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膽 嚢 穿 孔 ニ ヨル膽 汁 性 腹 膜 炎 ニ就 テ

岡山醫科大學津田外科教室(主 任津田教授)

菅 龍 正

[昭和10年2月12日 受稿]

Aus der chirurgischen Klinik der Okayama Medizinischen Fakultat

(Vorstand: Prof. Dr. Seiji Tsuda).

Uber die gallige Peritonitis infolge von der Gallenblasenperforation.

Von

Tatsumasa Suga.

Eingegangen am 12. Februar 1935.

Es handelte sich um eine kleine, aber

kraftig gebaute 60 jahrige Frau. Seit 35

Jahren klagte sie jedes Jahr einige Male

uber Epigastrialschmerzen, die nach dem

Rucken ausstrahlten und bisweilen von

Erbrechen und Fiebergefuhl begleitet

waren. Ikterus trat jedoch niemals dabei

auf. Der Anfall pflegte bei Ruhe nach-

zulassen. Am 3. August 1934 klagte sie

nach korperlicher Arbeit uber einen

heftigeren Schmerzanfall, der durch

Morphin-Injektion nicht erleichtert wurde.

Einige Tage danach wurde sie in die

Klinik aufgenoinmen.

Der Bauch war flach und eine peristal

tische Unruhe nicht nachweisbar. An der

rechten Epigastrialgegend fand sich eine

handtellergrosse, druckempfindliche Re

sistenz. Der Ikterus wurde auch diesmal

nicht bemerkt. Harnbefunde: frei.

Leukozytenzahl: 10,500. Fieber: 38.0•Ž.

Puls: mittelgross, regelmassig, etwas

frequent, aber gut gespauut. Diagnose:

Cholezystitis.

Bei der Operation am 9. August

wurde eine gallige Peritonitis infolge von

Perforation der Gallenblase festgestellt;

diese kam durch Cholezystektomie zur

Heilung.

In der exstirpierten Gallenblase fand

man keine Stein. Die Blase war sehr ver

gressert und verdickt. In ihrer Wand

waren mehrere Abszesse vorhanden, in

der hiuteren Wand war eine mittelgrosse

lochartige Perforationsstelle sichtbar, die

durch den steigenden Innendruck der

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Blase bis zur Perforation eines intramu

ralen Abszesses gebracht worden war.

Als Behandlung soll die Cholezys

tektomie so fruh wie moglich ausgefuhrt

werden. Da aber die Stellung einer

Fruhdiagnose sehr schwierig ist, so wird

die Operation im allgemeinen zu spat

vorgenommen. (Autoreferat.)

内 容 目 次

第1章  緒 言

第2章  症 例

第3章  穿孔原因

第4章  臨牀的事項

第5章  總 括

主要文獻

第1章  緒 言

膽嚢 穿 孔 ニ ヨル腹膜 炎 ハ他 ノ腹 腔 内諸 臓器

穿 孔殊 ニ蟲樣 突 起 穿孔 又 ハ 胃,十 二 指腸 潰瘍

穿 孔 ノ ソ レニ比 シテ稀 有 ナ ル疾 患 ナ リ.

尚 ホ膽嚢 疾 患 中 ニ於 テ モ比 較 的 稀 有 ニ見 ル

モ ノニ シテ, Mc. Williams氏 ノ統 計 的觀 察

ニ ヨ レバ 膽道,膽 嚢 ノ手 術3180例 中 其 ノ穿 孔

ハ29例 即 チ0.9%, D . Rona氏 ニ ヨ レバ101

例 ノ膽嚢 手術 中7例 ニ於 テ膽嚢 穿 孔 ヲ認 ノ,

Edward氏 ニ ヨ レバ1270例 ノ膽嚢 手術 例 中

穿 孔16例 即 チ1.2%, Blandstein氏 ノ調 査 ニ

ヨ レバ572例 ノ膽 石症 手術 例 中穿 孔3例 即 チ

0.5%ニ 過 ギ ズ ト.

内外 ノ文獻 ヲ渉 獵 スルレニ,諸 外 國 ニ於 テハ

1893年V. Bardelebenノ 報 告 ニ始 マ リ,以

來 其 ノ報 告尠 ナ カ ラザ レ ドモ,本 邦 ニ於 テハ

1909年 始 メ テ近 藤 氏 ノ報 告 セ ル1例 ヲ見,以

來原 田永 之 助 氏(1921),鷹 津 氏(1921),松 尾

氏(1929)ノ 各 々1例,坂 井 氏(1930),友 田 氏

(1932)ノ 各 々2例,戸 田氏(1931),森 氏(1931)

及 ビ原 田 篤行 氏(1932),大 島 氏(1934),龜 谷

氏(1934)ノ 各 々1例 等 ニ シテ,未 ダ 尚 ホ寥 々

タ ル モ ノ ナ リ.

然 ル ニ余 ハ最近 斯 ル稀 有 ナ ル本 症 ノ1例 ニ

遭 遇 シ,而 モ幸 ヒ手 術 ニ ヨ リ之 ヲ治 癒 セ シメ

得 タ レバ,爰 ニ其 ノ症 例 ヲ追 加 報 告 シ,併 セ

テ文獻 ヲ渉獵 シ,本 症 ノ穿 孔原 因及 ビ臨 牀 的

事項 ニ就 キ述 プル所 ア ラン トス.

第2章  症 例

患者 坂○ る○  60歳  農家婦

初診  昭和9年8月3日

入院  同 年8月4日

退院  同 年9月25日

主訴  上腹部疼痛

家族歴

父系祖父70歳,祖 母:88歳 ニシテ共 ニ老衰 ノタ

メニ死亡 セ リ.母 系祖 父72歳,祖 母68歳 ニシテ

共 ニ老衰 ニテ斃 ル.父 ハ57歳 ノ時溺死 シ,母 ハ

66ノ 時腦溢血 ニテ死亡セ リ.同 胞2人,第1子

ハ女性,本 患者ニ シテ,第2子 ハ男性, 52歳 ノ時

丹毒 ニテ死亡セ リ.夫 ハ62歳 ニテ尚ホ健在ナ リ.

子供 ハ2人,第1子 ハ女性, 31歳 ニテ健存,第2

子モ女性, 20歳 ノ時腹膜炎 ニテ死亡セ リ.

遺傳的關係 ニ於 テ認ム可キモ ノナ シ.

既往症

患者ハ正規分娩兒 ニシテ母乳榮養兒 ナ リ.種 痘

ハ1囘 受 ケ善感 ナ リ.幼 時麻疹 ヲ經過 セル外,兒

童期 ヲ通 ジ著患 ヲ知 ラズ.月 經ハ初 經15歳 ノ春.

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終經49歳 ニ シテ 共 ノ間 多 クハ整調 ニ來經 セリ ト

言 フ. 28歳 ニシテ健康 ナル男子 ト結婚 セ リ.昨 年

8月 初旬所謂 「作州熱」ニ冐サ レタ リト云 ラ.

酒,煙 草共 ニ少量宛嗜 ム.

現病歴

25歳 ノ頃即 チ約35年 以前 ヨ リ毎年1或 ハ2囘,

春或ハ秋 ニ於 テ上腹部疼痛ア リ.其 ノ疼痛 ハ背部

ニ放散 セ リト云 へ リ.其ノ時黄疸 ヲ認 メザ ルモ屡々

嘔 吐及 ビ發熱感 ア リキ ト.常 ニ鎭痛劑注 射 ニヨ リ

其 ノ疼痛 ヲ輕快 セシメタ リ.コノ發作 ノアル20日

前頃 ヨ リ患煮ハ シキ リト間食 ヲ欲ス ト. 2, 3年 前

ヨ リ1年 約3囘 ノ疼痛發作アルニ到 レ リ.本 年7

月25日 頃即 チ約10日 前 ニ同樣 ニ上腹部疼痛ア リ.

嘔氣ハ多少ア レ ドモ嘔 吐ナ シ.且 發熱感ア リ.而

シテ今度 ノ疼痛 ハ注射 ニ ヨリ充分輕快 セザ リキ.

然 レ ドモ安靜ニ ヨリ稍 々平靜 ニ復 シタル ヲ以テ,

8月2日 眼疾患ア リシタメニ當病院眼科 ニ入院 ス.

