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2019, April, NEWS LETTER 電子情報通信学会 No. 173 エレクトロニクスソサイエティ 【巻頭言】 1 エレクトロニクスソサイエティの編集出版事業の将来展開 [エレクトロニクスソサイエティ副会長編集出版担当] 津田 裕之(慶應義塾大学) 【寄稿】 [新フェロー受賞記] 3 高速・低電圧シリコン光変調器の研究開発の歩み 小川 憲介(東京工業大学) 5 有機薄膜電子材料の評価とデバイス・センサ応用に関する研究 加藤 景三(新潟大学) 7 レーダによる減災・人道的活動 佐藤 源之(東北大学) 9 化合物半導体デバイスと高速集積回路の研究開発を振り返って 鈴木 康之(技術研究組合光電子融合基盤技術研究所) 12 「人体の複合物理と生理応答統合モデルに関する研究」を振り返って 平田 晃正(名古屋工業大学) 【論文誌技術解説】 13 社会システムの変革を牽引するヘテロインテグレーション技術 [和文論文誌 C「社会システムの変革を牽引するヘテロインテグレーション技術論文特集」編集委員会] 石榑 崇明(慶大理工) 14 和文論文誌 C「エレクトロニクス分野におけるシミュレーション技術の進展」特集号によせて [ゲストエディタ] 柴山 純(法政大学) 15 英文論文誌 C「量子情報技術を支える超伝導エレクトロニクス」 [小特集編集委員会 ゲストエディタ] 日高 睦夫(産総研) 16 英文論文誌 CSpecial Section on Solid-State Circuit Design Architecture, Circuit, Device and Design Methodology」の発刊に寄せて [小特集編集委員会 ゲストエディタ] 日高 秀人(ルネサスエレクトロニクス) 17 英文論文誌 C 小特集「Special Section on Progress in Optical Device Technology for Increasing Data Transmission Capacity」の発刊に寄せて [小特集編集委員会 委員長] 山本 剛之(株式会社富士通研究所) 【報告】 18 エレクトロニクスシミュレーション(EST)研究専門委員会の活動状況 [エレクトロニクスシミュレーション研究専門委員会 委員長] 平田 晃正(名古屋工業大学) 19 “あなたの LQE 研究会”とのめぐり逢いを!(LQE 研究会のご紹介) LQE 研究専門委員会 委員長] 浜本 貴一(九州大学) 21 光エレクトロニクス研究専門委員会活動報告 [光エレクトロニクス研究専門委員会 委員長] 佐藤 功紀(古河電気工業株式会社)

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2019, April, NEWS LETTER 電子情報通信学会

No. 173 エレクトロニクスソサイエティ

目 次

【巻頭言】

1 エレクトロニクスソサイエティの編集出版事業の将来展開 [エレクトロニクスソサイエティ副会長編集出版担当] 津田 裕之(慶應義塾大学)

【寄稿】

[新フェロー受賞記]

3 高速・低電圧シリコン光変調器の研究開発の歩み 小川 憲介(東京工業大学)

5 有機薄膜電子材料の評価とデバイス・センサ応用に関する研究 加藤 景三(新潟大学)

7 レーダによる減災・人道的活動 佐藤 源之(東北大学)

9 化合物半導体デバイスと高速集積回路の研究開発を振り返って 鈴木 康之(技術研究組合光電子融合基盤技術研究所)

12 「人体の複合物理と生理応答統合モデルに関する研究」を振り返って 平田 晃正(名古屋工業大学)

【論文誌技術解説】

13 社会システムの変革を牽引するヘテロインテグレーション技術 [和文論文誌 C「社会システムの変革を牽引するヘテロインテグレーション技術論文特集」編集委員会]

石榑 崇明(慶大理工)

14 和文論文誌 C「エレクトロニクス分野におけるシミュレーション技術の進展」特集号によせて [ゲストエディタ] 柴山 純(法政大学)

15 英文論文誌 C「量子情報技術を支える超伝導エレクトロニクス」 [小特集編集委員会 ゲストエディタ] 日高 睦夫(産総研)

16 英文論文誌 C「Special Section on Solid-State Circuit Design —Architecture, Circuit, Device and Design Methodology」の発刊に寄せて

[小特集編集委員会 ゲストエディタ] 日高 秀人(ルネサスエレクトロニクス)

17 英文論文誌 C 小特集「Special Section on Progress in Optical Device Technology for Increasing Data Transmission Capacity」の発刊に寄せて

[小特集編集委員会 委員長] 山本 剛之(株式会社富士通研究所)

【報告】

18 エレクトロニクスシミュレーション(EST)研究専門委員会の活動状況 [エレクトロニクスシミュレーション研究専門委員会 委員長] 平田 晃正(名古屋工業大学)

19 “あなたの LQE 研究会”とのめぐり逢いを!(LQE 研究会のご紹介) [LQE 研究専門委員会 委員長] 浜本 貴一(九州大学)

21 光エレクトロニクス研究専門委員会活動報告 [光エレクトロニクス研究専門委員会 委員長] 佐藤 功紀(古河電気工業株式会社)

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23 量子情報技術(QIT)特別研究専門委員会報告 [量子情報技術特別研究専門委員会 第 10 期委員長] 竹内 繁樹(京都大学)

24 APMC 2018 国際会議報告 [APMC 国内委員会 委員長] 古神 義則(宇都宮大)

【短信】

[研究室紹介]

26 複雑な電磁環境下での電子機器の共存を目指して [電気通信大学大学院情報理工学研究科 萓野研究室] 萓野 良樹(電気通信大学)

【お知らせ】 記事募集

本誌に掲載された記事の著作権は電子情報通信学会に帰属します. © 電子情報通信学会 2019

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【巻頭言】

「エレクトロニクスソサイエティの編集出版事業の将来展開」 (エレクトロニクスソサイエティ副会長編集出版担当)

津田 裕之(慶應義塾大学)

従来、エレクトロニクスソサイエティの論文誌は、電子

情報通信に係わる研究成果を発表する場として重要な役

割を果たしてきました。エレクトロニクスソサイエティで

は、和文論文誌(C)、英文論文誌(C)、及び、オンラインジ

ャーナルの ELEX を発刊しています。各論文誌は、編集

委員会とそれを支える査読委員による公平で的確な査読

よって、論文の水準が維持されています。この水準をさら

に高めるために質の高い論文の投稿を促進することが最

大の課題です。

和文論文誌は、投稿件数の減少とともに、その存続が議

論の対象になっています。しかしながら、日本における科

学技術の発展には、思考のベースとなる日本語で文章を書

く、論文を書くことが欠かせないと思います。母語で高度

な科学技術を記述し、議論できる環境は日本など限られた

国家が持つ優位な点であります。これらの点に、私は、和

文論文誌の意義があると思います。和文論文誌の魅力を高

めるため、著名な研究者による卓越した成果を招待論文と

して積極的に紹介する施策を続けています。学生中心の特

集号を企画することなども検討しています。様々な分野の

トピックスを取得する情報源として和文論文誌をご活用

下さい。さらに、和文論文誌への投稿のインセンティブを

高める工夫について会員の皆様もご検討ください。是非、

ご意見を取り入れたいと思います。

英文論文誌と ELEX は、海外の論文誌との競争下にあり、

インパクトファクターを上げることが、以前から重要な課

題となっています。インパクトファクターによる論文誌の

評価は、その仕組み上、ポジティブフィードバックがかか

りやすく上昇基調に持って行くことが不可欠です。論文誌

の発表の場としての魅力を高めるため、各論文誌で掲載ま

での日数の削減に努力してきました。英文論文誌の採録論

文の早期公開も始まりました。前述しましたように、献身

的な編集委員と査読委員による公平で高い水準の査読体

制が用意されています。研究者個人の立場で判断して電子

情報通信学会の論文誌よりもインパクトファクターが高

い論文誌への投稿を選択する場合もあると思いますが、皆

様の所属するエレクトロニクスソサイエティの論文誌の

水準を高めるため、最新の顕著な成果を記載した論文の投

稿をご検討いただきたいと思います。会員の皆様の多くは、

日本の研究機関に所属していると思います。研究のリソー

スは国内から得ているのではないでしょうか。日本の学会

を支えていくことが、回り回って我々の研究分野の隆盛に

つながる側面もあるのではないかと思います。英文誌と

ELEX を世界から注目される論文誌とするため、海外の編

集委員と査読員を増やすなど国際化にも注力していきた

いと思います。

従来、編集出版会議では、論文誌の電子化を進めるなど

発行費用を削減し、論文誌発行事業の黒字化を進めて参り

ました。かつては、発行論文数が増えると学会の財政負担

が増えましたが、現在は論文誌のページ数が増大しても赤

字が増えない状況となっています。これからは、英文誌の

IEEE Explore との連携やオープンアクセス化の議論が進

んでいくと思います。大きな分岐点になると思いますので、

エレクトロニクスソサイエティの論文誌をどうすべきで

あるか、会員の皆様のご意見を是非頂戴したいと思います。

また、電子情報通信学会として本部論文賞、エレクトロニ

クスソサイエティとしてエレクトロニクスソサイエティ

招待論文賞、ELEX Best Paper Award を用意して活性化を

図っています。

最後になりますが、論文誌の発展は皆様の積極的な投稿、

査読委員と編集委員の方々の活動に支えられています。今

後とも皆様方のご協力をお願いいたします。

著者略歴:

1985 年早稲田大学理工学部物理学科卒業、1987 年東京工業大

学総合理工学研究科物理情報工学専攻修了、同年日本電信電話株

式会社入社。光信号処理素子の研究、10Gbps 伝送システムの研

究開発に従事。2000 年慶應義塾大学理工学部電子工学科専任講師、

2001 年同助教授、2007 年同教授で現在に至る。2018 年 University

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College London 訪問教授。光通信用機能素子、光計測用機能素子、

光通信システムの研究に従事。2006-2007 年 ELEX 編集幹事、

2008-2009 年エレクトロニクスソサイエティ編集出版会議庶務幹

事、2012 年レーザ・量子エレクトロニクス研究専門委員会委員長、

2012-2013 年和文論文誌(C)編集委員会委員長、2017-2018 年エレ

クトロニクスソサイエティ副会長(編集出版担当)、本会シニア

会員。

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【寄稿】(新フェロー)

「高速・低電圧シリコン光変調器の研究開発の歩み」

小川 憲介(東京工業大学)

「大容量伝送に向けた高速・低電圧シリコン光変調器の

研究開発」への取り組みに対して、電子情報通信学会フェ

ローの称号を賜ることになりました。まことに光栄に存じ

ます。ご推薦ならびにご評価にあたっていただきました

方々に厚く御礼申し上げます。フェロー称号授与の対象と

なったシリコン光変調器の研究開発では、シンガポール科

学技術研究庁マイクロエレクトロニクス研究所(IME)、

株式会社フジクラをはじめとする研究機関・企業の幹部、

共同研究者、同僚の方々からのご支援なくして取り組みを

進めることは不可能でした。深く感謝申し上げます。さら

に、本学会の全国大会および研究会での技術討論を通じて

頂戴したご質問やコメントは研究を進めるうえで大変参

考になりました。ご討論いただいた研究者の方々に御礼申

し上げます。

シリコン光変調器は集積化・量産性に優れるシリコンフ

ォトニクスをデバイスプラットフォームとして設計・製作

された極小フットプリントの光・電子融合デバイスです。

私がシリコン光変調器および関連する光集積回路の研究

開発に着手した当時(2008 年ころ)には、10 Gbaud およ

びそれを越える高速シンボルレートでのシリコン光変調

器の性能はまだ十分ではありませんでした。シリコン光変

調器を大容量光伝送に適用するには、強度変調の場合を例

にとると、10 Gbaud 以上のシンボルレートでの光強度

ON/OFF 時のコントラスト、すなわち消光比として 10 dB

以上を達成することが必要になっていました。

一般に、光変調器では、消光比の高い光変調を達成する

ためにマッハツェンダ(MZ)型の干渉計を有する光回路

が採用され、並行する MZ 干渉計の二本のアームには位相

変調部が挿入されます。シリコン光変調器では、屈折率コ

ントラストの高いシリコン/シリカをコア/クラッドの

ペアとする超小型光導波路をベースとして光回路を構成

することができます。これにより、商用化で先行するニオ

ブ酸リチウム(LN)光変調器の 1/10 程度という極小フッ

トプリント(~0.5 mm×5 mm)の MZ 光変調器を設計し

製作することができます。シリコン MZ 光変調器の位相変

調部には、光学描画・ドライエッチング・イオン注入・平

坦膜形成などの CMOS 極微細加工技術と良く整合し、簡

単なデバイス構造を有する PN 接合リブ導波路を採用し、

シリコン光変調器を設計しました。シリコン光変調器の製

作には、IME との共同研究を介して彼らの 200-mm CMOS

ファブを利用させていただきました。

シリコン光変調器が極小フットプリントであることか

ら、上記のシリコン位相変調部は PN 接合の両端に接続す

る直列電気抵抗Rと PN接合の電気容量Cの積で決まる時

定数 2RC を有する分布定数回路として解析することがで

き、高速化には、時定数 2RC の低減が必須であることが

わかります。PN 接合容量 C を低減させると、駆動電圧が

上昇して変調効率が低下してしまい、実用上好ましくあり

ません。むしろ、リブ導波路中央部に側方から接続するス

ラブ領域の厚みを増して直列抵抗 R のみを低減させたリ

ブ導波路を構成すると、高速動作という観点では適切です。

しかし、スラブ領域の厚みを増すだけでは、高次モード

が発生してしまい、消光比が低下します。そこで、高次モ

ードをいかにして抑圧するかが技術課題となりました。位

相変調部の物理シミュレーションと導波モードのシミュ

レーションを結合したコンピュータ解析に取り組み、スラ

ブ外延の所定の領域に高濃度ドーパントをイオン注入し、

ドーパントから生ずる高密度キャリアの光吸収によりモ

ード拡がりの大きな高次モードのみを減衰させ、基本モー

ドを低光損失で伝搬させることができ、消光比の高い高速

光変調が可能となることを見出しました。

このような新規な擬似単一モード導波路を考案・設計し、

シリコン MZ 光変調器の位相変調部に導入することによ

り、10 Gbaud 以上の高速シンボルレートにおいて、二値

強度変調の消光比として 10 dB 以上を達成することがで

きました[1]。さらに、二値位相変調においても、Q 値と

して 19 dB 以上を達成し、高速動作に向けた性能向上とい

う点では、先行する LN 光変調器の背中が見えるところま

で到達しました[2]。

シリコン MZ 光変調器では、シンボルレートが 32 Gbaud

に上昇しても上記の変調性能が維持されるため、ビットレ

ート 128 Gb/s での偏波多重(PDM)直交位相(IQ)変調

などのフォーマットを用いたデジタルコヒーレント通信

にも対応できます。PDM 合波光回路、複合 MZ 光変調回

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路などを単一チップ上に集積した超小型 PDM-IQ 光変調

