッション制御機能,

ユビキタス通信を可能とするための

IPv6技術をベースとしたMobile IP

機能などを付加していくことにより,

ユーザビリティに優れたエンド・ツー・

エンドのコネクティビティを実現してい

きます.

また,ネットワークとユーザ側にある

端末等との連動をベースとして,コネ

クションごとの優先制御・セッション

制御技術を用いることにより,ユーザ

ネットワークまで含めたエンド・ツー・

エンドでの速度,品質,信頼性の確保

が可能となります.

さらに,なりすまし防止や通信内容

を秘匿するダイナミックセキュアチャ

ネル技術などを用いることにより,セ

キュリティの確保が可能となり,さま

ざまなユーザ要望にこたえることがで

きるサービスが実現できると考えられ

ます.

先進的ビジネスモデルの開拓

先進的ビジネスモデルの開拓につい

て,NTTグループは,光の需要開拓や

ビジネスソリューション等の取り組み

を通じて先進的ビジネスモデルを積極

的に開拓するとともに,国内外を問わ

ないさまざまな分野のビジネスパートナ

との連携を通じて,サービス,新たな

ビジネスモデルを創出していきます(図

11).具体的なプランとしては,

・国や自治体等の施策や実証実験

に研究開発の早い段階から参画

図10 レゾナントコミュニケーション環境のネットワーク構成イメージ�

ネットワーク�プラットフォーム�

プレゼンス�機能�

セッション�制御機能�

Mobile�IP機能�

認証� 課金�

セキュリティ�…�

   コアネットワーク�・優先制御・セッション制御技術�・セキュリティ技術�・IPv6技術など��

・大容量WDM技術�・光ルータ技術など�

光ネットワーク基盤�

エッジノード�

光アクセス�

光アクセス� 光アクセス� 無線アクセス�

GW

地域LAN

企業�ネットワーク� ホームネットワーク�

DSLアクセス�

他ネット�ワーク�

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特集

NTT技術ジャーナル 2003.2 15

することによる,社会的課題等の

解決に向けた取り組み

・各種産業の企業の方々と連携し

た,新たなソリューションやビジ

ネスモデルの開拓

・欧米やアジアの国々と連携した,

レゾナントコミュニケーション環境

のグローバルレベルの展開

・コミュニティ活動の支援を通じた

ビジネス機会の創出

・放送業界等との連携によるディジ

タル放送と光とを組み合わせた新

たなサービスやそれに付随するプ

ラットフォームの提供

などに取り組んでいきます.

レゾナントコミュニケーション環境

の実現に向けた研究開発の取り組み

レゾナントコミュニケーション環境

の実現に向けて,NTTグループでは,

上位レイヤから端末までの総合的なソ

フトウェアデザインに基づく次世代ネッ

トワークアーキテクチャ(RENA)と

各種サービスを実現する基盤技術の研

究開発に取り組むとともに,10年先を

見据えた先端基礎技術の研究にも積

極的に取り組んでいきます(表2).

技術革新や市場環境の早い変化に

対応していくためには,研究開発の取

り組みについても変革が必要となって

きています.このような時代にマッチ

したNTT R&Dの変革に向けた取り組

みについて以下で述べます.

企業�

企業�企業�

企業�

企業�

団体�

企業�

モノ�

モノ�

個人�

個人�個人�

個人� 個人� 個人�

個人�

マーケティング�ビジネス�

金融ポータル�ビジネス�

映像クリエータ�サポートビジネス�

旅行EC

対面販売�

データベース�ビジネス�

ネットゲーム�ビジネス�

映像カルチャー�ビジネス�

オンライン出版�ビジネス�

映画配信�ビジネス�

コミュニティ�ビジネス�

eラーニング�ビジネス�

ソリューション�ビジネス�

モニタリング�ビジネス�

アセットマネジメント�サポートビジネス�

遠隔介護�ビジネス�

リサイクル�ビジネス�

各種コンサル�ティングビジネス�

予防医療�ビジネス�

コラボレーション�ビジネス�

〔サービスアグリゲート〕��

サービス提供者�

新たなビジネ

ス創出�

〔エージェント〕��

サービス提供者�

〔データマイニング〕��

サービス提供者� 〔マッチング〕��

サービス提供者�

新たなビジネス創出�

レゾナントコミュニケーション環境との共鳴による相乗効果�

レゾナントコミュニケーション環境�

移動体等の他ネットワーク�サービス�

プラットフォームサービス�〔課金・認証 等〕�

エンド・ツー・エンド型ネットワークサービス�〔コネクティビティ/品質・信頼性/セキュリティ等〕�

…�

図11 先進的ビジネスモデルの開拓�

表2 レゾナントコミュニケーション環境の実現に向けた研究開発の取り組み

取り組み分野 取り組み内容

次世代ネットワーク

アーキテクチャ

(RENA)

