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ISSUE 13

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Page 1: PRN Magazine ISSUE 13 - pronews.jp · さらに2020年世界の風景は少しばかり変わってしまった。 社会全般そして映像業界を取り巻く状況は良いとは言えない。

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特集2:

Reviews -注目プロダクト-01 ソニー FX9で試す絶妙レンズの嗜み  ~シグマのEFマウントをMC-11でEマウント化~

02 今手に入れるべきスイッチャーローランド「V-8HD」の実力検証

03 このタイミングに最適! 機能強化されたATEM Mini Pro登場!

Statement

再起動しろと時代は言う。

特集1:

再現:NAB2020 -Mag Tradeshow-

NABSHOWはこれからどこへ行くのか?~感覚交歓の場として存在理由~

各社のオンライン・カンファレンスから見えてくること

キヤノン「EOS C300 Mark III」最大16+stopを実現させた奇跡。その誕生秘話を聞く

キヤノンCINE-SERVOに「CN10×25 IAS」シリーズ登場。小型軽量実現までの誕生秘話を聞く

パナソニック、12ビットRAW出力対応のLUMIX S1HファームウェアVer.2.0を無料公開

再現NAB2020で見える新製品たち

Intro: Show Must Go On

Samsung SSDを収録メディアに選んだ理由とは?~JVCケンウッドGY-HC550/500開発者インタビュー~

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Yu Nagabaイラストレーター、アーティスト。アーティストとして個展を開催する他、雑誌、書籍、広告、様々なブランドとのコラボレーションなど領域を問わず幅広く活動。国外も含め様々なクライアントにアートワークを提供している。

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02 CONTENTS

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再起動しろと時代は言う。

人生は、日々選択の連続だ。

「映像」が好きで、観たり、撮影したり、編集したりとこれまで映像から多くのことを学んできた。年々機材は変わり、その物語も変わっていった。

目的のためであれば手段は問わない。慎重になりすぎ長大になること意味がない。もちろん条件を満たさないことも論外だ。たかが道具、されど道具である。多様性の中から自由に最適解を選びたい。正直正解はないのだ。

さらに2020年世界の風景は少しばかり変わってしまった。

社会全般そして映像業界を取り巻く状況は良いとは言えない。しかし「映像」を諦めたくないと思う。

我々にできることは何か?目に見えないものと対峙するしかないのだろうか?

今回の出来事で多くの常識や因習は大きく変化してしまった。実は、再起動できる良い機会を得たのかもしれない。あの頃には戻れないのであれば、新しく生み出したい。何度でも何度でも最適なものを選び続けたい。

そして次へ向けて再起動する、何度でも何度でも。その歩みを今回は、ここからはじめたい。

04 05Statement 再起動しろと時代は言う。

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2020年4月20日から23日に米国ネバダ州ラスベガスにて開催予定だった世界最大の放送機器展覧会「2020 NAB Show」が、世界的な新型コロナウイルス感染拡大にともない中止となった。映像業界にとっては、毎年「4月はラスベガス」が合言葉だっただけに大事件である。メーカーにとっても、格好のプロモーションの場を失うという苦境に見舞われた。

しかしこの影響は避けては通れないが、「SHOW MUST GO ON」である。いち早くこの業界でも予定していた製品の発表やデモは、Webベースのビデオカンファレンスに切り替えて行われた。

そこで今回PRONEWSでは、NAB2020でお披露目される予定だった内容を再現したいと思い立ち「再現:NAB2020 -Mag Tradeshow-」として特集を組んだ。前半は、各社のビデオカンファレンスの様子をお届けしたい。感染拡大防止の中でも力強いメッセージを発信する各社の言葉に耳を傾けてほしい。後半は、NAB2020会場からお送りしているように再現したいと思う。

そしてまた来年2021年は、ラスベガスのNAB会場からレポートをお届けできることを心より願っている。

特集1

Show Must Go On

各社のオンライン・カンファレンスから見えてくること08-11

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18-19

再現NAB2020で見える新製品たち

NABSHOWはこれからどこへ行くのか?~感覚交歓の場として存在理由~

06 07特集1: 再現:NAB2020 -Mag Tradeshow- Intro: Show Must Go On

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各社のオンライン・カンファレンスから見えてくること

2020年4月4日開催

「新しいATEM Miniにはハードウェアのストリーミングエンジンを搭載していることが特に重要です」とグラント・ペティ氏は語る。新製品の4入力HDMIプロダクションスイッチャー「ATEM Mini Pro」は、追加のストリーミングソフトウェアを必要とせずに、YouTube、Facebook、TwitchTVなどにライブ配信の実現が特徴だ。USBフラッシュディスクへのH.264での直接収録もサポートしている。また、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K/6Kにカメラのパラメーター、レンズ、タリーライトを操作できるアップデートを発表。小規模ライブ配信に大きな影響を与えそうだ。

Blackmagic Design - Live Production and Camera Update

小規模配信の

オールインワン機器

「ATEM Mini Pro」

発表

Blackmagic DesignのCEO、グラント・ペティ氏

ATEM Mini Proならストリーミングソフトなしで生配信が可能になる

スタジオカメラ機能を追加するBlackmagic Camera 6.9アップデート

2020年4月21日開催

キヤノンは、EOS C300 Mark IIIやCINE-SERVOレンズのCN10×25 IASシリーズを発表。EOS C300 Mark IIIは、DGOセンサーを搭載し、2つのゲインを通じて各ピクセルを読み取ることでハイダイナミックレンジコンテンツの収録を実現。DGO駆動時、最大16+Stops相当のセンサーダイナミックレンジを特徴とする。また、DiGIC DV7イメージプロセッサを搭載し、デュアルCFexpressスロットを使用して最大120fpsのDCI準拠4K RAW内部記録にも対応する。一方、CINE-SERVOシリーズの「CN10×25 IAS」シリーズは、10倍光学ズーム、1.5倍のエクステンダー、取り外し可能なサーボモータードライブユニットを備えているのが特徴だ。