其 ノ時身體 ヲ動 カセシニヨル カ, 8月3日 夕方,上

腹部疼痛ハ劇 烈 トナ リ.其 ノ疼痛ハ持續的 ニシテ

食事 トハ無關係ナ リキ ト.鎭 痛劑注射2囘 モ受 ケ

タルモ輕快セズ,嘔 吐數 囘ア リキ.依 ツテ當津田

外科ニ轉 科入院 ス.黄 疸ハ未ダ認 メタル コ トナシ.

現症

全身症状

體格強壯,身 長短小,榮 養尚ホ稍 々良 好ニシテ,

皮下脂肪 及ビ筋 肉 ノ發育 中等度 少 リ.皮 膚 ハ正常

ニシテ稍 々乾燥 スレ ド,黄疸,發疹等 ヲ認 メズ.顔

貌ハ憔 悴 セ リ.體 温38.0℃,脉 搏1分 間84,整 調

ニシテ緊 張良,呼 吸ハ胸腹式ナ レ ド稍々頻速 ナ リ.

瞳 孔ハ左右同大,正 圓形,對 光反射正常,眼 瞼結

膜 ニ於 テ貧 血竝 ニ黄疸 ヲ認 メズ.共 ノ他 「トラコ

ーマ」性瘢痕,翼 状贅片,硝 子體 溷濁及 ビ遠視 ア

リ.舌 ハ乾燥 シ,灰 白色 ノ苔 ヲ認 ム.頭 位正常.

頸部及 ビ腋窩淋 巴腺腫脹 ナシ.胸 廓正常,心 濁音

界正常ニ シテ心音純,肺 ニ於 テ左側後下部打診 音

短 ク,呼 吸音稍々弱キ外,異 常 ヲ認 メズ.

腹部所見 後述.四 肢 ニ浮腫 其 ノ他 ノ病的所見 ヲ

認メズ.

食慾不振,睡 眠障碍 ア リ.便 通 ハ秘結 ニ傾 ク.

咳嗽ハ少量,喀 痰 ナシ.

尿 黄色 ニシテ稍 々溷濁,酸 性,比 重1020,蛋

白,糖 ヲ證 セズ.沈 渣 ナシ.膽 色素反應陰性 ナ リ.

糞便  消化良好 ナル普通便 ニシテ,寄 生蟲卵及

ビ潜血ハ共 ニ認 メズ.

血液檢査  白血球數10500

局所症状

腹部ハ扁平 ニシテ蠕 動 不 穏 ナ シ.上 腹 部ニテ

稍 々右 ニ偏 シ,手 掌大 ノ抵抗ア リ.種 瘍 トシテハ

觸 レズ.壓 痛ア リ.

手術前診斷  以上 ノ所見 ヨリシテ膽嚢 炎 ト診斷

セ リ.

上述診斷 ノ下 ニ昭和9年8月9日 開腹手術 ヲ行

フ.

手術所見

衛前「ヴイ タカ ンフオール 」2cc, 1%「 モ ルフイ

ン・ア トロビン」0.4cc皮 下注射及 ビ「アベル チン」

直腸麻醉(Pro Kg 0.1g),局 所皮膚 ハGrossichニ

從 ヒ沃度丁幾及 ビ酒精消毒 ヲナ シタル後, 0.05%

「ノボカイ ン」50ccニ テ局所浸潤麻醉 ノ下 ニ右肋

骨弓 ノ下,約3指 横徑 ニ於テ剣 状突起 ヨ リ弧然切

關 ニテ開腹 セ リ.腹 膜 ニ小切關 ヲナスニ多量 ノ膽

汁色素性膿汁奔出 シタル ヲ以テ,之 ヲ生 理的 食鹽

水 ヲ注入 シナガラSorenaen氏 吸引器 ヲ以テ吸引

セ リ.膽 嚢ハ其 ノ膿瘍腔 ノ中央 ニ位シ,膿 瘍壁 ハ

肝臓,胃 及 ビ上腹 壁ヨ リ成 リ,肥 厚 セル膿苔 ニテ

蔽ハル.膽 嚢 ノ主體部 ニテ其 ノ頸 部ニ接 シ,共 ノ

後面ニ大ナル穿 孔 ヲ認 ム.膽 嚢 ヲ周圍 ノ癒着及 ビ

肝臓 床 ヨ リ剥 離 シ,膽 嚢 管ニ達 シ,之 ヲ結紮 シ分

離ス.分 離端 ハ燒灼 シタル後漿膜 縫合 ニテ之 ヲ蔽

ヘ リ.總 輸 膽管 及ビ腹腔 内ヲ檢 シタルモ結石 ヲ證

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明セズ,故 ニ「ゴム」管挿入及 ビ沃度 「ホルムガー

ゼ タンボ ン」 ヲナセ リ.腹 壁ハ一 部 ヲ殘 シ3層 ニ

縫 合セ リ.

術後診斷  肉眼的膽嚢穿孔ニ ヨル膽汁性腹膜炎

剔 出膽嚢 ノ肉眼的所見:(第1圖 參照)

膽嚢 ハ其 ノ頸部 ヨ リ底部 ニ到 ル縦徑7.5cm,横

徑約5cmニ シテ甚 ダシク擴大 セ リ.表面ハ平滑 ニ

シテ紫色 ヲ呈 ス.之 ヲ前壁 ニ於テ縦徑 ニ割 ヲ入 レ

檢スルニ,膽 嚢壁ハ高度 ニ肥厚 シ,所 々其 ノ厚サ

ハ異ナ リ,甚 ダシク肥厚 セル部 ハ1cmニ 及ブ所

ア リ.其 ノ肥 厚 セル壁 ノ縦斷 面ニ於 テ灰白色 ノ部

(膿瘍?)數 箇所存 ス.粘 膜皺襞ハ扁平,粘 膜 ハ暗

赤色 ヲ呈 ス.穿 孔ハ直徑0.7-0.8cmニ シテ其 ノ

邊縁部 ハ壞疽性 ニ變 ゼ リ.膽嚢 内ニ結石 ヲ藏 セズ.

剔出膽嚢壁 ノ鏡檢所見:(第2, 3圖 參照)

高度 ニ肥厚 セザル底 部ニ近 キ部 ヲ鏡檢 スルニ,

正常 ノ膽嚢壁 ヨ リハ稍 々肥厚 シ,粘膜層.筋 層及ビ

結締織層 ノ各層 ニ亙 リ相當度 ノ細胞浸潤 ヲ認 メ,

粘膜 ノ表皮細胞 ハ所 々脱 落シ,細 胞排列不規 則ナ

リ,筋 層 ニ於 テモ其 ノ排列同樣不規 則ナ リ.

最モ肥 厚セル壁 ニ於 テ灰白色 ヲ呈 スル膿瘍(?)

ノ部 ヲ鏡檢 シ.次 ノ如 キ組織學的所見 ヲ得 タリ.

粘膜層 ノ表皮 ハ不規 則 ニ配列 シ,既 ニ一 部離斷

セ リ.尚 ホ高度 ノ細胞浸潤 ヲ認ム.固 有膜 ハ一般

ニ浮腫状 ニシテ,高 度 ノ細胞浸潤 ヲ見,尚 ホ新生

セル毛 細血管及 ビ結締織原細胞 モ亦存セ リ.

筋肉 層 ノ筋 纎維 ハ不規則 ニ配列 シ,一 般 ニ多少

萎縮 セ リ.粘 膜層 ニ比 シ更 ニ高度ナル細胞 浸潤 ヲ

認 メ,中 ニ新生毛細血管及ビ結締織原細胞 ヲモ混

ズ.

結締織膜層 ニ於テ筋 層ニ接 シ一大膿瘍 ア リ.即

チ主 トシテ多型核白血球 ノ集合 ニ シテ,中 ニ少數

ノ「エ オジン」嗜好細胞 ア リ,「フイプ リン」ヲモ亦

認 ム.其 ノ多型核 白血球集 合 ノ中央部 ハ正規 ノ組

織細胞 ヲ缺ゲ リ.該 集合部 ノ周圍 ハ新 シキ顆粒性

炎 症 ヲ示 シ,新 生 毛細 血 管 及 ビ結 締 織,高 度 ノ細

胞 侵 潤,其 ノ細 胞 核中 ニ ハPyknose或 ハKaryor

rhexisノ 状 ヲ示 セ ル ヲ認 ム.其 ノ他結 締 織 層 ハ 一

般 ニ浮腫 状 ニ シ テ, Tunica fibrose, Tunica sub

serosa, Tunica serosaノ 各 層 ノ區別 稍 々 不分 明

ナ リ.

