TIC report - DaikinTICの展示からは、胸襟を開...

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32 Challenge 2018 Vol. 03 TIC report のがインターネットとつながる IoT、人工知能AIを活用したサー ビスの拡大を目指す「最適マネジ メント」。今やIoTやAI搭載の製 品は必要最低条件だが、問われる のはそのサービス内容だ。室内空 間における新たな価値サービスの 創出をめざす空気空間のデータを 活用した協創プラットフォーム 「CRESNECT」や、IoT、AIを活 用した空調ソリューションのコン セプトムービーを公開した。 「冷やす・温める」を超えて 個々人に応じた環境づくりを 「人がうれしい」は、エアコンデ ィショナーからヒューマンコンデ ィショナーへ、個々人に応じた環 境提供をする「冷やす・温めるを 超えた環境制御」。会場では、こ れを実現するための開発事例とし て、興味深い、二つのアイデアが 紹介された。 一つは、ストレスを感じない自 然環境を、空調などで再現しよう というものだ。自然豊かな場所に 立って我々が心地よさを感じるの は、全身で感じる気持ち良い風、 音、香り、澄んだ空気などに体が すっぽり包まれるからだ。こうし た空間を、さまざまなデータを分 析し、特徴をつかみながら空調な どで再現していこうとする。 展示されたのは「奥日光」の自 然の風。個々のファンを個別に制 御することで、風の「揺らぎ」 「やさしさ」などを作り出した。 実際の自然界では、風は強弱を繰 り返し、舞う。面積を変え、顔の 一部だけ、あるいは体全体を吹き 抜けるなど多様な姿を持つ風を、 どう再現していくか。技術開発に は、多くの分野の斬新な智恵が必 要になってくる。会場で提示され た試作品では、様々な角度から強 弱の異なる風が体や顔に当たり、 ひんやりしてさわやかな気分にな った。奥日光のほか、軽井沢、洞 爺湖、富良野など各地のデータも 集められている。 首、腰の温度調節を 自動で行う椅子「温調椅子」 もう一つは、「温調椅子」。座る だけで呼吸や心拍数、ストレスな どを測定するセンシング技術「エ アリトモ」を活用し、首、腰、座 面の温度調節を自動で行う椅子だ。 首元や腰元などにファンが内蔵さ れ、ストレスが多い、少ないなど の状態を判断し、適温の風をファ ンから送り出していく仕組み。体 験してみるとやさしい風が、首元 や腰に当たる。風量、温度は、季 節や個人の好みに合わせることが 可能で、手動で修正できる。担当 者は「特許を申請しているが、ま だまだ改善の余地はある。どうい うところで使うか、さまざまな分 野と連携してよりよいものにして いきたい」と、熱く話していた。 TICの展示からは、胸襟を開 き、様々な分野と協創して新たな イノベーションを起こそうとする 強い風が感じられた。 自然を感じる機会が減 っていく都市部で、自 然が感じられたら快適 では? このコンセプ トのトライアル製品と して、「自然風発生装 置」を展示。軽井沢や 那須高原などの自然の 風を計測し、ダイキン の空調技術でこれを再 現した。 快適って なんだ? 「人の状態」を検知するエアリトモを内蔵し、 座った人が快適な状態を作る「温調椅子」。腰 元、首元から風を出し、スマートフォンで好み の空調に変えることも可能。「個人の空調」を 考えるコンセプト提示の一つ。 パーソナル空調の実現 自然環境の完全再現

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32 Challenge 2018 Vol. 03 33

その他論文の表題 学会誌/講演会名 発表日大記録容量 光ディスクを目指したナノ秒パルス高速光記録材料 日本オプトメカトロニクス協会での講演 2018 年 3 月まぶた揺らぎ特徴量による低フレームレート顔映像からの眠気推定 2018年電子情報通信学会総合大会 2018 年 3 月インバータエアコンにおけるEMSシミュレーション 平成30年電気学会全国大会 2018 年 3 月水中放電技術による殺菌効果とバイオフィルム除去効果 日本薬学会第138年会 2018 年 3 月実稼働TPA法を用いた空調機器室外機の高寄与音源の特定 日本音響学会 2018年春季研究発表会 2018 年 3 月マンチェスターにおけるスマートコミュニティの実証 冷凍空調分野に使えるIoTの最前線と導入事例

-基礎から応用まで-2018 年 2 月

「人」と「空気」のデータに対する数学活用について 数学者と産業界の協働のケーススタディの体験発信と共有のための公開シンポジウム

2018 年 1 月

モータ用永久磁石の3次元減磁分布測定手法の開発 JMAGユーザー会2017 2017 年 12 月テトラフルオロエチレン/ビニルアルコール共重合体のガスバリア評価 第26回ポリマー材料フォーラム 2017 年 11 月超撥水性と耐摩耗性とを両立したフッ素系高分子薄膜の調製 第40回フッ素化学討論会 2017 年 11 月SF4の新規合成法とそれを利用したワンポットでのフッ素化方法 第40回フッ素化学討論会 2017 年 11 月長期使用に耐えるフッ素樹脂製ガスケットの構造設計 プラスチック成形加工学会第25回秋季大会 

成形加工シンポジア'172017 年 11 月

R452Bを用いた空調機の冷房性能評価 2017年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2017 年 9 月空調機向け次世代冷媒評価のためのシミュレーション 2017年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2017 年 9 月挙動の可視化によるスイング圧縮機ブッシュ部の隙間計測 2017年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2017 年 9 月低GWP冷媒を用いたビル用マルチエアコンの性能評価 2017年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2017 年 9 月空調用マイクロチャネル熱交換器の冷媒分流技術開発 2017年度 日本冷凍空調学会 年次大会 2017 年 9 月D:A1:A2三元系発電層を用いた逆型有機薄膜太陽電池の大気中作製 2017年 第78回応用物理学会秋季学術講演会 2017 年 9 月電界印加成膜した有機焦電センサの高感度化メカニズムの解明 2017年 第78回応用物理学会秋季学術講演会 2017 年 9 月低騒音プロペラファン開発に活かすCFD STAR Japanese Conference 2017 2017 年 7 月