器チップ(5 mm×6.5 mm)を試作し、伝送距離 1000 km

を越える光ファイバ線路を通して光信号を伝送できるこ

とを示しました。このシリコン光変調器では、PDM 光回

路は MZ 光変調回路と同じく、シリコンコア/シリカクラ

ッドの導波路構成をベースとして設計されているため、

PDM 光回路と MZ 光変調回路を一括加工することが可能

となっています[3]。これにより、量産性に優れるシリコ

ン光変調器が最先端の大容量伝送に対応することを実証

することができました[4, 5]。

シリコン光変調器チップの設計・製作にとどまることな

く、シリコン光変調器チップとの実装に適するセラミック

をベースとした超小型金属パッケージを新規に設計・製作

しました。その結果、シリコン光変調器チップ、入力電気

信号増幅器および周辺電気回路を内蔵したモジュールを

製作することができました。これにより、光ネットワーク

システムや光伝送機器に携わる研究者・技術者がシリコン

光変調器を取り扱うことが容易になりました[4]。実用を

志向した研究開発という観点では、有意義な取り組みであ

ったと回想しています。

シリコン光変調器の実用化をさらに推進するには、駆動

電圧を低減してエネルギー効率を高めることが求められ

ていました。そこで、シリコン位相変調部の PN 接合配置

を見直し、リブ導波路断面における導波モード電界と PN

接合領域の空間的重なりが増大するよう、コンピュータ解

析に基づき PN 接合配置の最適化に取り組みました。その

結果、位相変調部で位相変化量πを発生するための駆動電

圧 Vπとして、従来 5 V 以上必要であったところを 2.5 V

程度まで、すなわち半分以下に低減することできました

[6]。その結果、高周波電気増幅器を用いることなく電気

信号発生器からの電気信号で直接駆動することが可能と

なり、エネルギー効率の上昇だけでなく、光変調器モジュ

ールの簡易化・小型化にも貢献することができ、シリコン

光変調器の応用の幅を拡げることができました。

以上のように、シリコン光変調器の研究開発のこれまで

の歩みについて振り返りました。むすびにあたり、今後に

取り組むべき課題に目を向けてみたいと思います。シリコ

ン光変調器では、キャリア密度の変化にともなう屈折率変

化を動作原理としているため、駆動電圧と光損失とが互い

に拮抗し、いわゆる Vπと光ロスとのトレードオフが生じ

ます。このトレードオフを克服するには、異種材料の導入

も検討すべきではないかと思います。例えば、異種材料と

のボンディングを基盤技術とするヘテロジニアスプラッ

トフォームの出現により、シリコン光集積回路上に III-V

化合物、LN ナノ薄膜などの異種材料を無欠陥で接合する

ことができるようになりました。その結果、異種材料の物

性を活かし、既成の限界を打破する光・電子融合デバイス

を新たに設計・製作することができます。最先端のヘテロ

ジニアスプラットフォームを駆使した研究開発により、超

小型光変調器が一層進化することを期待します。

参考文献

[1] K. Ogawa, et al., “Silicon Mach-Zehnder modulator of

extinction ratio beyond 10 dB at 10.0-12.5 Gbps,” Opt. Express

Vol. 19, No. 26, pp. B26–B31, 2011.

[2] 小川憲介, “高速シリコンマッハツェンダ光変調器の

最新動向,” 電子情報通信学会誌 Vol. 96, No. 3, pp. 195–199,

2013.

[3] K. Goi, et al., “Low-loss partial rib polarization rotator

consisting only of silicon core and silica cladding,” Opt. Lett.

Vol. 40, No. 7, pp. 1410–1413, 2015.

[4] K. Ogawa, et al., “Fundamental characteristics and

high-speed applications of carrier-depletion silicon

Mach-Zehnder modulators,” IEICE Electron. Express Vol. 11,

No. 24, pp. 20142010, 2014.

[5] K. Ogawa, et al., “Design and characterisation of

high-speed monolithic silicon modulators for digital coherent

communication,” SPIE Photonics West 2015, Silicon Photonics

X (San Francisco, CA, USA, February 7-12, 2015) paper

9367-10; Proc. SPIE Vol. 9367, pp. 93670C-1-1-93670C-8,

2015.

[6] 五井一宏、他, “シリコン DP-IQ 変調器による低電圧

高速変調,”電子情報通信学会論文誌 C Vol. J100-C, No. 10,

pp. 493–501, 2017.

著者略歴:

1987 年 3 月、大阪大学大学院理学研究科後期課程物理学専攻修

了、理学博士号取得。同年 4 月、日立製作所中央研究所に入所。

2002 年 5 月、三井物産ナノテク研究所に異動。2006 年 7 月~2017

年 9 月、フジクラ先端技術総合研究所上席研究員。華為技術日本

研究所顧問を経て、2017 年 11 月に東京工業大学に異動、2018 年

4 月より同大学特任教授。OECC 2012 Best Paper Award 受賞。

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【寄稿】(新フェロー)

「有機薄膜電子材料の評価とデバイス・センサ応用に関する研究」

加藤 景三(新潟大学)