膽 汁 ノ細 菌 學 的 檢査

塗 抹 標 本:雙 球菌 及 ビ大 腸 菌

寒 天培 養: Gram陽 性及 ビ陰 性 ノ雙 球 菌,大

腸 菌

「ブ イ オ ン」培 養:寒 天 培 養 ノ場 合 ト同 樣

術 後 經 過

手術 翌 日即 チ10/VIII.體 温 至38.6℃ 脉搏96,

輕 度 ノ咳 嗽 ア リ,肺 ハ一 般 ニ呼 吸 音 粗 ナ レバ,「 メ

ンサ ー ル」塗 布 及 ビ 〓痰 劑 ノ投與 ヲナ ス.尚 ホ25%

葡 萄 糖 液50cc靜 脉 的 注射 及 ビLocke氏 液1000cc

皮 下注 射 ヲ行 フ.局 所 ハ被 覆 「ガ ー ゼ」ノ交 換 ノ ミ

ヲ行 フ.他 ニ内 服 藥 トシテ硫 酸 「マ グネ シウ ム」ヲ

投 與 ス.

11/VIII.體 温 至37.9℃,脉 搏 至96.食 慾 出デ

流 動 食2合 ヲ攝 取 ス.尚 ホ輕 度 ノ咳嗽 ア リ.

12/VIII, 13/VIII.同 樣 ナ ル状 態 ヲ繼 續 ス.

14/VIII.咳 嗽 止 ミ,肺 呼吸 音 ハ良 好 トナ ル.

局 所 ハ部 分 的「タ ンポ ン」交 換 ヲナ ス.

17/VIII.體 温 至37.1℃,脉 搏 至84.「 タンポ

ン」 全 部 交 換 ヲナ ス.漿 液 血性 分 泌 物 稍 々多 量 出

ヅ.

其 ノ後 分 泌 物 ハ順 次 減 少 シ, 28/VIIIニ 於 テ ハ

殆 ド排 出 セザ ル ニ到 ル.依 ツ テ「トリパ フ ラ ビ ン・

ガ ー ゼ」ヲ當 ツ.然 ルニ4/IX突 然 可 成 多 量 ノ膽 汁

ノ排 出 ヲ見 タ リ.然 レ ドモ之 モ時 日 ノ經 過 ト共 ニ

次 第 ニ減 少 シ, 10/IXニ 到 リテ 膽 汁排 出 及 ビ其 ノ

他 ノ分 泌 物 ヲ殆 ド認 メザ ル ニ到 ル.從 ツテ 手術 創

モ縮 少 シ, 25/IX即 チ術 後47日 ニ於 テ ハ 殆 ド治癒

シ,嬉 々 トシテ退 院 セ リ.

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第3章  穿 孔 原 因

古 今 ノ文獻 ヲ綜 合 ス ル ニ膽 嚢 穿 孔 ニ ハ種 々

ナル 原 因 ア リ.即 チ外 ヨ リ加 ヘ ラ レタ ル傷 害

膽嚢 自己 ノ機 械 的機 轉,炎 症,膽 嚢 壁 ノ榮 養 障

碍,腫 瘍 性 潰瘍 及 ビ以上 各種 原 因 ノ合 併 セ ル

場 合 等 之 ナ リ.尚 ホ嘔 氣,嘔 吐,咳 嗽,體 ヲ過

度 ニ曲 グ ン トスル ガ如 キ努 力等,急 ニ加 ヘ ラ

レタ ル 強 キ腹 壓 ハ之 ガ誘 因 ヲ ナ ス コ トア リ.

1)外 ヨ リ加 ヘ ラ レタ ル傷 害 ニ ヨル場 合

之 ハ膽 嚢 部 ニ直 接 外 力加 ハ ル場合 ト間 接 ニ

膽 嚢 部 ノ破 潰 ヲ來 ス場 合 トア リ.

前 者 ハ鋭利 ナ ル 刀或 ハ銃 等 ニ テ外 傷 サ ルル

場合,或 ハ 列車 車 輛 聯 結 器 間 ニ壓迫 セ ラ レ,又

ハ重 キ岩 石 或 ハ材 木 ニ敷 カ レ,或 ハ荷 車,自 動

車 ニ轢 過 セ ラ レタ ル ガ如 キ場合 等 ニ シテ,カ

カル際 ハ肝 臓 ノ外 傷 ヲ合 併 スル コ ト多 シ.

後 者 ハ膽 嚢 ノ充 滿 セル時,頭 部 或 ハ臀 部 ヲ

下 ニ シ墜 落 セ シ如 キ場 合 ナ リ.然 レ ドモ多 ク

ノ學 者 ニ ヨ レバ斯 ル際 ニ於 ケ ル膨 隆 セ ル膽 嚢

ト雖 モ容 易 ニ破 裂 シ難 キ モ ノニ シテ,破 裂 ノ

因 ハ其 ノ膨 脹 度 ニ關 セズ シテ,其 ノ際 既 ニ一

時 的 ニ炎 症 性 經 過 ガ膽 嚢 壁 ノ抵 抗 ヲ減 ゼ シタ

メ ナ ラ ン ト言 ヘ リ.

2)膽 嚢 自己 ノ機 械 的 機 轉 ニ ヨル場 合

機 械 的 原 因 トシテ ハ膽 嚢 ノ莖 捻 轉,結 石,

過 度 ノ伸 展 等之 ニ屬 ス.

莖 捻 轉  膽 嚢 ニ ハ時 トシテ先 天 的 ニ非 常

ニ移 動 シ易 キ長 キ莖 ヲ有 スル コ トア リ.所 謂

Wandergallenblase(nach Krukenberg)ノ

異 態 ヲ呈 スル コ トア リ.カ カル膽 嚢 ニ於 テ見

ラル ル コ トア ル莖 捻轉 ハ膽嚢 ノ壞 疽 ヲ來 シ,

又 ハ炎 症 ヲ招 來 シ,其 ノ結 果穿 孔 ヲ來 ス モ ノ

ナ リ. Werdel氏 ハ カ カ ル1例 ヲ報 告 セ リ.

Shipley(1927)ニ ヨ レバ膽 嚢 ノ莖 捻 轉 ニ ハ完

全 及 ビ不 完全 捻 轉 ア リテ,不 完 全 捻 轉 ハ症 状

ガ次 第 ニ進 行 セバ 慢 性 膽 嚢 炎 ノ症 状 ヲ呈 シ,

完 全 捻轉 ノ場 合 ハ血 行 障 碍 ヲ來 シ,膽 嚢 ノ壞

疽 ヲ モ招 來 ス ル モ ノナ リ ト.從 ツ テ其 ノ内壓

亢進 ト共 ニ其 ノ穿 孔 ヲ容 易 ニ惹起 セ シ メ得 ル

モ ノナ ル ベ シ.

膽 嚢 壁 過度 ノ伸 展  膽 嚢 ハ 一般 ニ比 較 的

ヨ ク伸 展 シ得 ル モ ノナ レ ド,之 ガ過 度 ニ伸 展

セバ破 裂 ヲ免 カ レザ ル ハ理 ノ當 然 ナ リ.瘢 痕,

粘 膜 腫 脹,結 石 ノ嵌頓,腫 瘍 等 ニ ヨ リ膽 嚢 管

ニ閉鎮 ヲ生 ジタ ル 場合 膽嚢 ハ著 シク擴 張 セ ラ

ル.此 際 膽嚢 ハ其 ノ内 容 ヲ排 除 セ ン トシテ 強

ク收 縮 スベ ク,又 ハ外 部 ヨ リカ ノ加 ハ リタ ル

ガ如 キ場 合 ニハ遂 ニ其 ノ穿 孔 ヲ招 致 ス ル コ ト

ア リ.然 レ ドモ膽 嚢 ハ甚 ダ膨 脹 シ易 キ モ ノ ニ

シテ,文 獻 ニ徴 ス ル ニCourvoisier氏 ハ膽 嚢

内容1000cc以 上 ニ達 セ シ例 ヲ述 べ, Berger

氏 ハ長 徑16cm,幅12cmニ シテ骨 盤 腔 ニ達

セ シ例 ヲ報 ジ,或 ハ又 膽嚢 盲 腸 部 迄 伸 展 シ,

其 ノ結 果 蟲 樣 突起 炎 ト誤 診 セ ラ レタ ル例 サ ヘ

ア リ ト.故 ニ本 原 因 ニ ヨル穿 孔 ハ恐 ラク極 ク

僅 少 ナ ル モ ノナ ラ ン.