上位レイヤ

基盤技術

先端技術

・エンド・ツー・エンド型のリアルタイムコネクティビティによる双方向通信,品質制御,セキュリティ保証や端末・サービスの多様性に対応するRENAの研究開発の推進

・ネットワーク大容量化・経済下のための光関連技術,ネットワークサービス制御技術を先導するとともに,パートナ技術との連携・活用による開発の加速化

RENA: REsonant communication Network Architecture

・ヒューマンインタフェース,エージェント,暗号・セキュリティ,分散データベース等の基盤技術をベースに,多様なビジネスソリューションをサポートするプラットフォームサービス実現に向けた研究開発の推進

・10年先を見据えた先端技術の研究開発の推進

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“光”新世代ビジョン

NTT技術ジャーナル 2003.216

NTT R&Dの取り組み「死の谷」の克服

基礎研究段階から製品の市場投入

の間に存在する実用化開発の段階で

は,技術が事業化可能かどうかの見極

めが難しく,市場からの資金調達が容

易でない状況があるといわれています.

米国ではこのギャップを「死の谷(The

Valley of Death)」(図12)と呼び,

これを克服するために実用化に向けた

研究開発の支援や技術開発プロジェク

図12 死の谷(The Valley of Death)�

研究開発段階から市場に移るまでのギャップ�容易              困難�

資金調達の容易さ�

死の谷�

The Valley�of�Death��

基礎研究        実用化開発         市場投入�出典:米国商務省�

図13 レゾナントコミュニケーション環境を支えるNTT R&Dの役割�

従来の事業分野��

   (より豊かなコミュニケーション)�

NTTビジネス�

③グローバル展開,� 市場牽引�

NTT R&Dコア技術�

R&D戦略��

サービスコンセプト� アーキテクチャ�

人的貢献�

新たな事業分野 ��

(人に役立つ,環境にやさしく)  �

NTTビジネス�

NTTビジネス�

社会経済活動�

④�

・社会経済活動への活用�

  -少子化,高齢化�

  -環境�

・日本の科学技術の発展に貢献�

死の谷�

事業� 研究開発�

①競争優位�

②新たな分野の事業開拓�

実用化開発�

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特集

NTT技術ジャーナル 2003.2 17

トを実施して競争力の回復を目指して

います.日本でも経済財政諮問会議に

おいてこの「死の谷」が議論されるな

ど,日本経済活性化に向けた重要な

課題と認識されています.

NTT R&Dにおいても,研究開発に

よる新技術創出の活動と事業会社に

よる新ビジネス創出の活動とが必ずし

もかみ合っておらず,研究開発成果を

事業につなげるための事業化プロセス

の欠落,すなわち「死の谷」が存在し

ています.これを,研究開発を推進す

るうえでの最重要課題と認識し,この

「死の谷」を克服するための取り組み

を実施します.

レゾナントコミュニケーション環

境を支えるNTT R&Dの役割

これまでNTT R&Dは,NTTグルー

プ求心力の源泉として多くの成果を創

出し,グループ事業を牽引してきまし

たが,電話技術からIP技術へのパラダ

イムシフトなどの環境変化に対応して

その役割を見直します(図13).具

体的には,次の4つの役割を考えてい

ます.

・競争優位の核となる基盤技術

(コア技術)開発のさらなる重点

化により,グループ各社のビジネ

スを支援

・研究開発成果を活用し,通信分

野以外の新たな事業を積極的に

開拓

・グローバル市場への展開と市場

牽引

・社会的課題解決(少子高齢化,

環境問題など),日本経済活性化,

および科学技術の発展に貢献

総合プロデュース機能による

「死の谷」の克服

これらの4つの役割を果たすため,

持株会社に「総合プロデュース機能」

を整備します(図14).

NTT研究所が創出するコア技術や

市中技術・製品に対する目利きを行

い,これらを組み合わせ,先進的な実

用化開発や事業化等の企画・提案を

行うとともに,実際の実用化開発,事

業導入までをプロモートします.これ

に伴い,市場・技術動向のリサーチや

マーケティングにも本格的に取り組み

ます.

この総合プロデュース機能により,

NTT R&Dの最大の課題である「死の

谷」を克服し,研究開発成果を事業

につなげることを推進します.また,各

事業会社のニーズが個別化,多様化す

る中で,実用化開発のリスク負担や責

任の所在を明確化し,技術の実用化

をより着実かつ効率的に進めることが

重要です.さらに,関連業界とのアラ

イアンスによる実用化などを通じて研

究開発成果を活用し,新たな事業の

開拓に積極的に取り組んでいきます.

…�

図14 総合プロデュース機能による「死の谷」の克服�

市中技術・製品�

市中技術・製品�

市中技術・製品�

研究�

研究�

研究�

コア技術開発��

コア技術開発��

事業導入�実用化開発�

実用化開発�(個別ニーズ対応)�

・目利き�・市場・技術動向調査分析�・マーケティング�・開発企画,提案�・マーケットクリエーション�

・関連業界とのアライ� アンスによる実用化����・事業会社での応用 R&D

総合プロデュース機能�

市場動向�

事業会社ニーズ�

�・�・�・