このたび、電子情報通信学会から「有機薄膜電子材料の

評価とデバイス・センサ応用に関する研究」における貢献

に対してフェロー称号を賜り、大変光栄に存じます。ご推

薦頂きました方々、ご審査いただいた方々に厚く御礼申し

上げます。また、これまでご指導いただいた先生方や、研

究室のスタッフや学生に心より感謝いたします。

筆者は、東京工業大学大学院修士・博士課程では、日野

太郎教授(2015 年逝去、東京工業大学名誉教授)、および

岩本光正助教授(現在、東京工業大学特任教授)のご指導

のもと、誘電・絶縁体薄膜の電気伝導と空間電荷に関する

研究に従事させていただきました。1970 年代に超高圧

(UHV)技術の研究が始まり、大学院生の 1980 年代には、

110 万ボルトの UHV 送電に向けた研究が行われていまし

た。そして、絶縁ケーブルとして使用されているポリエチ

レンなどの高分子フィルムの絶縁破壊の原因となる空間

電荷などに関する研究が非常に重要となっていました。そ

のため、筆者は、熱刺激電流や熱刺激表面電位、熱刺激発

光などを測定する熱刺激法を用いて、誘電体薄膜中のキャ

リアの種別や、キャリアトラップ、空間電荷分布などを評

価する研究を行ってきました。

一方、この 1980 年代には、有機薄膜に関する研究も種々

行われておりました。半導体産業の発展に伴って、1950 年

代以降にドライプロセスが非常に発展してきましたが、

1980 年代から有機薄膜作製技術のウェットプロセスの開

発が進みました。特に、有機分子を溶媒に溶かして使用し

た種々の有機薄膜作製技術が非常に進展してきていまし

た。これは、米国海軍研究所の Forrest L. Carter により、

1981 年に分子電子デバイスに関する国際ワークショップ

が開催され、1982 年にその会議の論文集が出版され、分

子電子デバイスの研究が盛んになったことも一因です。こ

の当時の分子電子デバイスは、分子 1 個がダイオードやト

ランジスタ機能を有する回路を形成しており、シリコンを

中心とした半導体集積化技術に代わる次世代電子デバイ

スと考えられていました。この分子電子デバイスの概念か

ら有機分子のさまざまな機能を電子デバイスへ応用しよ

うとする考え方、すなわち分子エレクトロニクスの研究が

非常に活発になりました。有機薄膜作製法としては、スピ

ンコート法やスプレー法などが、広く用いられていますが、

分子構造を設計制御した分子を合成し、それらの種々の機

能を持つ分子を用いた薄膜を作製する方法として、LB

(Langmuir-Blodgett)法が注目されていました。この LB 法

は、1935 年に Irving Langmuir と Katharine B. Blodgett によ

り見出された方法で、水面上の単分子膜を一層ずつ基板に

移し取る成膜方法です。この LB 法により厚さ方向に規則

性をもつ有機分子薄膜を容易に作製することができるの

で、分子レベルで配向や膜厚制御ができるようになり、分

子エレクトロニクス研究や新機能・高機能な有機デバイス

開発などの研究に幅広く利用されていました。また、1992

年に Gero Decher によって開発された交互吸着(Layer-by-

Layer : LbL)法は、高分子電解質を用いて陽イオン(カチ

オン)が存在する水溶液と陰イオン(アニオン)が存在す

る水溶液を作製し、そこに基板を交互に浸漬することを繰

り返すことで、静電相互作用により陽イオン・陰イオンを

交互に吸着して薄膜を形成していく方法も使用されるよ

うになっておりました。この LbL 法は交互積層法とも呼

ばれています。この LbL 法により、さまざまな材質や形

状の物質表面に、ナノメートルオーダーの制御された膜を

作製できるので、有機デバイス構築に使用されたりしてい

ます。また、最近では有機電界発光(有機 EL)素子や有

機太陽電池、有機トランジスタなどの有機デバイスに関す

る研究が非常に盛んで、デバイス構築に必要な有機薄膜作

製のために種々の薄膜ウェットプロセス技術が開発され、

高性能有機デバイス開発に向けた研究が行われています。

現在、有機材料の電子・光機能性や、有機薄膜や有機デ

バイスに関する有機エレクトロニクスに関する研究非常

に盛んに行われてきています。有機材料は、軽量かつフレ

キシブルで、費用効率が高く、大量生産が容易という特長

を有しています。また、フィルム状多層構造デバイスの作

製も容易で、有機分子を構造制御したら、分子設計・構成

したりして、種々の分子材料の開発が行われています。さ

らに、ユビキタスデバイスやウエアラブルデバイスなどが、

フレキシブルデバイスなどとして期待されています。また、

高効率なデバイス作製技術として、印刷技術により電子回

路を構築するプリンテッドエクトロニクスの研究も行わ

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れれています。さらに、生態を構成する材料の機能や高原

-抗体反応などを応用するバイオエレクトロニクスなど

の研究も非常に盛んとなっています。そして近い将来、有

機薄膜などの有機材料を用いて多くの電子デバイスが形

作られる時代が来ると考えられています。

有機薄膜を高効率・高機能化、あるいは新機能発現して

デバイスとして利用するためには、ナノメートルオーダで

の構造制御や界面物性の評価などがより重要となってい

ます。ナノメートルオーダの超薄膜の構造や誘電・光物性

を評価する方法に表面プラズモン(SP)励起を利用した方

法があります。SP とは、金属表面や金属界面に局在する

特異な表面電磁波モードであり、この SP 励起を用いた測

定法として全反射減衰(ATR)法が知られています。ATR

法は、屈折率の大きな媒質から小さな媒質に臨界角以上で

光を入射させたときの全反射現象を利用して、プリズム上

の金属超薄膜に入射光と金属の表面プラズマ振動の共鳴

状態である SP を励起させて反射率の変化を測定する方法

です。この ATR 法は SP の共鳴特性を測定する方法であ

り、SP 共鳴(SPR)法とも呼ばれています。

筆者は、1995 年頃からこの SP 励起を利用して種々の有

機薄膜の評価を行ってきました。液晶セル中の液晶分子配

向評価にも取り組みました。SPR 励起や導波モード励起を

用いて、電圧印加時の液晶セル中の液晶分子のチルト角や

分子配向分布の評価や、液晶分子の光配向制御などを行い、

液晶分子の界面現象の解明や、高性能な液晶ディスプレイ

の開発に役立つ成果が得られています。

最近では、SP 励起を利用した有機センサの高感度化に

関する種々の研究に従事しています。SPR 特性は表面状態

に極めて敏感であるので、これにより金属薄膜や金属薄膜

上の有機薄膜の評価が可能となります。金属薄膜や金属薄

膜上有機薄膜表面に物質の吸着や脱着、化学反応など、何

らかの変化が生じれば SPR 特性が変化するので種々のセ

ンサとしても用いられます。また、金属ナノ粒子では SP

が表面に局在することになるので局在 SP と呼ばれますが、

この局在 SPR 励起により、金属ナノ粒子の周囲に強い電

界が発生するので、これを利用すればデバイスやセンサの

高性能化に非常に有効となります。さらに、金属薄膜が等

しい誘電率(屈折率)を持つ誘電体で挟まれた場合、通常

の SP よりも伝搬距離が長い長距離伝搬 SP が励起されま

す。この長距離伝搬 SP は強くしみだし距離の大きい電界

を伴うため、長距離伝搬 SPR によるデバイス・センサの

高性能化も期待されます。この局在 SP や長距離伝搬 SP

を用いたセンサの高感度の研究も行っています。また、

SPR を光導波路分光法や水晶振動子微量天秤法と組合せ

ることにより、有機センサの高機能化の研究も行ってきて

います。さらに、SPR 励起には一般にプリズムを用いたプ

リズムカップリング SPR 法が用いられていますが、筆者

は金属グレーティングを用いたグレーティングカップリ

ング SPR 法用いた研究も行っています。グレーティング

カップリング法は、プリズムが不要であるため、構造が簡

単になり小型化に有利であり測定も容易となります。また、

フレキシブルデバイスの開発も可能となります。グレーテ

ィングカップリング SPR 法により観測される透過光、す

なわち透過型グレーティングカップリング SPR を用いた

高感度有機センサに関しても種々研究を行っています。

さらに、この SP 励起は、金属界面の電界増強効果など

により発光ダイオードや太陽電池などの電子デバイスの

高性能化が期待されており、筆者も有機デバイスの高性能

化に関する種々の研究に取り組んでいます。最近、太陽光

を利用した光電変換技術である太陽電池の開発が非常に

活発で、高効率・高性能化のために、電極界面を最適化し

て光制御することが重要となっており、それに関する研究

が多く行われています。筆者は、電極表面での SP 励起に

よる電界増強を利用した太陽電池の高効率化の研究を行

っており、金属ナノ粒子を用いることや、表面にドット形

状を作製することによるナノ構造制御による局在 SP を利

用した有機太陽電池の高効率化の研究に取り組んでいま

す。金属グレーティングや金属ナノ粒子、金属量子ドット

などを用いて、ナノ構造制御することで、SP 励起による

金属界面電界増強の他に、量子効果や光散乱効果、光トラ

ップ効果などにより、光キャリアや光吸収が増大し、有機

太陽電池の高効率化が可能であることを示しています。今

後、これらの効果や複合効果のメカニズムの解明やデバイ

ス構造の最適化などを行うことでさらなる特性向上が得

られると考えています。

著者略歴:

1982 年 3 月東京工業大学工学部電気・電子工学科卒業。1987 年

3 月同大学院博士課程修了(工学博士)。同年 4 月新潟大学工学部

助手、同大学講師、助教授を経て、2002 年 4 月より教授。現在、

同大学大学院自然科学研究科教授。1999 年 4 月~2000 年 3 月英

国シェフィールド大学客員教授。2013~2014 年度有機エレクトロ

ニクス研究専門委員会委員長。2015~2016 年度エレクトロニクス

ソサイエティ大会運営幹事・大会運営委員長。電気学会、応用物

理学会、レーザ学会、IEEE 会員。

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【寄稿】(新フェロー)

「レーダによる減災・人道的活動」 佐藤 源之(東北大学)

「電磁波応用工学、特に減災・人道的活動への社会実装

の推進」として本会フェローの称号を受けたことを、これ

までご指導いただいた先生方、共に研究を進めてきた皆様

と学生諸君に感謝いたします。

私の専門分野を電磁波応用工学としましたが、その中で

も特にレーダ技術に興味をもってきました。そこに「人道

的」を加えることで、一般的なレーダ技術とは異なる側面

が現れてきます。

大学に勤めて初めて携わったのが地熱エネルギー開発

の研究であり、電磁波、弾性波を利用した地層の計測技術

として坑井中にレーダを降下させ、地中を計測するボアホ

ールレーダ研究を始めました。1988-1989 年にドイツ連邦

地球科学資源研究所(BGR)に研究滞在する機会を得たの

は、核廃棄物の地層処分のモニタリングを行うためにレー

ダを利用する点で、地熱計測技術との接点があったからで

す。原子力発電は核廃棄物処理の問題を根底に抱えており

当時から地層処分の研究は重要と考えられていました。当

時ドイツでは原子力発電から自然エネルギーへの緩やか

な移行を計画していた段階であり、地下 1km 程度の巨大

な岩塩坑への廃棄物貯蔵のため、地下水の浸透をレーダで

計測する技術を開発していました。完全に乾燥した岩塩は

電波にとって理想的な伝搬媒質であり、媒質近傍に置かれ

たアンテナと送信波形に関して理論と実験を繰り返し行

う幸運に恵まれました。ボアホールレーダは地中レーダ

(GPR)でも特殊な分野ですが、ここで地中レーダ技術の

基礎をみっちり学ぶことができました。これは、学生時代

に関わった時間領域でのアンテナからの電波放射の直接

的な応用でもありました。1980 年代はモーメント法の全

盛の時代で、FDTD の原理は提案されていても計算機とメ

モリの能力不足から実用的に使える時代ではありません

でした。周波数領域の実験が普通だった時代に時間領域で

の実験を進めましたが、帯域の狭いオシロスコープを使う

ために大型のアンテナが必要で、8m 四方のグラウンドプ

レーン上に 2m のコニカルアンテナを作製、水銀スイッチ

のパルス発生器と格闘しながらデータを取りました。

地中レーダは現在埋設管や鉄筋の検知技術として実用

化していますが、1990 年代は黎明期であり各種のレーダ

装置が開発され多岐にわたる応用が試されていました。当

時から我々は遺跡調査への地中レーダ利用を行ってきま

したが、この分野も PC が現場でレーダ信号処理や 3 次元

表示まで可能な能力を持つようになり急速な実用化が進

みました。私たちは 2011 年東日本大震災後、地中レーダ

を利用し、津波被災地での住宅高台移転に伴う緊急遺跡調

査への支援、また津波被災者の捜索活動などを進めました

が、それまでの実用化経験が役立ちました。

2000 年代に入るとアフガニスタン、カンボジア、旧ユ

ーゴスラビアが分裂したクロアチア、ボスニア・ヘルツエ

ゴビナ等、社会情勢に起因する内戦によって残された地雷

を取り除き、住民が土地を安全に利用できるようにする人

道的地雷除去が注目を集めました。日本学術会議が我が国

の科学技術での地雷除去への貢献を目標に掲げたことか

ら、私たちは電磁誘導センサ(金属探知機)を補い、地雷

除去効率を地中レーダ技術によって格段に向上させるこ

とをめざして 2002 年から地雷検知センサ「ALIS」の開発

を開始しました。10 年にわたるカンボジア地雷原での試

験などを経て ALIS は 2019 年からカンボジアを含む地雷

被災国での本格運用が開始されています。

電波の利用は通信・放送の分野で社会の隅々にまで広が

ってきましたが 5G の時代を迎え、通信・放送電波を利用

したナビゲーション、対象物検知などレーダ技術への応用

が見込まれる新しい局面を迎えています。電波工学におい

て、レーダ技術は通信技術とは個別の技術として発展して

きましたが、近年両技術は急速に接近してきています。ビ

ームフォーミングやファーズドアレイ技術はレーダへの

応用として長い歴史を持ちますが、今後通信技術の中核に

なろうとしています。

私自身は 40 年以上前に通信工学の基礎を学びましたが、

現在の大学で教えるべき電波技術の根幹として学生に教

えるのは電磁気学と線形回路で変わらないものの、その先

に学ぶべき項目、科目は多岐に渡り、応用に至る道筋は多

様化しています。私の研究室ではレーダ技術の基礎が電磁

気学にあることを繰り返し学生に説明し、レーダ信号が画

像信号とは異なる次元の物理的な情報を持つことを丁寧

に説明しています。データ計測技術がデバイス、計測器の

汎用化で簡易に行えるようになること自体は技術の普及

を促します。PC 制御の電子式校正キットを使ってネット

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ワークアナライザを容易に使えるようになったので、学生

は計測したアンテナのインピーダンスを、スミスチャート

や位相基準面の概念を理解しなくともデジタル数値とし

てしか認識しないのではないかと危惧しています。電磁波

シミュレーションも同様です。40 年前に苦労して行った

電波の実験は現在ラップトップ PC上の FDTDシミュレー

タで可視化でき、小型 VNA のタイムドメイン機能を使え

ば机上に乗る大きさのアンテナでも簡単に計測が実現で

きるようになりました。しかし、それをいかに利用するか

は電磁気学に立脚した電波工学を正しく理解しているか

にかかっています。

私が専門とする地中レーダ(GPR)や地表設置型合成開

口レーダ(GB-SAR)など近距離レーダは、装置の開発・試作

からデータ取得、信号処理によるイメージングまでのすべ

ての工程を実験室で見通す事ができる小規模なシステム

です。半面、広い周波数帯域を利用しながら送受信波形を

制御するため、ハードウエア設計とソフトウエアが不可分

であるなどの難しさがあり、アンテナ設計技術から信号処

理までを理解して応用することで研究としての醍醐味が

生まれます。こうした研究の面白さを、いかに学生に伝え

るかが我々の責務であると感じています。

地雷検知・除去作業をカンボジアで展開し、また地表設

置型合成開口レーダを自然災害発生直後の被災地で地滑

りモニタリングに利用する社会実装を研究として継続し

てきました。岩手・宮城内陸地震、東日本大震災、熊本地

震など我が国で発生する自然災害に対して防災・減災の技

術をどう提供できるかが私たちに問われています。地滑り

を広域で計測できる GB-SAR はその解答の一つであり、

大学で開発した技術をいかに社会で利用するかが工学を

専門とする研究者にとって重要な課題であることから、解

答を見つけた喜びを感じています。一方これらの研究では

レーダ装置の輸送、商用電力の供給、設置場所の確保、暴

風雨対策など本来の電波応用工学だけではなく、広範な工

学知識を利用する必要があります。誰でも知っている太陽

光パネルによる電力供給でも、設置場所や天候による電力

供給の限界、バックアップ電池の保管などあらゆる問題を

解決しなければなりません。ソフトウエアだけでは解決で

きない工学を身につけなさいと学生にけしかけています。

一方で近距離レーダは通常の通信や放送では利用でき

ない数 GHz にも広がる周波数帯域をもつレーダシステム

であり、無線局としての運用にあたり電波法の遵守が強く

求められます。社会インフラのメンテナンスが強く叫ばれ

る社会において、GPR や GB-SAR の応用は電波工学とは

独立した土木分野などで予想以上に急速な普及が進んで

います。電波利用の裾野が広がることは大切ですが、健全

な普及を手助けする義務が私たちにあると思います。

電波工学の新しい局面を迎えつつ、従来型の工学知識と

経験が強く求められる通信、情報分野において、本学会に

おけるフェローの役割の一つは正統な技術の伝承にあり、

それが工学の社会貢献、減災、人道的な活動への道につな

がると考えています。

著者略歴:

1980 年東北大・工・通信卒。1985 年同大大学院工学研究科博

士課程了。同大工学部助手、助教授を経て現在、同大東北アジア

研究センター教授。2008-2011 年東北大学ディスティングイッシ

ュト プロフェッサー。1988-1989 年ドイツ連邦地球科学資源研究

所客員研究員。電磁波応用計測、人道的対人地雷検知除去の研究

などに従事、開発した ALIS はカンボジア地雷除去活動で活躍中。

工博。2014 年 Frank Frischknecht Leadership Award(SEG)受賞。2017

年本会喜安善市賞受賞。2015-2016 年電磁界理論研究専門委員会

委員長。IEEE Fellow、電気学会 会員。

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【寄稿】(新フェロー)

「化合物半導体デバイスと高速集積回路の研究開発を振り返って」

鈴木 康之(技術研究組合光電子融合基盤技術研究所)