結 石  膽嚢 穿孔 ニ向 ツテ結 石 ノ存 在 スル

事 多 キハWilliams, Hilgenberg及 ビ坂 井氏 等

ノ統 計 的調 査 ガ 明 カニ之 ヲ示 セ リ.即 チMc.

Williams氏(1912)ニ ヨル ニ膽 嚢 穿 孔108例

中80例, F. C. Hilgenberg氏 ニ ヨ レバ30例

ノ膽 嚢 穿 孔 例 中19例 ニ於 テ結 石 ヲ認 メ,坂 井

氏 ノ集 メ シ斯 ル例 及 ビ自家 症 例2例 ヲ合 シ24

例 中結 石 ノ存 在 セ シハ19例 即 チ79%ナ リ ト

言 ヘ リ.而 シテ之 ガ成 因 ハ結 石 ガ膽 嚢 ノ頸 部

ヲ閉鎖 シ,又 ハ膽 嚢 壁 ヲ壓 シ,其 ノ結 果 壁 ノ

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壞 疽 ヲ來 ス ニ ヨルモ ノナ リ.大 ナ ル結 石 ガ膽

嚢 管 ニ介 在 スル時 ハ膽 嚢 ノ擴 大 ヲ來 ス ノ ミナ

ラズ,直 接 膽嚢 動 脉 ヲ壓 迫 シ,血 行 ノ障 碍 ヲ

來 シ,壞 疽 トナ リ得 ル モ ノ ニ シテ,其 ノ結 果

穿 孔 ヲ來 シ得 ル モ ノ ナ ラン.宛 モ壞 疽 性 蟲 樣

突 起 炎 ニ於 テ糞 石 ガ介 在 シ,同 樣 ナ ル結 果 ヲ

招致 スルガ如 シ.又 結 石 ガ直 接 何 カ ノ膽 嚢 ノ

異 常 ナ ル動 揺 ニ ヨ リ,又 ハ結 石 ノ形 状 ニ ヨ リ

直 接膽 嚢 壁 ヲ穿 孔 セ シ メ得 ル 事 ア リ. Gosset,

Desplas, Bonnet氏 等 ハ膽 嚢 壁 ノ1點 ニ介 在

ス ル結 石 ノ器 械 的壓 迫 ニ ヨ リ壁 ノ壞 疽 ヲ招 來

シ,其 ノ結 果 穿 孔 セル10例 ヲ報 告 シ, Sza

plonczay氏(1926)ハ 膽嚢 管 ノ開 口部 ニ穿 孔

ヲ有 シ,其 ノ穿 孔 ノ開 孔部 ニ結 石 ノ尖 レル角

ノ突 出 セルレ1例 ヲ報 ぜ リ.或 ハ又 コ レ迄 全 ク

無症 状 ニ膽嚢 底 部 ニ存 在 セ シ結 石 ガ咳 嗽,嘔

吐等 ノ際 ノ過 度 ノ腹壓 ニ ヨ リ膽 嚢 管 ニ押 シヤ

ラ レ,其 ノ部 ニ弛 ク介 在 ス.其 ノ時 膽 嚢 中 ノ

膽 汁 ハ結 石 ノタ メニ作 ラ レタルKugelventil

ノタ メ總 輸 膽 管 ニ排 出 シ得 ザ ル ニ到 ル.コ レ

ニ ヨリ其 ノ流 出 ハ遮 斷 サ レ,尚 本膽 嚢 中 ニ出

ヅ ル粘 液分 泌 ガ益 々多 クナ リ,膽 嚢 ハ力 強 ク

伸 展 セ ラ レ,過 度 ニ充 滿 セ ラ レ,且 其 ノ壁 ノ

過 度 ニ伸 展 シタル 膽嚢 ハ終 ニ破 裂 ニ到 ル モ ノ

ナ リ(Hochenegg).以 上 要 ス ル ニ膽嚢 穿 孔

ニ向 ツテ ハ結 石 ノ存 在 スル コ ト多 ク シテ,之

ガ 重要 ナ ル成 因 ヲナ ス モ ノ ナ リ トセ ラル。

3)炎 症性 原 因 ニ ヨル場 合

Hoppe-Seyler氏 ハ不 明 ナル 原 因 ニ ヨ リ一

次 性 ニ 膽嚢 壁 ニ潰 瘍 ヲ生 ジ,ソ レガ 穿 孔原 因

ヲ ナ ス モ ノナ リ ト云 ヘ リ. Budd氏 ハ之 ハ膽

汁 ノ膽嚢 粘 膜 ニ對 スル傷 害 作 用 ニ依 ル モ ノナ

リ ト云 ヘ リ。 然 レ ドモKehr氏 ニ ヨ レバ 膽嚢

壁 ハ健 康 ナ ル膽 汁 ニ ヨ リ潰 瘍 ヲ作 ル コ トナ

ク,結 石 ノ壓 迫 ノ ミニ ヨ リテ モ容 易 ニ潰 瘍 ヲ

作 ル モ ノ ニ非 ズ,必 ズ 其 ノ際 細 菌 ノ關 與 ガ ア

ル モ ノ ナ リ ト云 ヘ リ.其 ノ後Errard氏 ハ膽

嚢 中 ニ結 石 ナ キ膽 汁 性 腹膜 炎 ノ起 リシ例 ヲ認

メ, Gosset(1925)ハ 膽嚢 ノ炎 症 ヨ リ穿 孔 ノ

起 レル例 ヲ報 ジ, Alexander氏(1927)モ 亦

潰 瘍 性 膽嚢 炎 ヲ原 因 トセル例 ヲ報 ジ,同 時 ニ

膽 石 ノ有 無 ハ必 ズ シモ必 要 ナ ラ ズ トセ リ.

Helle, Marquezy, Morley, Battiuson氏 等

モ亦 結 石 ナ ク,膽 嚢 炎 ノ ミヲ有 スル 膽 嚢 穿 孔

ヲ報 告 セ リ.尚 ホ各種 傳 染 性疾 患,腸 「チ ブ

ス」,赤 痢,「 コ レラ」,膿 毒 症 等 ノ膽 嚢 壁 ヲ

オ カ シ,穿 孔 ヲ招 來 ス ル コ トア リ.就 中 「チ

ブス」 性 潰瘍 が膽 嚢 壁 ヲオ カ シ,穿 孔 ヲ招 來

セ シ例 ハ比 較 的 多 ク, Erdmann氏(1903),

Ashhurst氏(1908),原 田氏(1921), Tongs

氏(1931)等 ノ報 告 ア リ.

斯 ク ノ如 ク炎 症 ニ ヨ リ來 リタ ル例 亦 可 成 存

ス ルモ ノノ如 ク,其 ノ際 膽 嚢 壁 ハ炎症 性變 化

ノタ メ膽 汁及 ビ其 ノ中 ニ含 マ レタ ル細 菌 ヲ通

過 シ易 ク シ,尚 ホ 且炎 症 ニ續 ギ テ該壁 ノ壞 疽

ヲ招 來 シ,其 ノ結 果 トシテ遂 ニ穿 孔 ヲ來 スモ

ノナ リ. Judd氏(1932)ニ ヨル モ膽嚢 ノ壞 疸

ハ機 械 的 血行 障 碍 ニ ヨル場合 モ ア レ ド,其 ノ

炎 症 ガ重 要 ナ ル 要 素 ヲ 占 ム ルモ ノナ リ ト云 ヘ

リ.各 種 ノ細菌 ガ膽道,淋 巴 管,腸 管,或 ハ

血 行 等 ニ ヨ ジ膽 嚢 壁 ニ來 リ直接 該壁 ヲオ カ ス

モ ノナ リ. Judd氏 ノ實 驗 的 研 究 ニ ヨ レバ膽

嚢 中 ノ結 石 及 ビ膽 汁 ヨ リモ其 ノ壁 ニ 遙 ニ 多 ク

ノ細 菌 ヲ證 明 シタ リ ト云 ヘ リ.