国際会議論文の表題 学会誌/講演会名 発表日Autonomous Fault Detection and Root Cause Analysis for VRV Systems

NSF I/UCRC Intelligent Maintenance Systems(IMS) Center 34th Industry Advisory Board(IAB) Meeting 2018

2018 年 1 月

Demand Response by optimization of flexible Air Conditioning capacity the 72º meeting of the International Energy Agency Renewable Energy Working Party(IEA/REWP)

2017 年 10 月

Development of Three-dimensional Measurement Technique for Demagnetization Distribution in Permanent Magnets of Motors

5th Japan-U.S. Bilateral Meeting on Rare Metals 2017 年 10 月

National Team 2017 Lessons from the Greater Manchester Smart Energy Project.

IEA National Teams Meeting for the UK Heat Pump Industry

2017 年 9 月

High Voltage Sensitivity of Organic Pyroelectric Sensors with Polarization Treatment during Evaporation Process

2017 International Conference on Solid State Devices and Materials

2017 年 9 月

Research for Indoor and Outdoor PM Concentration in Asian Countries Healthy Buildings 2017 Asia 2017 年 9 月

学術論文論文の表題 学会誌/講演会名 発表日冷房空調負荷広域におけるR452Bを用いた空調機の性能評価 日本冷凍空調学会論文集Proceedings of the

JSRAE Annual Conference, C321-1-6, 20172017 年 11 月

空調機用ターボ圧縮機における磁気軸受の高軸支持力化 第220回定例研究会パワーエレクトロニクス学会誌 Vol.43

2017 年 11 月

アクティブバッファ付き単相-三相電力変換器の電圧利用率を改善する電力制御法

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)137巻 (2017) 2号 112-118

2017 年 4 月

空調用インダイレクトマトリックスコンバータの実用化技術 (誤記訂正のため再掲)

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)136巻 (2016) 7 号 471-478

2016 年 7 月

社内の部門を超え、会社の枠を超え、相互に作用し合うことによってイノベーションを巻き起こそうと挑戦する。TICで2017年4月から2018年3月までに発表された研究の一部を紹介してみよう。これからも新たな技術開発テーマの “協創” を目指すために。

最近のおもな社外発表

TIC report

のがインターネットとつながるIoT、人工知能AIを活用したサービスの拡大を目指す「最適マネジメント」。今やIoTやAI搭載の製品は必要最低条件だが、問われるのはそのサービス内容だ。室内空間における新たな価値サービスの創出をめざす空気空間のデータを活用した協創プラットフォーム

「CRESNECT」や、IoT、AIを活用した空調ソリューションのコンセプトムービーを公開した。

「冷やす・温める」を超えて 個々人に応じた環境づくりを

「人がうれしい」は、エアコンディショナーからヒューマンコンディショナーへ、個々人に応じた環境提供をする「冷やす・温めるを超えた環境制御」。会場では、これを実現するための開発事例として、興味深い、二つのアイデアが紹介された。 一つは、ストレスを感じない自然環境を、空調などで再現しよう

というものだ。自然豊かな場所に立って我々が心地よさを感じるのは、全身で感じる気持ち良い風、音、香り、澄んだ空気などに体がすっぽり包まれるからだ。こうした空間を、さまざまなデータを分析し、特徴をつかみながら空調などで再現していこうとする。 展示されたのは「奥日光」の自然の風。個々のファンを個別に制御することで、風の「揺らぎ」

「やさしさ」などを作り出した。実際の自然界では、風は強弱を繰り返し、舞う。面積を変え、顔の一部だけ、あるいは体全体を吹き抜けるなど多様な姿を持つ風を、どう再現していくか。技術開発には、多くの分野の斬新な智恵が必要になってくる。会場で提示された試作品では、様々な角度から強弱の異なる風が体や顔に当たり、ひんやりしてさわやかな気分になった。奥日光のほか、軽井沢、洞爺湖、富良野など各地のデータも集められている。

首、腰の温度調節を 自動で行う椅子「温調椅子」

 もう一つは、「温調椅子」。座るだけで呼吸や心拍数、ストレスなどを測定するセンシング技術「エアリトモ」を活用し、首、腰、座面の温度調節を自動で行う椅子だ。首元や腰元などにファンが内蔵され、ストレスが多い、少ないなどの状態を判断し、適温の風をファンから送り出していく仕組み。体験してみるとやさしい風が、首元や腰に当たる。風量、温度は、季節や個人の好みに合わせることが可能で、手動で修正できる。担当者は「特許を申請しているが、まだまだ改善の余地はある。どういうところで使うか、さまざまな分野と連携してよりよいものにしていきたい」と、熱く話していた。 TICの展示からは、胸襟を開き、様々な分野と協創して新たなイノベーションを起こそうとする強い風が感じられた。

自然を感じる機会が減っていく都市部で、自然が感じられたら快適では? このコンセプトのトライアル製品として、「自然風発生装置」を展示。軽井沢や那須高原などの自然の風を計測し、ダイキンの空調技術でこれを再現した。

快適ってなんだ?

「人の状態」を検知するエアリトモを内蔵し、座った人が快適な状態を作る「温調椅子」。腰元、首元から風を出し、スマートフォンで好みの空調に変えることも可能。「個人の空調」を考えるコンセプト提示の一つ。

パーソナル空調の実現

自然環境の完全再現