このたび、本学会フェローの称号を賜り、大変光栄に存

じます。推薦・評価して頂きました方々、並びに審査して

頂きました方々に心より御礼申し上げます。また、これま

で NEC や技術研究組合光電子融合基盤技術研究所にて、

ご指導を頂いた諸先輩方々、共に研究開発に携わってきた

関係者各位に心より感謝を申し上げます。

私が化合物半導体に携わったのは、1984 年に NEC に入

社してからになります。入社した 1980 年代の化合物半導

体のデバイス分野は、GaAs MESFET が主流でしたが、1979

年に HEMT が発表され、2 つの異なる材料からなるヘテロ

接合を用いたデバイスが脚光を浴びてきました(NEC で

は 2DEG FET や HJFET と呼んでいました)。入社当時は、

化合物半導体デバイス技術の習得とともに衛星通信用低

雑音デバイスのスループロセス技術に従事しました。化合

物半導体のスループロセスへの着手はおろか、クリンルー

ムへの入室も初めてでした。最初に、短電極間構造のへテ

ロ接合 FET のスループロセスを習得しました。これはゲ

ート電極形成において、1 µm 幅のレジスト形成後にサイ

ドエッチングを利用して、0.5 µm 長以下のゲートを形成

し、前者のレジストを利用してゲート電極の極近傍にソー

ス・ドレイン電極を形成する特徴を有するものでした。顕

微鏡の 1 µm 目盛を見ながらサイドエッチングでゲート長

を決めるもので、エッチングが不十分だとゲート長が長く

なり良い特性が得られず、逆にエッチングしすぎるとゲー

トが無くなってしまいます。良い特性を得るには、熟練が

必要でした。後にこの時に作製したチップが衛星に搭載さ

れたと知り、大きな感動を覚えたことを記憶しています。

その後、高速集積回路への適用を目指し、GaAs ヘテロ接

合 FET の高性能化とその高速集積回路技術に取り組みま

した。

GaAs ヘテロ接合 FET の高性能化に対して、デバイスの

層構造やゲート電極構造のデバイス技術から、スループロ

セスや個別のプロセス技術まで研究開発を進めました。高

性能化のポイントは、ゲート長の短縮、ソース抵抗の低減、

短チャネル効果の抑制でした。デバイス技術では、イオン

注入セルフアライン構造、ゲートリセス構造、InGaAs pseudomorphich チャネル構造を試作と評価を通じて比較

しました。微細ゲートリセス構造 InGaAs pseudomorphich

ヘテロ接合 FET が高速 IC の基本素子として優れた構造で

あることを見出しました。

高速 IC への応用面については、1980 年代では 2.5 Gb/s

の光通信システムが実用されていましたが、さらなる高速

化のためには高速電子デバイスの発展が不可欠となって

いました。GaAs ヘテロ接合 FET を用いた IC の高速化を

実現するために、電子線ビーム露光微細ゲート形成、線間

結合容量を低減したエアーブリッジ配線、金属薄膜抵抗を

用いた多層配線、サイドゲート効果を抑制した素子分離、

H2 プラズマ処理を用いたドライエッチング技術等、寄生

効果を低減する多層配線や集積化に必要な均一性を有す

るプロセス技術の研究開発を進めました。また、同時期に

回路設計に初めて取り組みました。当時の回路設計では、

ネットリストを作り、SPICE シミュレータにかけ、その結

果をプリンターに出力させて確認するといったものでし

た。もちろん、ヘテロ接合 FET のモデルもなかったので、

GaAs MESFET のモデルを使用して設計しました。その結

果、1989 年、1991 年に世界に先駆けて、10 Gb/s LD ドラ

イバーIC、光変調器ドライバーIC とトランスインピーダ

ンスアンプ(TIA)の光通信システムのフロントエンド IC

を実現しました。これは、ヘテロ接合化合物半導体デバイ

スの光通信分野における応用に対して大きな影響を与え

ました。現在でも光通信システムのフロントエンド IC に

は、ヘテロ接合化合物半導体デバイスが適用されています。

これを機に 10 Gb/s 動作の IC の開発競争が始まりました。

この時フォトマスクに D-Flip/Flop も設計して搭載してい

ましたが、動作しませんでした。その結果、10 Gb/s 動作

D-Flip/Flop の発表は、他社に先を越されてしまいました。

当時、回路とレイアウトの照合は目視で確認するしかなく、

二人でチェックを行いましが、お互い相手がチェックして

いるから大丈夫と思ったせいで、レイアウトミスには気が

付きませんでした。現在では、LVS(layout versus schematic)

ツールが整えられており、上記のようなミスが無くなって

います。未だに後悔が残る事象でした。

2012 年にヘテロ接合 FET ICを光通信システムに適用す

るために、伝送通信事業部に移りました。ここで初めて、

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ヘテロ接合 FET IC が 10 Gb/s 超高速光伝送システムや海

底遠距離通信ケーブルシステムの製品に適用されました。

これまで研究開発してきたヘテロ接合半導体デバイス技

術や高速集積回路技術が製品になったことで、大きな感動

を受けました。また、前記のシステムの製品向けに Si バ

イポーラトランジスタ LSI の開発にも従事したことから、

バイポーラトランジスタの集積回路技術も身に付けまし

た。トランジスタの性能である fT(Current gain cutoff

frequency)や fmax(Maximum oscillation frequency)はヘテ

ロ接合 FET の方が優れていました。では、何故 Si バイポ

ーラトランジスタの方が、高速動作が可能なのか疑問に持

ち、解析したことは今後の分岐点となりました。この時期

を境にして、高速集積回路技術に専念しました。

1990 年代後半では、10 Gb/s 光通信システムが実用化段

階に入ると伝送容量のさらなる増大を目指して、40 Gb/s 光

通信システムの研究開発が進められました。研究所に戻っ

てから、ミリ波帯や 40 Gb/s の集積回路設計技術の研究に

従事しました。同じ研究部では GaAs ヘテロ接合バイポー

ラトランジスタ(HBT)の研究開発が進められていました。

HBT のデバイスパラメータとベースバンドアンプの帯域

の関係について解析し、ベース抵抗と電子のベース走行時

間の両者が低減できる再成長外部ベース HBT を基本素子

とすることが優位であることを示しました。HBT の大信

号モデルには真性部分と寄生部分を区別し、配線には分布

定数的な手法を導入して高精度設計を実施しました。また、

この当時 HBT のモデルが回路シミュレータにないことか

ら、HBT モデルの真性部分には、従来の Gummel-poon モ

デルを使用し、HBT の特性を考慮したバイアス設定をす

ることで、設計精度の向上を図りました。回路シミュレー

ション結果のみで判断して回路設計をしがちですが、高速

回路設計技術には、デバイスと回路の両方の技術が必要で

あると思っています。

2000 年頃より研究段階では、ポスト 40 Gb/s として 1 波

長当たり 80 Gb/s~100 Gb/s の高速化が要求されていまし

た。80 Gb/s 以上になると、電子デバイスの高周波特性の

向上だけでは IC の高速動作の実現は困難であり、集積回

路技術に関してブレークスルーが必要でした。私は、100

Gb/s の集積回路設計技術に注力して、Inverted Micro-strip

Line を用いた IC 内部の広帯域インピーダンス整合、ダイ

ナミック型非対称 Latch 動作、集中定数回路の持つ機能性

と分布定数回路の広帯域性を兼ね備えた Functional

Distributed Circuit設計手法を提案しました。そして InP HBT

を用いて、120 Gb/s Multiplexer(MUX)、70 Gb/s D-Flip/Flop、

110 Gb/s Demultiplexer(DEMUX)、90 Gb/s 光変調器ドラ

イバーIC の世界最高速動作を発表しました。さらにモジ

ュールを作製して、MUX と DEMUX で 100 Gb/s の 10-12

以下のエラーフリー動作を世界で初めて成功、変調器ドラ

イバーIC で LN 変調器を駆動し 90 Gb/s の E/O 変調に成功

するなど IC の実用性も実証しました。

100 Gb/s IC の実現の原点は、遡ること 1996 年からの通

信・放送機構(TAO)と情報通信研究機構(NICT)から

の委託研究「トータル光通信技術の研究開発」(1996 年~

2005 年度)にあります。私は、「超高速電子回路技術」の

責任者として、目標やスケジュール設定のみならず、自ら

研究開発を実施しました。1996 年当初、未知数と考えら

れていた 100 Gb/s 動作 IC とモジュール化を最終目標に設

定しました。100 Gb/s 動作はかなりハードル高い目標であ

り、10 年先といえども実現できるかどうか分からない目

標にチャレンジしました。当初から 10 年間、「超高速電子

回路技術」のメンバーだったのは私一人でした。振り返っ

てみると、

一歩一歩の成果の積み重ねで確実に技術が向上

タイムリーに最先端の測定装置を使用

失敗許されない各年度の目標

自ら予算、目標、スケジュールを設定

次第に芽生える執念

多くの方のご協力のおかげ

によって実現できたと思います。最終目標を達成したこと

は、プロジェクトの成果のみならず、電子デバイスで到達

し得る動作速度の限界の追及を果たしたと言えます。

2012 年から、技術研究組合光電子融合技術研究組合に

出向して、総務省と新エネルギー・産業技術総合開発機構

(NEDO)からの委託研究「超消費電力型エレクトロニク

ス実装システム技術開発」(2012 年~2021 年度)に参画し、

Si Photonics 上の電気領域及び CMOS 集積回路に関する研

究開発に従事しました。高密度で低消費電力が必要とされ

る光インターコネクト応用において、Si Photonics 技術を

用いた 25 Gb/s×4 chの 5×5 mm2サイズの光 Tx/Rxの研究

開発を推進しました。Tx/Rx 回路設計においては、

Photonics-Electronics Convergence Design を用いることで

Tx/Rx の帯域向上と 5 mW/Gbps の低消費電力化を実現し

ました。Si Photonics は、導波路を形成するために SOI 基

板を用いますが、SOI 基板上の配線は損失がないと思って

いるメンバーもいました。Si Photonics を形成する SOI 基

板は、Si 基板上に 3 µm 厚の SiO2の BOX 層と 200 nm の

Si の SOI 層からなっています。2 mm 長の線路の挿入損失

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は、12.5 GHz で 4 dB になり、誘電損が顕著になります。

ドライバーIC や TIA の信号配線の下部に位置する SOI 層

を除去することにより、挿入損失を 1/4まで低減しました。

また、光素子と IC を接続する配線は Tx/Rx の特性に大き

な影響を与えます。光変調器-ドライバーIC 間を低イン

ピーダンスに、PD-TIA 間の配線の特性インピーダンス

を高インピーダンスに設定することで、光デバイスの特性

を補償して Tx/Rx の帯域向上が得られることを示しまし

た。光素子と IC を接続する際の課題とともに Si Photonics

ならではの課題を抑制して、製品化レベルの Tx/Rx の特性

を実現しました。現在、アイオーコア株式会社にて製品化

されています。

これまで、私が従事してきた化合物半導体デバイスと高

速集積回路の研究開発を振り返って、特に印象に残ってい

ることを述べてきました。現在、「超消費電力型エレクト

ロニクス実装システム技術開発」のプロジェクトで、56

Gb/s や 112 Gb/s の IC の研究開発に従事しています。最後

に振り返ってみると

何事にも好奇心を持とう

成功体験を味わおう

周囲と議論やコミュニケーションをとろう

が重要であると思います。なぜだろうと考えることで集中

力や行動力が現れ、楽しく取り込むことができます、また

アイデアが湧いてくる場合が多いです。大小に限らず成功

したことは自信につながりますし、次に向かってのモチベ

ーションが膨らみます。上司や同僚と話すことで、自分の

行っている手法や方向に安心感が芽生えます。また、話の

中で小さなヒントが隠されていることが少なくありませ

ん。最近、伝送通信事業部時代の先輩から、定年まで集積

回路の設計に携わるのは研究者冥利に尽きるのではと言

われました。確かにそう思います。今後、これまでの経験

を生かし、後輩の指導並びに社会に貢献したいと思ってい

ます。

著者略歴:

1984 年 筑波大学大学院 理工学研究科 修士課程修了。同年

日本電気株式会社 マイクロエレクトロニクス研究所に入社。

2012 年 技術研究組合光電子融合技術研究組合に出向。2000 年

工学博士。2009 年~2017 年 電気通信大学 先端ワイヤレス・

コミュニケーション研究センター客員教授。2011 年 電子情報通

信学会論文賞。

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【寄稿】(新フェロー)

「人体の複合物理と生理応答統合モデルに関する研究」を振り返って

平田 晃正(名古屋工業大学)

このたび、本会より、「人体マルチフィジクスと生理応

答の統合計算法と応用に関する研究」でフェローの称号を

賜りました。ご推薦、また評価いただきました方々をはじ

め、この研究を支えてくださった多くの方々に深く感謝い

たします。研究内容の詳細については、本誌(ニュースレ

ター)2017 年 10 月号に研究室紹介、2018 年 1 月号にソサ

エティ賞受賞記として寄稿しているため、本稿では技術的

な視点ではなくこの研究活動に至ったエピソードなどを

中心に記載したい。

私が大学に入学したとき、情報通信といえば新鮮で夢に

あふれる響きでした。ただ、実をいうと、研究室配属まで

は、正直何をやっているのかはよくわかっていなかった。

そのような中、ご縁があって電磁波工学に関する研究室に

配属されることとなる。研究テーマは電磁波とプラズマの

相互作用に関する研究、具体的には電磁界と荷電粒子の相

互作用のモデル化であった。これが、複合物理計算技術の

習得の原点である。博士課程に進学した際、同じ研究室の

別グループであった修士課程の学生より、電磁界と生体の

モデル化について相談され、コード化実現をサポートする

ことになる。これが生体を取り使うきっかけであり、当時、

まさか生体と電磁波の研究がライフワークになるとは思

っていなかった。

今でこそ私たちの生活に欠かせないものとなった携帯

電話だが、当時、一部の人々の関心は、電波のヒトへの影

響へ向かっていた。生体に関する知識が少しできた私は、

“工学的見地から貢献できないか”と考えるようになった。

これが人体のモデル化、さらには熱の影響などを考察する

発端となり、“生体”と“複合物理解析”というふたつが

つながった瞬間である。このテーマについて、当時の大学

院生修士課程の学生とほぼゼロから立ち上げた。

受賞業績に関する最初の論文は、電波照射時におけるヒ

ト眼球内における電力吸収量と温度上昇の変化という観

点から複合物理計算を用いて評価、考察したものである。

この成果が「医学・生物学分野からの考察に有用」と海外

の眼科医の方から文献を請求されるなどの評価を頂いた

反面、国際会議などではまだ医学的研究と工学的研究の乖

離が大きく、「ヒトに関する物理が再現できて本当に役立

つのか」との率直な意見も頂いた。どうすれば多方面の研

究領域の方々に理解いただき、貢献できるか。計算科学が

専門であった私は、スキルはあるものの、どのように研究

を進めるか、という混迷の日々の始まりとともに、次第に

この研究テーマが中心になっていった。

暗中模索の中で着目したのが、ヒトの生体応答だった。

例えば、人は温度が上がると血流変化や発汗によって体温

を下げる。電気刺激によって神経が応答する。この生体応

答まで含めた現象を計算によって再現できないか。この発

想の転換と試行錯誤の末、10 年以上をかけて当初の複合

物理計算と、その物理量に応じた生体応答を再現可能にす

る技術の開発に辿りつくことができた。非常に美しい物理

の基本法則に物理とはかけ離れた経験式を融合させるの

である。正直なところ、大きな違和感があった。

現在この複合的予測技術は、学際的に受け入れられてい

ると実感している。物理計算分野にとどまらず、生理学・

神経科学、機械学習、医用画像など、性質をまったく異に

する幅広い分野と融合する学際的色彩を帯び、電波に対す

る国際安全基準の策定や複数の医療診断技術の開発(オー

ダーメイド化)、気象情報と連動した熱中症リスク予測な

ど多方面で実を結び始めており、開発した私自身が驚いて

いる。今後も、机上でとどめることなく科学による社会シ

ステムの構築、標準化、法制化などへの貢献が研究者とし

ての重要な使命であることを念頭に置き、固定観念にとら

われず、新規分野に積極的に挑戦していきたい。

著者略歴:

1996 年阪大・工・通信卒。2000 年同大学院博士課程了。博士

(工学)。同年阪大・工・助手。2004 年名工大・准教授、現在教

授、2019 年より同大学先端医用物理・情報工学研究センター・セ

ンター長。生体電磁気学、計算物理学、アンテナなどに関する研

究に従事。2014 年本会論文賞、2017 年本会エレクトロニクスソ

サイエテイ賞、2018 年日本学士院学術奨励賞および日本学術振興

会賞など各受賞。IEEE および英国物理学会 Fellow。

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13

【論文誌技術解説】

「社会システムの変革を牽引するヘテロインテグレーション技術」 (和文論文誌 C「社会システムの変革を牽引するヘテロインテグ レーション技術論文特集」編集委員会)

石榑 崇明(慶大理工)

和文論文誌 C には、毎年数件の特集号が組まれている

が、そのほとんどは、研究専門委員会を母体とする編集委

員会にて編集されている。これに対して、電子部品の実装

技術にフォーカスする「実装技術論文特集」は、明星大学

の大塚寛治教授が編集委員長を務められた 2004年 11月号

の初刊以来、15 年間に渡り継続して組まれた特集である

が、その編集委員会は、いずれの研究専門委員会にも属さ

ず、編集委員長以下、すべて有志の編集委員により構成さ

れる異色の特集号である。そのため、この実装技術論文特

集では、特集企画を立案した後、編集委員を兼任するリエ

ゾン委員を通して、和文論文誌編集委員会に企画を提案、

その承認を得て、ようやく論文投稿募集、編集作業が開始

される。企画立案、編集委員構成が順調に進まない場合に

は、編集作業工程が非常にタイトになることもあったが、

それでも過去 14 回の特集号には、15 報以上の論文を集め

て発行した回が複数回ある。和文論文誌であるがゆえに、

各論文にまとめられた技術は、我が国にて開発されたオリ

ジナル技術であり、我が国の電子部品実装技術力の高さを

象徴している。

平成の元号の終わりの年となった 2018 年、実装技術論

文特集は、15 回目を数え「社会システムの変革を牽引す

るヘテロインテグレーション技術」を特集することとなっ

た。半導体部品実装技術の分野では、ここ数年「ヘテロイ

ンテグレーション技術」が脚光を浴びており、このヘテロ

インテグレーション技術に注目するのは、2012 年、2017

年に続いて 3 度目となった。企画の段階で、過去 2 回の「ヘ

テロインテグレーション技術特集」との差異の検討に時間

を要し、上述の通り、論文募集開始から投稿締め切りまで

の期間が十分に取れず(2 ヶ月程度)、タイトな編集作業

工程となってしまったが、招待論文 1 件、一般論文 5 件、

ショートノート 1 件の計 8 件を採録することができ、2019

年 3 月号に無事刊行するはこびとなった。

招待論文は、「常温接合の系譜と未来」というタイトル

で、東京大学大学院の須賀唯知教授にご寄稿頂いた。本招

待論文には、同教授のグループが牽引されてきた表面活性

化による「常温接合技術」に関して、接合の原理から近年

の産業界への応用展開に至るまで系統的に解説してくだ

さっている。

また、一般投稿論文には、

「多層フレキシブル基板に用いられる接着シートの信頼

性検証」

「電気・熱・応力連成回路解析による SiC パワーモジュー

ル電気特性評価法の構築」

「低誘電率基材を利用した損失性粒子の PIM 評価法」

という題目からもわかるように、電子部品用素材および電

子デバイス自身の評価・解析に関する論文が多くを占めて

いる。これらの特集論文は、すでに刊行されており、是非

ともご覧頂きたい。

以上ご紹介した 2018 年の特集は、15 件以上の論文を掲

載していたかつての特集に比べると、論文数では見劣りす

るが、2013 年の特集号で 17 件の論文を採録して以降、採

録論文数 1 桁台を余儀なくされている。これは、和文論文

誌 C の抱える問題の 1 つでもある。「和文論文」に対して、

英文論文投稿に高価値を認める研究機関が多いことが、問

題の根底にあることはこれまでにも指摘されてきている。

電子部品実装技術に関しても、オリジナルの技術が IEEE

系の国際会議や英文論文誌にて紹介される例が多いのが

現状である。

その様な状況下にありながら、実装技術特集を絶やさぬ

様、編集作業にご尽力くださった編集幹事、編集委員各位、

ならびに論文を投稿してくださった著者各位に、この場を

借りて謝意を表する。なお、16 回目の実装技術特集発行

に向けてすでに編集委員会が発足しており、優れた論文が

採録されることを願っている。

著者略歴:

慶應義塾大学理工学部教授。1996 年慶應義塾大学大学院理工学

研究科 博士課程修了。博士(工学)、財)神奈川科学技術アカデ

ミー研究員、慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 助手、専任

講師、准教授を経て、2019 年より現職。2005 年米国コロンビア

大学客員研究員。エレクトロニクス実装学会、応用物理学会、高

分子学会、IEEE、OSA、SPIE 各会員。IEEE、電子情報通信学会

シニア会員。

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【論文誌技術解説】

和文論文誌 C「エレクトロニクス分野におけるシミュレーション 技術の進展」特集号によせて (ゲストエディタ)

柴山 純(法政大学)

本特集は毎年継続し今回で 7 度目になります。これまで

の特集には招待論文を含め平均で 9 件以上の論文・ショー

トノートが掲載されておりました。大変心配だったのは、

特に目立った宣伝はしておらず、はたして特集として成立

するのに十分な論文数が集まるか、ということでした。締

切の延長を行いましたが、結果として多くの論文が投稿さ

れ、招待論文 1 件、一般論文 5 件、ショートノート 5 件の

計 11 件の論文が掲載される運びとなりました。製品開発

にはシミュレーターによる事前検討が不可欠となってお

り、新たなシミュレーター開発の意欲が依然として衰えて

いないことが示されました。

ここでは本特集号に掲載される論文タイトルを紹介さ

せて頂きます(掲載順)。

招待論文

・超広帯域電磁界解析のための周波数依存性 FDTD 法

一般論文

・強調された増幅係数を用いた Yee 格子型円筒座標虚軸

ビーム伝搬法による屈曲導波路解析

・座標変換に基づく有限要素ビーム伝搬法によるテーパ

型偏波分離素子の設計に関する検討

・数値シミュレーションを用いた 26GHz 帯屋内伝搬にお

ける人体遮蔽特性推定法についての一検討

・随伴変数法による感度解析に基づく プラズモニック導

波路デバイスの自動最適設計に関する研究

・分割幅可変カントール多層平板におけるマイクロ波帯

の透過特性

ショートノート

・ビーム伝搬法と FDTD 法の二次元複合シミュレーショ

ンを用いた計算コスト削減の検討

・GPU を用いた超並列計算による高速逆ラプラス変換及

び Prony 法を適用した周波数分散性 FDTD スキームの高

速化に関する検討

・トポロジー最適化による球殻電磁シールドの遮蔽性能

向上に関する検討

・リードフィールド行列に基づいた Matching Pursuit 法に

よる脳波源推定

・選好度付きセットベースデザイン手法を用いた EMI フ

ィルタの多目的設計

以上の 11 件であり、いずれも興味深い内容となっており

ます。5 月号掲載の本特集を直接ご覧頂けると幸いです。

最近は英語で論文を執筆する機会も多くなりましたが、

大学で教えている身として学生の皆さんにお伝えしたい

のは、まずは日本語でしっかり論文を書けるようになって

もらいたい、ということです。時に査読者から手厳しい指

摘がありますが、それに対して日本語で的確かつ簡素に回

答するのも、大変良い訓練になります。また、学位や奨学

金等の申請に研究業績が要求される際は、結果の送付日・

論文掲載日があらかじめ決まっているので本特集への論

文投稿は好都合と思います。企業の皆様は学会・論文発表

に先立ち特許の申請を行わざるを得ないなど、制約をお持

ちかもしれませんが、科学技術の発展のために最新の研究

成果を是非ご提供頂きたく存じます。次年度も本特集の出

版を予定しております。エレクトロニクス全般に関するシ

ミュレーション技術の論文を受け付けておりますので、引

き続き皆様からのご投稿をお待ちしております。

最後に本特集号発行にあたり、投稿頂いた著者の皆様、

適切な意見を頂いた査読委員、細かな作業を行って頂いた

編集委員、大変な編集業務を統括し推進された編集幹事、

並びに事務局の皆様に、心よりお礼申し上げます。

著者略歴:

1993 年法政大・工・電気卒。1995 年同大学院修士課程了。同年

古河電工入社、光技術研究所勤務。1999 年法政大助手。2015 年

同大教授。博士(工学)。電磁界デバイスの数値解析の研究に従

事。2013 年本会エレクトロニクスシミュレーション(EST)研究

会より優秀論文発表賞 (一般部門)、2017 年米国電気電子学会

(IEEE)より Ulrich L. Rohde Innovative Conference Paper Award on

Computational Techniques in Electromagnetics、同年 International

Symposium on Microwave and Optical Technology にて Best Paper

Award、2018 年本会エレクトロニクスソサイエティ賞を受賞。

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【論文誌技術解説】

英文論文誌 C「量子情報技術を支える超伝導エレクトロニクス」 (小特集編集委員会 ゲストエディタ)

日高 睦夫(産総研)

超伝導エレクトロニクス研究専門委員会(SCE)では、

英文論文誌 C において小特集「量子情報技術を支える超

伝導エレクトロニクス」を企画しました。量子情報技術は

これからの社会を支えるキーテクノロジーの一つであり、

我が国が存在感を示している分野の一つです。

超伝導体は量子情報処理デバイスにとって非常に魅力

的な材料です。通常の材料では原子のオーダーでしか実現

できない一つの波動関数で記述される系を、超伝導体では

巨視的量子効果によってミリメータオーダーの大きさで

実現することができ、量子ビットなどの量子コンピュータ

デバイスのオンチップ作製が容易となります。また、水素

原子では 2.5 PHz の電磁波(紫外線)が必要な基底状態か

ら第 1 励起状態への遷移を超伝導量子ビットではマイク

ロ波領域の数 GHz で行うことができます。さらに、超伝

導共振器やキャパシタンスを使うことによって離れた場

所にある超伝導量子ビットを結合することもできます。

超伝導量子ビットはマイクロ波パルスで操作できます

が、大規模化した場合外部から多数のマイクロ波ケーブル

を量子ビットが動作する 10 mK レベルの極低温に導入す

ることは容易ではないと考えられます。単一磁束量子

(SFQ)を用いた超伝導デジタル回路はマイクロ波領域の

出力生成が可能であるため、超伝導量子コンピュータの操

作に利用する試みがあります。

超伝導検出器にはいくつかの種類がありますが、極微弱

な光検出が可能な超伝導ナノワイヤ光検出器(SNSPD)