最 近 ハ好 氣 性菌 ノ外 ニ嫌 氣 性 菌 ガ 之 ニ 關

與 セ リ ト云 フ 人 ア リ, Gordon-Taylor and

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726 菅 龍 正

WhitlyハWelch'sche Bazillenガ 最 モ屡 々見

ラ レ,之 ガ壞 疽 ノ原 因 ヲナ ス コ ト想 像 以上 ニ

多 キ コ トヲ述 ベ タ リ. Halle and Marquezy,

Kirschmeyer and Cottam等 モ之 ニ賛 意 ヲ表

セ リ.

4)膽 嚢 壁 ノ榮 養障 碍 ニ ヨル場合

膽 嚢 血 管 ニ生 ゼ シ血 栓 或 ハ栓 塞 ニ ヨ リ膽嚢

ノ 局部 的 又 ハ全 般 的 壞 疽 ヲ來 シ,其 ノ結 果 穿

孔 ヲ招來 シ得 ル場 合之 ナ リ.尚 ホ膽 嚢 壁 ニ瓦

斯 發 生細 菌 ノ感 染 ニ ヨ リ膽 嚢 血 管 ガ機 械 的 ニ

閉塞 サ レ,其 ノ結 果 壞 疽 從 ツテ穿 孔 ヲ來 シ得

ル コ トモ ア リ ト云 ハ ル(Judd).

5)各 種 ノ腫 瘍 性 潰 瘍 ニ ヨル場 合

膽嚢 壁 ニ ハ各 種 ノ腫 瘍殊 ニ癌 腫 ヲ見 ル コ ト

多 ク,斯 ル腫 瘍 ノ潰 瘍 トナ リ穿 孔 ス ル コ トア

リ.松 尾 氏(1929)ハ 膽 石 ヲ容 ルル膽 嚢 癌 ノ穿

孔 セ シ1例 ヲ報 告 セ リ.

6)以 上各 種 原 因 ノ合 併 セル 場合

總 ベ テ ノ例 ハ上 記各 種 ノ原 因 ノ相 關 連 シテ

表 ハル モ ノナ ル ベ シ.

以 上 ノ如 キ各種 ノ原 因 中,余 ノ例 ハ第3ノ

場 合 ニ屬 セ リ.即 チ雙 球 薗,大 陽菌 ニ ヨ リ來

リタル 炎 症性 原 因 ノタ メ 膽 嚢 ハ 高 度 ニ 肥 厚

シ,其 ノ膽嚢 ハ組織 學 的 ニ檢 ス ル モ明 カ ニ炎

症 性變 化 ヲ認 メ,且 該 壁 各 所 ニ膿瘍 存 シ,而

シテ斯 ル膿瘍 ノ最 モ高 度 ナ ル後 壁 ニ存 セ シ モ

ノ ガ潰瘍 性 トナ リ,遂 ニ其 ノ 内壓 モ加 ハ リテ

穿 孔 ヲ招 來 セ シ モノ ト思 惟 サ ル.

第4章  臨 牀 的 事項

徴 候

本症 ハ 既往 症 ニ於 テ膽 石 症,膽 嚢 炎 ノ徴 候

即 チ背 部 ニ放 散 スル上 腹 部 疼 痛 及 ビ發 熱,黄

疸 等 ヲ有 ス ル コ ト多 シ. Gosset, Desplas,

Bonnet氏 等 ガ 膽嚢 穿 孔 ニ ヨル111例 ノ急 性

腹膜 炎 ニ就 テ報 告 セ ル所 ニ ヨ レバ,其 ノ41例

ニ於 テ膽 石症 ノ既 往 症 ヲ有 セ リ.余 ノ例 ニ於

テ モ35年 以 前 ヨ リ毎 年1, 2囘 ノ上 腹 部 疼 痛

ア リ,殊 ニ近 年 ニ到 リテ 明 カ ニ膽 嚢 炎 ノ症 状

ヲ呈 スル ニ到 レ リ,即 チ黄 疸 ハ認 メ ザ ル モ,

右上 腹部 ニ於 テ劇 痛 ヲ有 シ,其 ノ疼 痛 ハ背 部

ニ放 散 シ,尚 ホ發 熱 感 及 ビ嘔 氣,嘔 吐 ア リキ.

膽嚢 穿 孔 ノ小 ナ ル モ ノニ ア リテ ハ吸 收 セ ラ

レテ病竈 周 圍 ニ瘢 痕 組織 ヲ生 ズ,且 之 ハ幽 門,

十 二指 腸 ニ癒 着 シ,狹 窄 症 状 ヲ 呈 ス ル コ トア

リ ト云 ハ ル.膽 嚢 穿孔 ノ大 ナ ル モ ノ ニ ア リテ

ハ 胃,十 二指 腸,横 行結 腸 其 ノ他 ニ破 壞 シテ

膿 汁 ハ體 外 ニ排 出 セ ラ レ,自 然 治 癒 ヲ營 ミ,又

前 腹 壁 ニ破 壞 シ,腹 壁 膿瘍 ヲ形 成 シ,又 ハ肝,

横 隔 膜 下 膿瘍 ヲ形 成 シ,更 ニ横 隔膜 ヲ越 ヘ テ

肋膜 腔 ニ侵 入 スル コ トサ ヘ ア リ.然 レ ドモ其

ノ多 クハ腹 腔 内 ニ排 出 セ ラ レ,所 謂 膽 汁性 腹

膜 炎 ノ症 状 ヲ呈 ス.其 ノ際流 出 膽 汁 無菌 性 ナ

ル場 合(例 ヘバ 外傷 ニ於 テ見 ル ガ如 ク)ハ 腹

膜 ニ對 シ殆 ド障 碍 ヲ與 フル コ トナ シ. Garre

(1908)ハ 膽嚢 ノ破裂(外 傷)後2箇 月 ニ シテ

開 腹 ニ ヨ リ腹 腔 内 ノ膽 汁 ヲ吸 出 シ,肝 膽 管腸

吻合 術 ヲナ シ,治 癒 セ シメ タ ル1例 ヲ報 ジ,

Ehrhardt氏 ニ ヨ レバ 無菌 膽 汁 ハ何 等腹 膜 炎

ヲ惹起 セズ,單 ニ黄疸 ヲ發 スル ノ ミナ リ ト云

ヒ, E. Frankel, P. Krause氏 等 モ亦 之 ヲ實 驗

的 ニ證 セ リ. Korte氏(1947)ハ 膽 道 外 傷 ノ際

ノ如 キ純 粹 ナ ル 膽 汁 腹 腔 内 流 出 ハ輕 度 ノ無 菌

的 慢性 腹 膜 炎 ヲ惹起 ス ル ノ ミナ リ ト云 ヘ リ.

若 シ流 出 膽 汁 感 染 セ ル場合 ハ所 謂穿 孔 性腹膜

炎 ノ症 状 ヲ呈 スル モ ノ ニ シテ,之 ニ汎 發 性 ト

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膽嚢穿 孔ニヨル膽汁性腹膜 炎ニ就 テ 727

限局性ノ2ツ ノ場合 アリ.前 者ハ初期ニ於テ

膽嚢部附近ニ於ケル劇痛 アリ,ソレハ腰部,腸

骨窩ニ放散ス.次 ギテ患者ハ全身症状 トシテ

體温ハ正常ナ レド,異常發汗 ヲ呈シ,呼吸ハ右

季肋下部劇痛ノタメ胸廓呼吸型 トナル,所 謂

「シヨツク」樣症状ヲ呈ス.局 所症状 トシテハ

右上腹部ニ於ケル強度ノ限局性腹壁緊張,上

腹壁壓痛殊ニ膽嚢部ニ於テ劇烈ナ リ.從 ツテ

肝臓下縁 ハ之 ヲ觸知 シ得ズ.他 ノ腹部ハ柔軟

ニシテ壓痛ナシ. Douglas氏 窩ニモ壓痛ヲ證

セズ.以 上 ノ初期症状 ハ間モナク上腹部一般

ノ腹壁緊張,壓 痛,膨 隆,發 熟,速 脉,嘔 氣,

嘔吐等ノ一般汎發性腹膜炎 ノ症状ニ移行スル

モノナリ.然 レドモ胃,腸 潰瘍穿孔又ハ蟲樣

突起穿孔ノ場合ノ如 ク劇甚ナル症状ヲ呈セザ

ルコト多 シ.

毒力強キ感染膽汁多量ニ充滿サレタル膽嚢

ガ急激ニ穿孔 セル場合ハ以上 ノ如キ汎發性腹

膜炎ノ症状 ヲ呈スルモノナ レド,一 般ニハ膽

嚢周圍炎ガ豫 メ存 シ,壁 ノ一部ハ壞疽 トナ リ,

穿孔ノ徐 々ニ來ルモノ多ク,斯 ル場合ハ所謂

限局性腹膜炎ノ形 ヲ呈スルモノナリ.即 チ右

上腹部主 トシテ膽嚢部 ノ限局性腹壁緊張,壓

痛等ヲ認ム.

余ノ例ハ後者即チ限局性膽汁性腹膜炎ニ屬

ス.

尚 ホ他 ニ本症 ノ症 状 トシテ特 ニ黄疸,白 血

球 數 ノ移 動 等 云 ハル.黄 疸 ニ就 キ テ ハ或 ハ存

シ或 ハ無 ク シテ 一定 ノ徴 候 ナ ラズ ト云 ハ ル.

Ehrhardt氏 ハ 化 膿 ヲ 來 セ ル 膽 汁性 腹 膜 炎 ノ

時 ハ之 ヲ認 メズ ト云 ヘ リ.余 ノ例 ニ於 テ モ黄

疸 ヲ見 ザ リキ.然 レ ドモ最 近龜 谷 氏 ノ報 告 セ

シ例 ニ於 ヲ ハ前 腹壁 ニ局部 的 黄疸 ヲ認 メ タ リ

ト云 ヘ リ.河 石 氏 ハ膽 嚢 穿 孔 ノ際,黄 疽 ハ穿

孔 ノ直 後 ナ ラザル限 リ,理 論 上 必 要 ノ症 候 ニ

シテ,血 清 中 ノ「ビ リル ビン」ヲ測 定 セバ必 ズ

増 加 ス ル モ ノナ リ ト云 ヘ リ.又 白血 球 數 ハ放

出膽 汁量 ト其 ノ腹 腔 内放 出 時 間 關係 ニ ヨル ベ

シ.余 ノ例 ニ於 テ ハ 白血球 増多 ヲ認 メタ リ。

診 斷  本 症 ノ正確 ナル診 斷 ハ困難 ナ ル モ

ノナ リ.殊 ニ早 期 ニ之 ヲ診 斷 スル ハ極 メテ難

事 トスル所 ナ リ. Edward氏 ノ報 告 ニ ヨ レバ

本疾 患16例 中 術 前 的確 ナ ル診 斷 ヲ 下 シ得 タ

ル モ ノ僅 ニ1例 ニ過 ギズ ト.然 レ ドモ本 症 診

斷 ノ主 ナ ル支 持 點 トナ ルベ キモ ノ ヲ擧 グ レバ

次 ノ如 シ.

年 齡  本 症 バ一般 ニ高齡 者 ニ多 キモ ノ ナ

リ. Mc. Williams氏(1912)ノ 統 計 的 觀察 ニ

ヨ レバ50-60歳 最 モ多 ク,次 ギテ40-50歳,

更 ニ60-70ノ 順 位 トナ レ リ.而 シテ平 均 年

齡50.2年 ナ リ ト. Fifield氏(1927)ノ 統 計 ニ

ヨ レバ28例 中70歳 代, 60歳 代, 50歳 代 ハ同

數 ニ シテ各 々6例, 40歳 代 ハ5例, 30歳 代

ハ4例, 20歳 代 ハ1例 ナ リ ト云 ヘ リ.又 坂 井

氏(1930)ノ 調 査 ニ ヨ レバ60-69歳 最 モ多 ク,

50-59歳 及 ビ40-49歳 ハ 同率 ニ シテ,之 ニ

次 グ.而 シテ平 均年 齡 ハ51.9歳 ナ リ.余 ノ例

モ亦60歳 ノ高 齡 者 ナ リ.

性 別  女 性 ヲオ カ ス コ ト男 性 ニ比 シ遙 ニ

多 シ.坂 井 氏 ニ ヨ レバ 男78例,女112例 即 チ

女 性 ハ58.9%ヲ 占 ム ト云 ヒ, Fifield氏 ハ又

28例 中16例 ハ 女性 ナ リ ト云 ヘ リ.余 ノ例 モ

亦 女 性 ナ リ.

既 往 症  多 ク ノ場 合 數 囘或 ハ ソ レ以 上 ノ

膽 石 症 或 ハ膽嚢 炎 ノ既 往 症 ア リ. Edward氏

ニ ヨ レバ 膽 嚢 穿 孔 ノ16例 中 初 囘膽 石 發 作 ニ

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728 菅 龍 正

穿孔 セシ ト思ハルルモノ僅ニ3例 ナ リト云ヘ

リ.

誘因  排便時ノ腹壓,筋 肉勞働,寝 臺 ヨ

リ起キ上 ラン トスル努力,劇 シキ嘔吐及 ビ咳

嗽,非 衛生的食事等ニヨリ腹壁筋ノ急激ナル

收縮ガ本症發生 ノ誘因ヲナスコトアリ.

局所症状  所謂膽石症 ノ發作 性疼痛 ア

リ,ソ レニ引 キ續キ穿孔アレバ比較的診斷ハ

容易ナ リ.即 チ膽石症ノ發作中ニ穿孔 アレバ

其 ノ瞬間ハ疼痛輕減 シ,引 キ續 キ限局性腹膜

炎 ノ症状 ヲ呈ス.即 チ右季肋下部 ノ激 シキ自

發痛竝ニ壓痛,右 側上腹壁ノ緊張ヲ發ス.更

ニ擴大セバ所謂汎發性腹膜炎 トナル.然 レド

モ通常カカル定型的症状 ヲ現ハスモノハ甚グ

少ナクシテ,初 期ニ於 テ上腹部稍々右ニ偏 シ

即チ膽嚢部位ニ於ケル劇痛及 ビ該腹壁 ノ緊張

竝ニ壓痛 ヲ認メ得ルニ過ギズ.

黄疸  黄疸ヲ認メ得ル場合 ト認 メ得ザル

場合 トアリ。然 レドモ黄疸ハ理論上穿孔直後

ナラザル限 リ存スルモノニシテ,血清中ノ「ビ

リルビン」ヲ測定セバ必ズ増加 スルモノナリ

ト云ハル.

以上要スルニ本症 ノ診斷殊 ニ初期ニ於テハ

甚ダ困難 トスレド,其 ノ主ナル支持點 トナル

モノハ高齡ノ女性,膽 嚢炎,膽 石症 ノ既往症

及 ビ右側上腹壁部位ニ於ケル劇烈ナル疼痛,

該腹壁 ノ緊張竝ニ壓痛及ビ血清中ノ 「ビリル

ビン」等ナリ.

鑑別診斷 トシテハ次 ノ如 キ疾患ヲ區別スベ

シ.

1)急 性蟲樣突起炎及ビ其ノ穿孔ニヨル急

性腹膜炎

2)胃 又ハ十二指腸潰瘍穿孔

3)急 性 膵 臓 炎

4)上 部 ノ腸 管閉 塞 症

等 ナ リ.

豫後

本癌 ハ 一般 穿 孔 性 腹 膜 炎 ト同樣 豫 後 ニ對 シ

テ ハ患 者 ノ一般 状態,肝 臓 及 ビ腹 膜 ノ侵 襲 度

ノ多 少,膽 嚢 内容 ノ毒 性 及 ビ量 ノ多 少 ニ關 係

ス ル モ ノ ニ シテ,就 中穿 孔 ヨ リ手術 ニ至 ル迄

ノ經 過 時 間 ノ短 キ程 豫 後 良好 ナ ル ハ勿 論 ニ シ

テ,尚 ホ第1表 ニ掲 グ ル諸 家 ノ統 計 ニ ヨ リテ

モ明 カナ リ.即 チMc. Williams氏 ノ統 計 ニ

ヨ レバ 穿 孔 ヨ リ12時 間 迄 ニ 手術 セ シモ ノ ハ

僅 ニ14.3%ノ 死 亡 率 ヲ見 タル ニ, 12時 間 後

24時 間 以 内 ニ於 テハ33.3%,更 ニ24時 間 ヲ

經 過 セ シ場合 ハ52.9%ノ 死 亡 率 ヲ認 メタ リ.