と超伝導転移端センサ(TES)が量子計測や量子通信に利

用されています。両者とも高検出効率、低暗計数率など他

では実現できない優れた特性を備えています。SNSPD が

単一光子の有無をデジタル的に検出できるのに対して、

TES は光子自身が持つエネルギーを測定できるという特

徴を持っています。これらの特徴から SNSPD と TES はそ

れぞれの特徴を生かせる応用に向けた研究が行われてい

ます。

本小特集は 4 件の招待論文で構成されています。東大の

田渕先生からは「Toward scalable superconducting quantum

computer implementation」と題して誤り耐性を持つ量子コ

ンピュータシステムの現状と解決すべき課題について解

説していただいています。量子コンピュータは制御の精度

が直接計算結果に反映される一種のアナログコンピュー

タであることが、実現を難しくしている一つの要因である

ことなどが述べられています。

横国大の吉川先生は「Superconducting Digital Electronics

for Controlling Quantum Computing Systems」と題する論文

の中で、超低消費電力の超伝導デジタル回路である断熱型

量子磁束パラメトロン回路(AQFP)を量子コンピュータ

の制御回路と読出し回路に用いたシステムを提案し、シミ

ュレーションによる動作の検証を報告しています。

阪大の山本先生は「Quantum information processing with

superconducting nanowire single-photon detectors」において

量子テレポーテーションなどの光を用いた量子情報通信

の検出器として SNSPD が不可欠の存在となりつつあるこ

とを述べています。

産総研の福田氏は TES の比較的新しい応用である単一

光子分光イメージングを「Single-photon measurement

techniques with a superconducting transition edge sensor」の中

で述べています。TES の高いエネルギー分解能を利用する

ことで、入射光子の個数が正確に計測できることが実験で

示されています。

最後に、本小特集に貴重な研究成果をご投稿いただいた

投稿者、それらの原稿を熱心に査読いただいた査読委員、

本小特集の編集にあたり多大なご苦労をいただいた編集

委員と学会事務局の皆様に、心よりお礼申しあげます。

著者略歴:

1982 年九州大学院総合理工学研究科博士前期課程(情報システ

ム学専攻)修了。1998 年東京大学より博士(工学)授与。1982

年日本電気(株)、1990 年より 1 年間アリゾナ州立大客員研究員、

2002 年より(財)国際超電導産業技術研究センター超電導工学研

究所、2013 年より(国研)産業技術総合研究所勤務。超伝導デバイ

ス研究に従事。2000 年未踏科学技術協会超伝導科学技術賞、2002

年日本学術振興会第 146 委員会賞、2005 年電子情報通信学会論文

賞。

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【論文誌技術解説】

英文論文誌 C「Special Section on Solid-State Circuit Design —Architecture, Circuit, Device and Design Methodology」の発刊に寄せて (小特集編集委員会 ゲストエディタ)

日高 秀人(ルネサスエレクトロニクス)

英文論文誌 C, Vol. E102-C, No. 4(2019 年 4 月)におい

て 、「 Special Section on Solid-State Circuit Design —

Architecture, Circuit, Device and Design Methodology(固体集

積回路設計小特集 -アーキテクチャ・回路・デバイス・設

計手法)」が発刊されました。エレクトロニクスソサイエ

ティ会員の皆様には、半導体集積回路技術および関連シス

テム技術の最新動向を把握するための絶好の機会として、

ぜひご参照いただければ幸いです。

近年の IoT (Internet of Things)や AI (Artificial Intelligence)

技術は、EH(Energy Harvesting;環境エネルギーの取得と

利用)や AI 推論などに及ぶパワー効率の向上を通じて、

ファクトリーオートメーション、ヘルスケア(医療・健康)

応用などに多大な貢献することが期待、見出されています。

これらの共通項として、限られた通信バンド幅でのデータ

トラフィックを低減し、消費電力を低減するために、エッ

ジデバイスでビッグデータを扱うエッジコンピューティ

ングの確立が重要になってきました。これらの進歩は、半

導体集積回路技術および関連システム設計により支えら

れており、これら技術革新の内容・動向をとらえることが

非常に重要です。

このような技術変革状況の中、本小特集号には、9 件の

論文が投稿され、査読委員による査読報告をもとに厳正な

審査を行った結果、招待論文 1 件、一般論文 5 件の、合計

6 件の論文を採録することになりました。掲載論文は、ヘ

ルスケア、IoT、AI、コネクティビティ応用を目指した、

VLSI アーキテクチャおよび超低消費電力回路技術、高信

頼性技術を包含しています。

招待論文「Recent progress of biomedical processor SoC for

wearable healthcare application: A review」では、吉本雅彦氏

(神戸大学)、和泉慎太郎氏 (大阪大学)に、ヘルスケア分野

のウェアラブル応用向け SoC (System on Chip)におけるオ

ンチップ生体信号処理に関する包括的レビューをお願い

しました。生体信号処理の分類と従来手法の紹介から、

特にデータ圧縮やニューラルネット応用に至る洞察に富

む将来予測までを含む、関係者必読の好論文になっていま

す。続いて、AI 応用で脚光を浴びている Approximate

Computing 回路、低消費電力のタイマー回路、超低消費電

力・低フェースノイズの原子時計用 VCO 回路技術、1T-

4MTJ 構成の MRAM (Magnetic RAM)セル構成とセンス回

路技術、各種低電圧回路でのソフトエラー率の測定と解析

に関する論文を収容しています。

この一方で、残念ながら採録に至らなかった原稿の著者

各位には、査読コメントを参考にして完成度を高めていた

だき、英文論文誌 C への再度の投稿をご検討いただけれ

ば幸甚です。

最後に、本小特集に貴重な研究成果を投稿いただいた

投稿者の方々、投稿原稿を熱心に査読いただいた査読委員

の方々、編集にあたり多大なご努力をいただいた編集委員

と学会事務局の皆様に、心よりお礼申上げます。

編集委員会委員(敬称略):

幹事:升井 義博(広島工大)

委員(五十音順):

梶山 新也(日立製作所)、木原 崇雄(大阪工大)、

名倉 徹(福岡大)、新津 葵一(名古屋大)、

古田 善一(デンソー)、桝井 昇一(富士通研)、

渡辺 大輔(アドバンテスト)

著者略歴:

東京大・工・電子卒および同大学院工学系研究科修士課程修了、

三菱電機(株)、ルネサステクノロジ(株)を経てルネサスエレクト

ロニクス(株)に在籍。専門は半導体メモリのテクノロジ開発、IP

および製品設計と、応用・組込みシステム開発、技術開発戦略と

マネージメント。工学博士、IEEE Fellow。

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【論文誌技術解説】

英文論文誌 C 小特集「Special Section on Progress in Optical Device Technology for Increasing Data Transmission Capacity」の発刊に寄せて (小特集編集委員会 委員長)

山本 剛之(株式会社富士通研究所)

個人があたりまえのようにインターネットを利用して

動画をやりとりし、企業のシステムもクラウド化でネット

ワークを介して行うことが基本となってきた今日、ネット

ワークの情報伝送量は着実に増え続けています。これから

5G が導入され、全ての人とモノがつながって経済発展と

ともに社会課題を解決していく Society5.0 へと、大量のデ

ータを伝送することの必要性はさらに増していくと考え

られます。光ネットワークはこのような社会を支える基盤

であり、光によるデータ伝送技術はこれまでも 2.5Gb/s か

ら 10Gb/s、さらには 100Gb/s と 1 つの光送受信器の伝送容

量を拡大してきて、現在 400Gb/s の送受信器が実用化され

るまでになりました。但し、かつては光送受信器の伝送容

量増大といえば、光デバイスと電子デバイスの高速化とそ

の高周波実装が主なトピックでしたが、10Gb/s を越えて

個々のデバイスの高速化が物理限界に近づきつつある現

在では、デジタル信号処理技術を導入し、信号の多値化や

多チャンネル化と組み合わせた複数の異なるアプローチ

がその用途に応じて検討されてきています。また、電気信

号、光信号の多チャンネル化に伴い、集積、実装技術がま

すます重要になってきています。

レーザ・量子エレクトロニクス研究専門委員会(LQE)

は光伝送の光源となる半導体レーザとその関連デバイス

を大きな対象分野としています。このように大容量化に向

けた技術が多様化してきていることを踏まえて、2017 年 9

月のソサエティ大会において光エレクトロニクス研究専

門委員会(OPE)との共催で、「データ伝送容量増大に向

けた光デバイス技術の進展」と題したシンポジウムを開催

しました。このシンポジウムは多数のご参加をいただいて

大変な盛況で、皆様の興味が高いことを改めて認識いたし

ました。そこで今回、本シンポジウムの内容を中心に小特

集を企画させていただき、このたび発刊に到りました。

当該分野の有識者の厳正な査読プロセスによる審査を

経て、本小特集では 8 件のフルペーパー(招待論文)を採

録いたしました。まだまだいろいろな技術がありますが、

長距離伝送用のデジタルコヒーレント技術関連から、

PAM4 などの比較的短距離伝送向けの技術関連、材料的に

も InP 系集積デバイスの電界吸収型変調器集積レーザや

コヒーレントレシーバからシリコンフォトニクス、さらに

多チャンネル光デバイスの実装技術とかなり幅広いトピ

ックがそろったものと思います。また、将来に向けた光信

号処理による変調フォーマット変換や直接変調レーザ高

速化の新たなアプローチも取り入れることができました。

本小特集が現在の 100~400Gb/s 伝送に用いられる光デ

バイス技術の状況を把握する足がかりになるとともに、増

大し続けるデータ伝送量に対応していくための今後の技

術のさらなる発展を考えていくきっかけになれば幸いで

す。

最後に、本小特集に貴重な成果を投稿いただいた著者の

皆様に感謝いたしますとともに、お忙しい中しっかりとし

た査読をしていただいた査読委員の皆様と、小特集をとり

まとめていただいた編集幹事と編集委員の皆様、さらには

学会事務局の方々に心よりお礼を申し上げます。皆様のお

かげで無事発刊することができました。

小特集編集委員会(敬称略)

委員長:山本剛之(富士通研)

幹事 :片桐崇史(東北大)

委員 :秋本良一(産総研)、梅沢俊匡(NICT)、

北谷健(日本オクラロ)、田邉孝純(慶応大)、

名田允洋(NTT)、西村公佐(KDDI 総研)、

丸山武男(金沢大)、宮本智之(東工大)、

江川隆輔(東北大/リエゾン委員)

著者略歴:

1990 年東京工業大学大学院電気・電子工学専攻修士課程修了、

同年株式会社富士通研究所入社。以来、半導体レーザを中心とし

た光通信用の光半導体デバイスの研究開発に従事。2000~2001

年、独ハインリッヒ・ヘルツ研究所客員研究員。1996 年度学術奨

励賞受賞。2017 年度レーザ・量子エレクトロニクス研究専門委員

会委員長。

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【報告】

「エレクトロニクスシミュレーション(EST)研究専門委員会の 活動状況」 (エレクトロニクスシミュレーション研究専門委員会 委員長)

平田 晃正(名古屋工業大学)

EST 研は、本技術領域のさらなる活性化に向け、積極的

に各種イベントのベンチマークを実施、研専活動項目のス

クラップ&ビルドを進め、参加者の方に有益な情報および

機会をタイムリーに提供できるようにしていきたいと考

えています。特に、昨年度の EST 研活動状況でご報告し

ているように(2018 年 4 月号)、技術分野を超えた連携を

強化、従来の枠組みに捉われない「広義のシミュレーショ

ン技術」という観点から産学界および社会へ貢献すべく活

動を推進していきたいと思っております。

昨今では、第 4 の科学的手法といわれる「データ科学」

が脚光を浴びており、第 3 の科学的手法と言われて久しい

「計算科学」は少し古い印象をもたれる方もいるかもしれ

ません。現在のシミュレーション技術は、特定分野の高精

度化、大規模計算の高速化、最適化による問題解決、さら

には他分野との融合による新分野への展開が実現できる

と考えられます。実際、EST 研においてもシミュレーショ

ンとデータ科学の融合分野でセッション企画をすると多

くの聴講者が集まっています。

科学を歴史的に考えると、第 1 の科学「経験科学(実験)」、

第 2 の科学である「理論科学」は計算科学の実証にはなく

てはならない、より本質的なものと言えます。ただ、莫大

な実験を実施することは困難な場合も多く、シミュレーシ

ョンにとって代わっています。他にも囲碁等のゲームでシ

ミュレーションによって人工的にビッグデータを生成し、

それを学習するアプローチが注目され、近年では極めて有

用な成果が出るようになりました。

エレクトロニクス分野における設計の現場では、市販の

ソフトウェアにも最適化が組み込まれ、単独で動作するデ

バイスの設計等には(最適化された市販のソフトウェアだ

けで)事足りる場合もあるでしょう。しかし、システムや

パッケージ化など複数の要素が絡んでくると、要求仕様の

実現は、困難を極める場合が少なくありません。このよう

な場合に、大規模なシミュレーションは必要不可欠な技術

です。さらに実験の高精度化、理論科学の成熟、計算科学

の高度化、さらにはデータ科学との融合が進めば、現場に

おける確度の高い推定を実現できるようになり、ますます

問題解決できる領域が広がるでしょう。今後のより大きな

枠組みのシミュレーションにおいて、EST 研をプラットフ

ォームとして活用いただきたいと考えています。

2018 年度の取り組みとして、7 月に主幹研究会として開

催した光・電波ワークショップ(合同研究会)において、

合同セッションを開催、類似した分野の講演を聞く機会を

増やし、分野の融合を促進しました。また、若手育成を目

的とした第 2 回ソフトウェアコンテストを開催しました。

第 1 回(昨年度)からの意見をもとに、継続的改善を行い

ながらの開催となります。具体的には、広帯域インピーダ

ンス変成器の最適化設計プログラムの開発を課題として

の実施となりました。

2019 年度の研究会開催は以下の通りとなりますが、加

えて、上記ソフトウェアコンテストなどのイベントを企画

していきます。詳細や今後の予定は以下をご参照ください。

http://www.ieice.org/~est/

5 月 17 日 名古屋工業大学(単独開催)

7 月 18, 19 日 函館(MW、EMCJ 研と共催)

10 月 24, 25 日 東北学院大学(MW、EMCJ 研と共催)

1 月未定(単独開催)

著者略歴:

1996 年阪大・工・通信卒。2000 年同大学院博士課程了。博士

(工学)。同年阪大・工・助手。2004 年名工大・准教授、現在教

授、2019 年より同大学先端医用物理・情報工学研究センター・セ

ンター長。生体電磁気学、計算物理学、アンテナなどに関する研

究に従事。2014 年本会論文賞、2017 年同エレクトロニクスソサ

イエテイ賞、2018 年日本学士院学術奨励賞および日本学術振興会

賞など各受賞。本会、IEEE および英国物理学会 Fellow。

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【報告】

「“あなたの LQE 研究会”とのめぐり逢いを!」 (LQE 研究会のご紹介)

LQE 研究専門委員会 委員長 浜本 貴一(九州大学)

本稿では LQE(レーザ・量子エレクトロニクス)研究専

門委員会の魅力についてご紹介いたします…と、大上段に

書き出していますが、実を言えば私も本格的 LQE 歴一年

目。ですので本稿は、あくまで私個人の“新人的”視点か

らのご紹介です。LQE 研究会の魅力の一端をお伝えし、本

稿が、“あなた”にとって“参加したい!”、と思っていた

だける一助になれば、と願って以下ご紹介します。

1.新たな出会いがあります -地方開催編 1-

LQE 研究会と言えば、まずはこの温泉シリーズでしょ

うか? 2018 年度 5 月研究会の開催場所は何と、あわら

温泉(福井)でした!