又A. Gosset氏 及 ビS. Nowicki氏 ノ統 計 ニ

ヨ レバ24時 間 以 内 ハ夫 々31.4%, 31%ノ 死

亡 率 ヲ認 メタ ル ニ, 24時 間 ヲ經 過 セバ 頓 ニ死

亡 率 ヲ増 加 シ,夫 々59.6%, 92.0%ト ナ レ リ.

尚 ホH. Kehr氏 ノ統 計 ニ ヨ レバ2日 以 内 ニ

手 術 シタ ル モ ノハ死 亡 セ シモ ノ ナ ク, 3日 以

後 ニ手術 シタ ル モ ノハ全 部死 亡 セ リ.

第1表  膽 嚢 穿 孔 後 ノ時 間 的 經過 ト死 亡 率

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膽嚢穿孔ニヨル膽汁性腹膜炎ニ就テ 729

Ehrhardt氏 ハ文 獻 ヨ リ70例 ヲ集 メ,多 ク

ノ場 合 緩 和 ノ經 過 ヲ取 リシ腹 膜 炎 ナ リ シヲ報

告 シ, Hayem, Thomas, Arbutnot, Lane,

Naunyn氏 等 モ亦 同樣 ノ報 告 ヲナ セ リ.戸 田

氏 モ亦 他 ノ穿 孔 ニ比 シ膽 汁性 腹 膜 炎 ノ豫 後 良

好 ナ ル ヲ唱 ヘ タ リ. Rona氏(1925)ニ ヨ レバ

膽嚢 穿 孔 ニ ヨル腹膜 炎 ハ蟲 樣 突 起 穿 孔 ニ ヨル

ヨ リモ豫 後 良 好 ナ リ ト云 ヘ リ.余 ノ例 モ亦 豫

後 良好 ニ シテ,穿 孔 ト思 惟 サ レシ時 ヨ リ6日

後 ニ於 テ 手術 ヲナ シ,上 述 ノ如 ク入 院2箇 月

ナ ラズ シテ殆 ド治 癒退 院 セ リ.

斯 ノ如 ク膽 嚢 穿 孔 ガ 他 ノ腹 腔 内臓 器 穿 孔 ニ

比 シ,其 ノ豫 後 比較 的 良好 ナ ル ハ其 ノ流 出 内

容 物 ノ差 異 ニ起 因 ス ル モ ノ ナ レ ド,膽 汁 ハ

細 菌 ノ毒 力 ヲ減 弱 シ(Ehrhardt, Garriere,

Nencki, Schoumow, Simanowski, Ehret

und Stolz),腹 膜 ニ對 シ癒 着 性 ヲ高 メ(Ehr

hardt!,尚 ホ膽 嚢 ハ大 腸,網 膜 ニ ヨ リ下 方,

胃,十 二指 腸 ニ ヨ リ内 側 ヲ,肝 臓 ニ ヨ リ外 側

ヲ取 リカ コマ レ,以 テ 自然 的 ニ其 ノ膽 汁 性 膿

汁 ノ腹 腔 内 ニ擴 大 スル コ トヲ少 ナ カ ラ シムル

タ メナ ラ ンカ.

療 法

本 症 ノ療 法 トシテ ハ 他 ノ穿 孔 性 腹膜 炎 ノ ソ

レ ト同樣 手術 的療 法 ノ一 途 アル ノ ミ.而 シテ

其 ノ方 法 トシテ根 治 的 療 法 及 ビ保 存 的 療法 ア

リ.

I)保 存的療法

(1)「 タンポン」挿入法

(2)膽 嚢閉鎖術

(3)膽 嚢造瘻術

II)根 治的療法

(4)膽 嚢剔出術

(1)コ ノ方 法 ハ先 ヅ腹 壁 切 開 ヲナ シ,腹

腔 内 ニ達 シ,膽 汁性 膿 汁 ヲ除 去 シタ ル 後 「タ

ンボ ン」 挿 入 ヲ行 フ.之 ハ患 者 ノ一 般 状態 惡

シク根 治 的 手術 ニ耐 へ得 ザ ル場合 ニ行 フモ ノ

ナ リ.

(2)本 法 ハ膽 嚢 穿 孔 部 ノ縫 合,閉 鎖 ヲナ

ス 方法 ナ リ. Enderlen und Justi氏 等 ニ ヨ

レバ先 ヅ穿 孔部 ヲ煙 草 縫 合 ヲ ナ シ,其 ノ上 ニ

網 膜 ノ移 植 ヲ行 ヒ好成 績 ヲ得 タ リ ト云 ヘ リ.

其 ノ後L. Baldassari und A. Gardini氏 等

(1902)ハ 網 膜 ニ代 フル ニ腹壁 切 開 創 ノ近 ク ニ

於 ケ ル腹 壁 ヨ リ得 タ ル漿 膜 筋膜 片 ヲ以 テ セ リ.

之 ニ ヨ レバ膽 嚢 ハ コノ漿 膜 トヨ ク癒 着 スベ キ

腹膜 ノ1層 ヲ有 シ,尚 ホ 一定時 日ハ コノ外 ノ

筋層 ハ 内側 ニ向 ヒ確 カ ニ一 大抵 抗 力 ヲ與 フル

ベ キ長 所 ア リ ト.然 レ ドモ,何 レニ セ ヨ,本

閉 鎖 縫 合 術 式 ハ外傷 ニ ヨ リ破 裂 セ シガ如 キ場

合 ニ シテ,膽 嚢 内 ニ何 等 ノ病 的 變化 ヲ認 メザ

ル 時 ニ 用 ヒ得 ル モ,多 ク ノ場 合 該壁 ノ病 的 變

化 ヲ伴 フ ヲ以 テ寧 ロ剔 出 術 ヲ行 アニ如 カズ.

(3)本 術 式 ハ膽嚢 ヲ切 開 シ,結 石 ア レバ

之 ヲ除 去 シタル 後,之 ヲ前 腹壁 ニ固定 シ,排

膿 管 ヲ膽 嚢 内 ニ挿 入 シ,膽 汁 ヲ排 出 セ シム.

本 法 ハ膽 嚢 炎 ノ際,鬱 滯 感染 セル膽 汁 ヲ自 由

ニ 排泄 セ シム レバ 自 ラ 炎症 ハ終 熄 ス ベ シ トノ

Naunyn氏(1892)ノ 説 ニ ヨ リ考 案 セ ラ レタ

ル モ ノナ リ.膽 嚢 ニ病變 ア リテ 縫 合 ニ適 セザ

ル トキ,或 ハ膽嚢 小 ニ シ テ裕 ニ腹 壁 ニ縫 着 シ

得 ザル 時, Poppert氏 防 水排 膿 法 或 ハKehr

氏 挿 管 法 ニ ヨ リ之 ヲ滴 用 シ得 ル モ ノ ナ リ ト云

ハ ル.

本 膽 嚢 造 瘻 術 ハ 一 時 賞 用 セ ラ レ シモ,

Goldammer, Friedemann, Mack, Kehr氏 等

119

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730 菅 龍 正

ノ調 査 ノ結 果 ニ ヨル モ明 カ ナ ル ガ如 ク,本 法

ハ永 久 治 癒 ニ於 テ遺 憾 ノ點 尠 ナ カ ラザ レバ,

漸 次 剔 出 術 ニ壓 倒 サ ル ル傾 向 ア リ.

(4)膽 嚢 ヲ肝 膽 床 ヨ リ剥 離 シ,其 ノ頸部 ヨ

リ全 ク剔 出 スル 方 法 ニシテ,最 モ根 治 的 ナル 方

法 ナ リ(Kehr, Steinthal, Poppert, Kuttner,

Brunner等).然 レ ドモ本 術 式 ニ ヨ レバ 手術

時 間 モ長 ク,身 體 ニ對 シ大 ナ ル侵 襲 トナ ル モ

ノ ナ レバ,全 身 状 態 ノ險 惡 ナ ル場合 ハ之 ヲ行

ヒ得 ズ.

要 之,膽 嚢 穿 孔 ノ手術 的 方 法 トシテハ先 ヅ

腹 壁 ヲ切 開 シ,腹 腔 内 ニ入 リ,膽 汁 性 膿 汁 ヲ

除 去 ス ル タ メ食 鹽 水 ヲ以 テ腹 腔 内 ヲ洗 滌 シタ

ル 後,其 ノ根 源 ナ ル膽 嚢 穿 孔部 ノ處 置 ヲ行 フ

ベ キ ナ リ.而 シテ體 力 ガ之 ヲ許 サバ 進 ンデ膽

嚢 剔 出 ノ根 治 的療 法 ヲ敢 行 スベ ク,若 シ全 身

状 態 險 惡 ニ シテ該 根 治 的 手術 ヲ施 シ得 ザ ル場

合 ハ「ド レー ン」挿入 ノ保 存 的 療 法 ヲ行 ヒ,體

力 ノ恢 復 ヲ待 チ,二 次 的 ニ根 治 的 手 術 ヲ行 フ

ヲ至 當 ナ リ ト思 惟 ス.