この研究会は、レーザー学会との共催で行われ、普段あ

まりお会いすることの無かった方々とも初めて議論させ

て頂きくことができ、新たな出会いとなる貴重な機会にな

りました。しかも、この研究会が無ければ、恐らく私にとっ

ては一生行くことの無かったであろう、あわら温泉!まさ

に新たな出会いでした。温泉場につきものの宴会場や温泉

でも、“熱い!?”議論が繰り引き続き広げられ、忘れら

れない研究会の一つになりました。

2019 年度の 5 月研究会は、琵琶湖のほとりでの開催が

決まっています。

2.激論、そして仲良く! -地方開催編 2-

夏の研究会は何といっても北国シリーズ!でも、それだ

けではありません。この研究会では、激論必死の目玉企画

がありました。

クロスセッション“400Gps を決めるのはデバイスか実

装なのか”、“変調器に最も適した材料は何か”という、光

デバイス研究者・技術者としては、誰もが気になる(そし

て一家言ある)テーマが掲げられ、熱い議論が戦わされま

した。この魅力的かつ刺激的なセッションが起爆剤となり、

相当活発な研究会となりました。もちろん、激論の後は北

海道の幸で”ノーサイド“。これも研究会の魅力でしょう。

2019 年度の“北国”シリーズは、東北大(仙台)で行わ

れる予定です。

5 月合同研究会にて(あわら温泉)

7 月合同研究会にて(北大)

5 月合同研究会にて(あわら温泉)

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3.スーパースターとの出会い!

年を締めくくる 12 月研究会は、2018 年度から PDW

(Photonic Device Week)と新たに名打たれ、ISLC ポスト

カンファレンスとして国内外からスーパースターにお越

し頂くことにもなりました。特に、何といっても瑞宝重光

章を受章された伊賀先生のご参加・ご講演が、この研究会

のハイライトの一つでした。

そして、海外からも招待講演者が来るなど豪華メン

バーの顔触れと一緒に参加・議論することもできまし

た。

4.まとめに代えて

ここまで、2018 年度に開催された研究会のほんの一部

をご紹介させて頂きましたが、LQE 研究会の魅力をお伝

えできましたでしょうか?

もちろん、このような素晴らしい研究会が運営できるの

も、研究会に積極的に参加して頂いている皆様のおかげで

あります。そして、企画・運営にご尽力頂いている研究会

幹事の皆様によるところが大きいことは、言うまでもあり

ません。本稿を締めくくるにあたり、幹事さんに感謝状を

お渡している写真を掲載させて頂き、本稿のまとめに代え

させて頂きます。皆さん、どうも有り難うございました。

著者略歴:

1988 年早大修士課程修了。2000 年スイス連邦工科大学博士課

程修了。1988 年 NEC 光エレクトロニクス研究所研究員。1996~

1997 年スイス連邦工科大学客員研究員。2005 年より現職(九州

大学教授)。光通信用半導体光デバイス、光導波路、光スイッチ、

半導体光アンプ、半導体レーザ及びその製造技術、並びに光セン

シング関する研究開発に従事。アクティブ MMI レーザ発明者。

電子情報通信学会シニア会員、応用物理学会会員、IEEE シニア会

員、OSA ライフフェロー会員。2009 年度電子情報通信学会光エ

レクトロニクス(OPE)研究会委員長、2018 年度同会レーザ・量子

エレクトロニクス(LQE)研究会委員長、2018 年度同会フォトニク

ス技術領域委員会委員長。国際会議 MOC/ECIO2014 TPC 委員長、

MOC’15 TPC 委員長、MOC’18 運営委員長、OECC/PS2016 TPC 委

員長、OECC/PSC 2019 運営委員長。

12 月合同研究会にて(慶応大)

12 月合同研究会にて(慶応大)

2 月研究専門委員会にて(感謝状贈呈の様子)

7 月合同研究会の懇親会にて

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【報告】

「光エレクトロニクス研究専門委員会活動報告」 (光エレクトロニクス研究専門委員会 委員長)

佐藤 功紀(古河電気工業株式会社)

光エレクトロニクス(OPE)研究専門委員会は、光通信

技術を支える光ファイバや各種光デバイスを主な研究ス

コープとして活動しており、電子情報通信学会の中でも歴

史の長い活動をしている。OPE 研究専門委員会に残る記

録には昭和 38 年より委員長や幹事団の名簿が記載されて

おり、今日の情報通信社会の発展を支える研究分野である。

具体的な活動は、加藤前委員長によるエレソニュースレ

ター報告(1)や OPE 研究専門委員会の HP(2)をご参照い

ただきたい。本報告では OPE 研究専門委員会の特徴的な

活動、特に、若手研究者の教育、表彰による活性化の取り

組みやエレクトロニクスソサイエティ活性化のため導入

されたフォトニクス技術領域委員会(3)の連携強化の一環

として 2018 年 12 月に開催された Photonics Device

Workshop について報告したい。

OPE 研究専門委員会では、他の研究専門委員会に先駆

けて 2006 年度より「学生優秀研究賞」を創設し、OPE 研

究専門委員会の主催する研究会に投稿、発表した学生の中

から毎年 3 名程度の優秀な研究論文につき表彰を行って

いる。創設当初は 5 月研究会にて受賞者の表彰会を実施し

ていたが、現在では 3 月の総合大会内のセッションとして

表彰会を実施しており、よりモチベーションが上がるよう

にしている。

また、2012 年度からは 4 月研究会を OPE 研究専門委員

会単独で二種研究会として、企業等の若手研究者・学生を

中心とした合宿形式で開催し、学生によるポスター発表の

コンペティションを中心に、若手研究者同士での情報交換、

企業の方との交流、著名な研究者による講演会等を企画し

ている。2018 年 4 月研究会はニューウェルシティー湯河

原にて 4 月 26 日~27 日に開催され、初日は若手研究者・

学生ポスター発表会を実施し、優秀な学生発表に「優秀学

生プレゼン賞」を授与した。また、夜のランプセッション・

交流会では、アルコールも多少入り「博士課程」について

熱い議論を戦わせた。2 日目は、基調講演として技術ジャ

ーナリストの西村吉雄様より「『イノベーション=技術革

新』ではない」、招待講演として、玉川大学の谷澤健様、

東京工業大学・アンビションフォトニクス(株)の顧 暁

冬様という、各々転職、起業を経験されたお二方に講演を

していただき、若手だけではなく参加者全員大いに刺激を

受けた。

2 つ目の特徴的な取り組みとしては、フォトニクス技術

領域委員会の連携強化の一環として 2018 年 12 月 6 日~7

日に慶應義塾大学三田キャンパスにて、レーザ・量子エレ

クトロニクス(LQE)研究会、シリコンフォトニクス(SiPH)

特別研究専門委員会、半導体レーザ国際会議(ILSC)国

内委員会と共同で第 1回の Photonics Device Workshopを開

催した。プログラムは、LQE の奨励賞授賞式及び記念講

演、伊賀健一東工大名誉教授による瑞宝重光章受章記念講

演、2 件の大川賞受賞記念講演、ISLC ポストカンファレ

ンス、OPE 研究専門委員会の企画としては学生・若手研

究者による英語ポスターセッション(優秀ポスターを 4

件表彰)、SiPH は海外からの講演者を含む 6 件の招待講演

と、盛り沢山の企画により 2 日間で延べ 200 名以上の参加

者が集まり大変盛況な研究会となった。尚、2 日間を通じ

全部英語でのセッションであったことは特筆に価する。学

生も積極的に参加していただき、大変有意義な研究会とな

った。図 1 に参加者による記念撮影を示す。

図 1 Photonics Device Workshop 参加者の記念撮影

表 1 と図 2 に 2019 年度の OPE 研究会開催予定を示す。

ほぼ例年通りの企画にて 8 回の研究会開催を予定してい

る。また、3 月と 9 月の全国大会では、通常のセッション

も LQE と合同セッション導入により聴講者の利便性を図

ると共に、3 月総合大会(早稲田大)では 2 件のシンポジ

ウム「高速光変調技術のブレークスルー」(OPE 主管、

LQE,IPDA 共催)、「空間分割多重伝送システム用光デバイ

ス技術」(OCS 主管、EXAT,OPE 共催)を企画した。

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表 1 2019 年度 OPE 研究会開催予定

4/25~26 伊香保温泉 学生中心の 2 種研

5/13 機械振興会館 OFC 報告

7/19~20 函館(仮) 光・電波ワークショップ

8/22~23 東北大学 LQE/CPM/EMD/R 研共催

10/17~18 鹿児島 OCS/LQE 共催

11/11 機械振興会館 ECOC 報告

12/5~6 早稲田大学 Photonics Device Workshop

2/27~28 沖縄(仮) OCS/OFT 共催

図 2 2019 年度 OPE 研究会開催予定と開催地

OPE 研究専門委員会では、今後も魅力ある研究会を企

画していきますので、ご期待下さい。是非、積極的なご投

稿、ご参加を宜しくお願い致します。また、専門委員以外

からも企画の提案をはじめご意見等を随時受け付けてお

りますので、どしどしお寄せ下さい。

参考文献

(1)浜本貴一,“フォトニクス技術領域委員会の活動紹介,” 信

学会ニュースレター,Vol. 171, 2018 年 10 月

http://www.ieice.org/es/jpn/newsletters/pdf/171/NewsLetter2018_10_ki

kou.pdf.

(2)http://www.ieice.org/~ope/ope/

(3)加藤和利,“光エレクトロニクス研究専門委員会の活動報

告,” 信学会ニュースレター,Vol. 169, 2018 年 4 月

http://www.ieice.org/es/jpn/newsletters/pdf/169/NewsLetter2018_04_h

oukoku.pdf.

著者略歴:

1988 年東京工業大学修士課程修了、同年古河電気工業株式会社

入社。電子情報通信学会、応用物理学会会員。2002 年より光エレ

クトロニクス(OPE)研究専門委員、2005~2006 年度幹事、2008

年エレソ活動功労賞、2012 年シニア会員、2017 年 OPE 副委員長、

2018 年度 OPE 委員長、フォトニクス技術領域委員会副委員長。

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【報告】

「量子情報技術(QIT)特別研究専門委員会報告」 (量子情報技術特別研究専門委員会 第 10 期委員長)

竹内 繁樹(京都大学)

量子情報技術時限研究専門委員会は 1998年 11月に発足

し、この第 10 期より特別研究専門委員会と名称が変更さ

れ現在に至っている。本特別研究専門委員会は情報科学と

量子力学を融合させた分野としての量子情報科学の発展

を目的としている。1999 年以来、年 2 回量子情報技術研

究会を開催し、数学、情報科学、物理学、エレクトロニク

ス等の様々なバックグラウンドを持ち、理学、工学、数理

科学に携わる研究者間に自由な討論の場を提供してきた。

研究会では毎回活発な研究発表・討論が行われているほか、

研究会資料(予稿集)の刊行を行っている。今回は、以降

これまでに開催した第37回および第38回研究会について

報告する。各回の概要は以下のとおりである:

●第 37 回研究会 2017 年 11 月 16(木)~17 日(金)

埼玉大学 総合研究棟

一般口頭発表(14 件)、ポスター発表(16 件)

参加者 一般 57 名 学生 51 名 合計 108 名

【招待講演(4 件)】

小坂英男(横国大)“ダイヤモンドへの量子テレポーテー

ション転写と万能ホロノミック量子操作~量子系の機械

学習による最適量子操作の試み 量子情報通信への応用~”

添田彬仁(東大)“高階量子情報処理の最近の展開”

古澤明(東大)“Hybrid quantum information processing: A

way for large-scale optical quantum information processing”

森前智行(群馬大)“セキュアクラウド量子計算”

●第 38 回研究会 2018 年 6 月 4(月)~5 日(火)

広島国際会議場 小会議室ラン

一般口頭発表(29 件)、ポスター発表(26 件)