豫 防 法

本症 ハ前 述 セ シKehr, Mc. Williams, A.

Gosset氏 等 ノ統 計 的觀 察 ガ 明 カ ニ示 ス ガ 如

ク(第1表 參 照),時 間 的 經 過 ト共 ニ豫 後 不 良

ヲ來 スモ ノナ レバ,可 及 的 早期 ニ手術 ヲ行 フ

ベ キハ論 ヲ俟 タ ズ.然 レ ドモ多 ク ノ場 合 早 期

診 斷 困難 ニ シテ,手 術 時期 ヲ失 スル コ ト多 キ

ヲ以 テ,余 ハ寧 ロ コノ恐 ルベ キ穿 孔 ヲ惹 起 ス

ル以 前 ニ於 テ,根 治 的 ニ膽嚢 剔 出術 ヲ敢 行 ス

ル コ トヲ推 奨 セ ン トス.

今 日蟲 樣 突 起 炎 ノ早 期 手術 ニ對 シテ ハ何 人

モ異 論 ヲ含 マ ザ ル所 ナ リ,是 レ蟲 樣 突 起炎 ハ

屡 々穿 孔 〓,不 良 ノ轉 歸 ヲ取 ル場 合 多 キ ヲ以

テナ リ.然ルニ既述 ノ如ク膽石症,膽 嚢炎ハ蟲

樣突起炎 ノ場合 ノ如 ク,第1囘 發作ニヨリ直

ニ穿孔性腹膜炎ヲ惹起 スルコトハ稀有ナ リ.

從 ツテ膽石症,膽 嚢炎 ノ早期手術ガ行ハレザ

リシ理由 トナ レリ.然 レドモ膽嚢 炎モ早期ニ

於テ癒着ナキ場合ハ蟲樣突起炎 ノ手術 ト同ジ

ク,其 ノ操作容易ニシテ手術成績モ良好ナル

ベシ.從ツテ第1囘 發作 アレバ,直 ニ膽嚢剔出

術 ヲ行 フヲ以 テ理想 トス.而 モ膽嚢 ヲ剔出ス

ルモ蟲樣突起切除 ト等 シク身體ニ大ナル障礙

ヲ來サザルモノナレバ,若 シ第1囘 發作ニ於

テ之ヲ行 ヒザルモ,少 ナク トモ第2或 ハ第3

囘ノ發作 ノ場合ハ進ンデ膽嚢剔出術ヲ行 ヒ,

以テ其ノ穿孔ノ如 キ恐ルベキ合併症 ノ豫防ニ

備 フルヲ最モ賢明ナル策ナリト思惟ス.

第5章  總 括

本例ハ60歳 ノ女性ニ來 リタル 突發的膽嚢

穿孔 ニ因スル急性限局性膽 汁性腹 膜炎 ニ シ

テ,手 術 ニヨリ快癒セシメ得タルモノナ リ.

本症ハ諸外國ニ於テハ可成其ノ報告 ヲ見ル

モ,本 邦ニ於テハ尚ホ甚ダ稀有ナ リ.

膽嚢穿孔源因ニハ外傷,莖 捻轉,過 度ノ伸

展,結 石,炎 症,血 栓,栓 塞及 ビ腫瘍性潰瘍

等擧ゲラルモ,就 中結石或ハ炎症ニ因スル場

合最モ多 シトセラル,余 ノ例 ハ膽嚢炎ニヨル

壁 ノ壞疽性潰瘍ガ其ノ亢進セル内壓ニヨリ自

然的ニ破裂セシモノニシテ,結 石ハ全ク認 メ

得ザ リキ.

診斷ハ困難ニシテ初期ニ於テ殊 ニ然 リ.然

レドモ初期診斷ノ主ナル支持點 トナルモノヲ

擧グ レバ高年ノ女性,精 細ナル既往症及 ビ右

上腹部殊ニ膽嚢部位ニ於ケル劇痛及 ビ該腹壁

120

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膽嚢穿孔 ニヨル膽汁性腹膜炎 ニ就テ 731

ノ緊 張 及 ビ壓 痛,血 清 中 ノ「ビ リル ビ ン」等 之

ナ リ.

豫後ハ一般穿孔性腹膜炎殊 ニ上腹部穿孔性

腹膜炎ノソレニ比 シ稍々良好 ナル モノノ如

シ.

療法 トシテハ膽嚢剔出術 ヲ行フヲ以テ最良

ノ方法ニシテ,尚 ホ膽石症或ハ膽嚢炎ノ症状

ノ ミニテ恐ルベキ穿孔症状ヲ呈セザル以前ニ

於テ豫防的ニ膽嚢剔出術ノ敢行ヲ推奨セン ト

ス.

欄筆 ニ當 リ終始御懇篤ナル御指導 ト御校閲

ヲ賜ハ リタル恩師津田教授 ニ對 シ謹而謝意 ヲ

捧 グ.

文 獻

1) Anglesio, B., Zentralorg. f. d. ges. Chi

rurg. u. ihr Grenzgeb., Bd. 64, 1933. 2) 安 藤,

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3) 荒 木,日 本 外 科寳 函,第7卷,67頁 及 ビ271頁,

昭和5年. 4) 赤岩,日 新 醫 學,第19第,第3號,

昭和4年11月. 5) Baldassari, L. und Gardini, A.,

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6) Bertone, C., Zentralorg. f. d. ges. Chirurg.

u. ihr Grenzgeb., Bd. 34, S. 455, 1926. 7)

Bride, G. V., ebenda, Bd. 57, S. 641, 1932.

8) Chantriot, P., ebenda, Bd. 60, S. 723, 1933.

9) Ehrhardt, Arch. f. klin. Chirurg., Bd. 64,

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ges. Chirurg. u. ihr Grenzgeb., Bd. 36, 1927.

11) Graef, W., ebenda, Bd. 32, S. 202, 1925.

12) Hartig, Bruns' Beitr. z. klin. Chirurg., Bd.

68, S. 492. 13) Hilgenberg, ebenda, Bd. 127,

1922. 14) Hugel, ebenda, Bd. 83, S. 623, 1912.

15 Horvat, A., Zentralhl. f. Gynakolog., Jg.

55, S. 815, 1931. 16) 原 田,日 本 内 科 學 會 雜 誌,

第9卷,第5號.大 正10年8月. 17) 池 田,東 京 醫

學 曾雜 誌,第43卷,昭 和4年,(前). 18) 稻 田,

治療 及 ビ處 方,第108, 109號,昭 和4年3, 4月. 19)

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Journal of Surgery, Obstetrics and Gynecology,

February, 1932. 20) Jean, G., Zentralorg. f.

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732 菅 龍 正

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附 圖 説 明

第1圖  則出膽 嚢

剔出膽嚢 ハ肥 大 シ,其 ノ後壁頸部 ニ近 ク大 ナ

ル穿 孔ア リ.尚 ホ其 ハ壁 ノ處々 ニハ數箇 ハ膿

瘍 ヲ認 ム.

第2圖  「ヘマ トキ シリン ・エオジ ン」染色標本

(膿瘍存 セザ ル稍 々底部 ニ近 キ膽嚢壁)

全層殊 ニ粘膜 層 ニ於 テ高度 ニ細胞侵潤 ヲ認 ム.

(Zeiss, Okul. K. 10×, Obj. 0.2)

第3圖  「ヘマ トキ シリン ・ニオジ ン」染色標 本

(膿瘍 ノ存 スル高度 ニ肥 厚 セル膽嚢壁)

結締織 層ニ一大膿瘍 ア リ.粘 膜表皮 ハ部分的

ニ破壞 シ,筋 纎維ハ萎縮セ リ.結 締織層ハ浮

腫状 ヲ呈 シ,尚 ホ全層ニ亙 リ細胞浸潤顯著ナ

リ(擴 大同上).

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菅 論 文 附 圖

第1圖

第2圖 第3圖