参加者 一般 77 名 学生 35 名 合計 112 名

【招待講演(3 件)】

山本喜久(科学技術振興機構 ImPACT プログラムマネー

ジャー)“量子-古典クロスオーバーの物理から見た量子

ニューラルネットワーク”

野口篤史(東京大学)“表面弾性波がつなぐ光と超伝導回

路”

藤原幹生(NICT)“量子通信にむけた超小型衛星-地上

間での光通信実験”

【チュートリアル講演(1 件)】

南部保貞(名古屋大学)“宇宙論とエンタングルメント”

これらの招待講演やチュートリアル講演のタイトルか

らも本研究会の間口の広さ、奥行きの深さを感じていただ

けるのではないかと思う。また、第 38 回は、実行委員の

先生方のご努力により、公益財団法人 中国電力技術研究

財団の助成のもと、広島市の中心部、平和記念公園内での

開催となり、アクセス・環境の両面ですばらしい会となり、

最先端の成果と、主要国際会議と比しても同等かそれ以上

に、極めて深く興味深い学術的な議論がなされた。そのよ

うな議論が、(主に)日本語で聞けるのも本研究会の魅力

である。その後、2018 年 11 月 26 日(月)~27 日(火)に東京

大学駒場リサーチキャンパスで開催された第 39 回研究会

については、次回に報告させて頂く予定である。

なお、第 40 回研究会は 2019 年 5 月 20 日(月)~21 日(火)

に九州大学において開催を予定している(詳細は “QIT40”

で検索)。光・量子技術は、現在内閣府の統合イノベーシ

ョン戦略(平成 30 年 6 月 15 日閣議決定)においても強化

すべき分野に挙げられるなど関心が高まっている。新たに

興味をもたれた皆様のご参加をお待ちしている。

著者略歴:

1993 年京都大学大学院理(物理)修士修了、同年三菱電機(株)入社

中央研究所。1999 年北海道大学電子科学研究所講師、2000 年同

助教授、2007 年同教授、2014 年より京都大学大学院工学研究科

教授。2016 年 11 月から 2018 年 11 月まで量子情報技術特別研究

専門委員会委員。

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【報告】

「APMC 2018 国際会議報告」 (APMC 国内委員会 委員長)

古神 義則(宇都宮大)

APMC(Asia-Pacific Microwave Conference)は、欧米の

European Microwave Conference、IEEE MTT-S International

Microwave Symposium と並んで、アジア・太平洋地域での

マイクロ波工学の学術および技術交流の場を提供する世

界的なマイクロ波会議です。その歴史は 4 半世紀を超え、

2018 年 11 月 6 日から 9 日の 4 日間、節目となる 30 回目の

会議が京都国際会議場で開催の運びとなりました(写真 1)。

本誌面をお借りしまして、エレクトロニクスソサイエティ

関係者の皆様には、多大なるご協力とご支援を賜りました

こと、御礼申し上げるとともに、会議の概要についてご報

告致します。

写真 1 APMC 2018 プログラムブック

APMC は、1986 年に第 1 回会議が開催されてから、毎

年アジア・環太平洋の各国持ち回りで開催されています。

これまでの当番国は、インド、中国、日本、オーストラリ

ア、韓国、シンガポール、台湾、タイ、マレーシアです。

特に日本は、1990 年の東京池袋開催を皮切りに、1994 年

幕張、1998 年横浜、2002 年京都、2006 年および 2010 年

横浜、2014 年仙台、そして 2018 年京都と、他国を上回る

4 年に 1 回のペースでホスト国を務めています。畢竟、そ

れだけ諸国マイクロ波研究者の日本開催 APMC に対する

期待は高くなり、ローカルアレンジメントに携わる実行

委員会には相当のプレッシャーが掛かります。会議開催の

趣旨を練り、綿密な財務計画を立て、会議場の手配、論文

投稿査読・参加登録システムの構築、国際会議としての質

はもちろん、投稿論文数、参加者数を確保するための応

報・周知活動、ソーシャルイベントの充実など、もちろん

これは他の国際会議でも同様のことと思いますが、これま

で日本開催のAPMC実行委員会に携わってこられた方は、

大変な苦労をされてきたことと拝察します。

龍谷大学の石崎俊雄先生を長とする APMC 2018 実行委

員会においても、会議を成功裏に実施すべく、約 2 年の

間、念入りな準備がなされました。会議の基調コンセプト

は「Harmonious World Connected by Microwaves」です。日

本人も大切にする「和の精神」でマイクロ波技術による共

創社会を目指そう、というこのスローガンは、日本伝統文

化と現代社会の調和を目指す京都で開催される国際会議

にふさわしいものと思います。

このスローガンの下、周到な論文募集活動の結果、47

ヶ国から 864 件の投稿論文を得ました。この件数は、日本

開催の APMC としては過去最高のものとなりました。参

加登録者は 43 ヶ国から 982 名にのぼり、9 つのワークシ

ョップコース、4 つのショートコース、開会式(写真 2)、

20 の一般セッション(写真 3)、5 つのポスターセッショ

ン(写真 4)、企業展示、大学展示、学生設計試作コンテ

ストの他、歓迎レセプション、女性・若手技術者交流会、

いけばな体験などのイベントにもそれぞれ参加いただき

ました。

3 日目夜のバンケットでは、300 名以上の参加者が集ま

写真 2 開会式の様子

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写真 3 一般セッション

写真 4 ポスターセッション

写真 5 バンケットの様子

(左から石崎実行委員長、粟井組織委員長、真田 TPC 委員長)

写真 6 閉会式の様子

り会議の成功に祝杯をあげました(写真 5)。

閉会式(写真 6)では、選奨委員会の厳正なる審査の末

に選ばれた APMC 2018 Prize(4 名)と APMC 2018 Student

Prize(4 名)の受賞者が表彰され、成功裏のうちに本会議

のクライマックスを迎えることとなりました。

本会議には、マイクロ波関連企業を中心に、スポンサー

シップという形で多くのサポートを頂きました。さらに本

会議と連携し毎年開催される MWE(Microwave Workshops

& Exhibition)も含めると、産官学それぞれの関係機関・

企業からのご支援は多大なものとなります。また、実行委

員会への委員派遣、論文投稿という点でも、組織委員会を

中心にお声掛け頂き、多大なご協力を頂きました。個々の

実行委員におかれましても、本務の合間を縫いながら、全

くの手弁当で、しかも各自のこだわり、信念を持って会議

成功に向け、献身的にご尽力されていました。

私は、たまたま国内委員会責任者の任を承っただけのも

のでありますが、関係各位のご協力に深く感謝する一方で、

実行委員の一人一人のご努力に心より敬意を表し、お祝い

したいと存じます。

次回の日本開催のAPMCは 2022年に東京で開催される

予定です。来年には東京五輪が開催され、それを契機に良

い意味で新しい「東京」となることが期待されています。

APMC 2022 がそれに相応しい会議となるべく、APMC

2018 を含めたこれまでの経験を引き継いでいけるように

することが、現時点での APMC 国内委員会の任務です。

今後とも、関係の皆様方のご協力とご理解をお願いいたし

ます。

著者略歴:

1988 年埼玉大・工・電気卒。1990 年同大大学院修士課程了。

博士(学術)。1993 年同博士後期課程了。同年宇都宮大・工・電気

電子工学科助手。2001 年同助教授、2008 年同大学大学院工学研

究科准教授。2012 年同教授。2019 年より同大学工学部基盤工学

科教授。マイクロ波・ミリ波帯の誘電体共振器フィルタ、誘電率

計測に関する研究などに従事。電気学会、IEEE 各会員。

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【短信】研究室紹介

「複雑な電磁環境下での電子機器の共存を目指して」 電気通信大学大学院情報理工学研究科 萓野研究室

萓野 良樹(電気通信大学)

最近の電気電子機器は、高速化、小形軽量化などの点

で目覚ましい発展を遂げていますが、それらは、その基

盤技術としての電気・光信号の伝送、接触・接続技術等

の着実な進歩によって裏付けられています。その一方で、

高周波の電気信号を利用する機器は不要な電磁ノイズを

放射し、他の機器を妨害する可能性があります。そのよ

うな複雑な電磁環境の中でも機器を共存させて動作させ

ることが必要であり、そのための学問体系が電磁環境学

(Electromagnetic Compatibility: EMC)です。

当研究室は、2016 年 4 月に発足し、電気通信大学で同

じ EMC 分野をテーマとしている肖 鳳超教授の研究室と

密接に連携しながら、電気電子機器が複雑な電磁環境の中

でも共存して動作可能となる技術の確立を目指して、

EMC、特に高周波信号の伝搬や、不要な電磁波の発生メカ

ニズムの解明について、そして、EMC の研究を通じた伝

送線路などの最適設計や、高周波・広帯域用途の新しい信

号処理、機能集積回路に関する研究に取り組んでいます。

ここでは研究テーマの中から二つをご紹介します。

一つめのテーマは電子機器からの不要電磁放射の発生

メカニズムの解明とその抑制法の開発です。電子機器の形

態は多種多様であり、様々な観点での研究論文が最近の本

論文誌にも大変多く掲載されております。機器やプリント

回路基板(Printed Circuit Board: PCB)毎に異なった問題が

表面化しますが、基本的な電磁気現象には共通的原理があ

ると考えられます。当研究室では、単純化したモデルから

基本現象を明らかにし、EMC 問題の発生の源を明確にす

ること、もしくは解決の糸口を見つけるための徹底的な基

礎研究として、PCB 上およびその周辺に発生する EMC 問

題に関して単純化したモデルを構築して、高周波信号の品

質及び不要電磁放射問題について研究しています。いずれ

の見地で EMC 問題を扱うにしても、個々の問題をケース

スタディとして扱いつつも、EMC 問題の本質となる現象

を明確にするアプローチとなるように心掛けながら、最近

では GHz 帯の高周波を伝送するようになった伝送線路に

ついて、伝送信号の品質を保ちながら外部にノイズとして

放射される成分を小さくするためにはどのようにしたら

よいのかについて、構造や対策部品の最適設計を含めて研

究しています。単純なモデルから設計のルールの原則を知

ることや、得られた基本原理は、様々なモデルへの応用が

可能になり、電磁ノイズの対策が飛躍的に進展すると考え

られます。

二つめの研究テーマは障害フリー高機能電気接点の開

発です。電気接点は、電気回路の開閉または接触を機械的

に行う電気的素子であり、電気が利用される限り必要とさ

れるデバイスです。電気接点開離時に発生するアーク放電

現象は接点の電気的特性の品質を劣化させ、また回路シス

テムなどに誤動作を引き起こさせるような電磁ノイズを

発生します。このような弊害を抑え、さらには電気接点の

信頼性を高めるために、性能評価技術の確立、アーク放電

現象の解明を目指した研究を行っております。

基礎に立ち返った研究を通じて、技術のイノベーション

や、今後の社会の要求に答えるための研究開発の推進に貢

献できるように精進いたします。

肖研・萓野研合同ゼミ合宿(電通大菅平セミナーハウス)

著者略歴:

1999 年木更津高専電気工学科卒業。2001 年秋田大学鉱山学部

電気電子工学科卒業。2003 年同大学鉱山学研究科博士前期課程

修了。2006 年同大学工学資源学研究科博士後期課程修了。同年秋

田大学工学資源学部助手、助教、講師を経て、2016 年から電気通

信大学情報理工学研究科准教授。回路基板、電気接点の EMC 問

題に関する研究に従事。

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【お知らせ】

◆ エレソ News Letter 研究室紹介記事募集研究室紹介記事を募集します。

今年度も昨年度と同様に、【短信】研究室紹介のコーナーに一般公募記事の掲載も予定しております。

研究紹介の機会として奮って応募下さい。

*応募方法:タイトル、研究室名、連絡先(e-mail)を下記応募先までご連絡下さい。

応募多数の場合は選考の上、編集担当より、フォーマット書類一式をお送り致します。

*応募先:エレソ事務局(h-sakai@ieice.org)TEL:03-3433-6691

これまでの記事は、下記 URL エレソニュースレターのページに掲載されております。ご参考下さい。

< http://www.ieice.org/es/jpn/newsletters/ >

◆ エレソ News Letter の魅力的な紙面づくりにご協力下さい。

本 News Letter は、エレソ会長、副会長からの巻頭言や論文誌編集委員長、研究専門委員会委員長からの寄稿を中心

に、年 4 回発行しております。今後、さらに魅力的な紙面づくりを進めるため、エレクトロニクスソサイエティでは、

会員の皆様から企画のご提案やご意見を募集いたします。電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ事務局宛(詳

細は下記 URL)にご連絡をお願いいたします。

< http://www.ieice.org/es/jpn/secretariat/ >

◆ エレソ News Letter は年 4 回発行します。次号は 2019 年 7 月発行予定です。

編集担当:山脇、岡(企画広報幹事)、佐藤(編集出版幹事)、安藤(研究技術幹事)

[編集後記]

本誌の刊行にあたり、会員の皆様の多大なお力添えに深謝しております。本号では、新任フェローのお言葉、ELEX

活動状況報告、和文誌特集号の紹介、英文誌特集号の紹介、各国際会議報告、研究室紹介などをご寄稿いただきました。

今後も皆様に有益な情報を配信できるように努力して参りますので、ご協力よろしくお願いいたします。(岡)