CanonUSA - Canon Virtual Press Conference 2020

スーパー35mm

DGOセンサー搭載

「EOS C300 Mark III」

発表

キヤノンUSAのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、スコット・アンタヤ氏

4K/120P対応4Kスーパー35mmDGOセンサー搭載のEOS C300 Mark III

8Kカメラに対応する光学性能と高倍率の10倍ズームを実現した「CN10×25 IAS」シリーズ

2020年4月17日開催

富士フイルムは、8K映像の撮影を実現する放送用ズームレンズ「FUJINON HP66×15.2-ESM」と「FUJINON HP12×7.6ERD-S9」を発表した。「HP66×15.2」は、 8K対応の放送用レンズとして世界最高クラスの15.2mmから最望遠1000mmまでの焦点距離をカバーするボックスタイプの放送用ズームレンズ。66倍ズームを実現しているため、遠く離れたスポーツ選手の決定的なプレーなどをとらえられるという。「HP12×7.6」は、世界最広角クラスの7.6mmから91mmまでの焦点距離を備えたポータブルな放送用ズームレンズ。スタジアムなどを広く映した撮影が可能としている。

FUJINON - Press Conference "Experience the Next Phase in Lens Design"

8K対応の箱型66倍と

小型広角7.6mmの

放送用ズームレンズ

発表

15.2mmから世界最望遠1000mmまでの焦点距離をカバーするボックスタイプの放送用レンズ「HP66×15.2」

最広角7.6mmから91mmまでの焦点距離を備えたポータブルタイプの放送用レンズ「HP12×7.6」

2020年4月23日開催

ライブイベントは「Grass Valleyが市場をIPとクラウドベースに導きます」と語るティム・ショルダーズ氏の挨拶でスタート。ライブプロダクションとして、LDX 100カメラプラットフォームを発売。ネイティブIP接続ネイティブUHD対応のカメラプラットフォームで、最大100 Gbpsでネットワークに直接接続する自己完結型のIPデバイス。これまでは必要であった各カメラとCCUのペアリングや複数ラックユニットから解放される。また、新しいカメラプラットフォームを補完するものとして、4K UHD、HD、IP、SDIに対応するプロダクションスイッチャーエンジン「GV K-Frame XP」を発表した。

Grass Valley - GV LIVE Presents Innovate 2020

クラウドベースの

未来をリードする

製品郡を紹介

Grass Valleyのプレジデント、ティム・ショルダーズ氏

LDX 100カメラプラットフォーム ビデオ処理エンジンK-Frame XP

08 09特集1: 再現:NAB2020 -Mag Tradeshow- 各社のオンライン・カンファレンスから見えてくること

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2020年4月22日開催

IBC2019で話題になったLight StormにフラッグシップモデルのLED照明「Light Storm 300X」を発表。LS 300d Mark IIとは異なり、300XはシングルソースのバイカラーLEDライトを初搭載。2700K~6500Kの色温度可変に対応し、タングステンよりも暖かい、または昼光よりも涼しい光の再現が可能。シングルソースでありながら、Fresnel 2XやSpotlight Mountなどのレンズ付きモディファイアにも対応する。Fresnel 2Xと併用することで、1mあたり最大56,000ルクスの出力が可能。ユーザーが色の精度または最大出力を優先できる色調整の2つのモードを搭載する。

Aputure - The Light Storm 300x + Lightning Clamp

小型軽量、高演色の

バイカラーLED

「Light Storm 300X」

登場

Aputureのプレジデント、Ted Sim氏

バイカラータイプが登場したLS 300X アクセサリーを変えることでソフトやハードな光を表現可能

2020年4月30日開催

映像制作機器の機能強化を発表。VENICEは2020年11月にファームアップ(Ver.6.0)を予定しているという。「テクニカラールックライブラリ」を含むAdvanced Rendering Trans-form(.art)ファイルのインポート、72fps/5.7K 16:9などの拡張HFRをサポートする。「HFR機能拡張は、特にテレビドラマのワークフローでスローモーションのポストプロダクションを簡素化します」とジョンスタダート氏は紹介した。FX9は、2020年10月にファームアップ(Ver.2.0)を予定。6Kフルフレームセンサーの5Kトリミング領域からのオーバーサンプリングをサポートするという。

Sony - Powering Creativity

VENICEやFX9に

映像表現を広げる

機能拡張発表

ソニー、イメージングプロダクツ&ソリューションのバイスプレジデントのジョン・スタダート氏

VENICEにはハイフレームレート収録可能なイメージャーモード3種が追加される

FX9には5Kサイズスキャンによる4K/60P収録やDCI 4K(4096×2160)収録などが追加される

2020年4月27日開催

「NAB2018でMAVOを発表して2年間、ユーザーの要望を熱心に耳を傾けてきました。その結果が形となりました」とMichel Juknat氏。フラッグシップモデルとなる大判8KシネマカメラのMAVO Edgeを発表した。36×24mm CMOSセンサーを搭載し、ISO800とISO3200デュアルネイティブISOや最大75fpsの8Kワイド、最大14+stopを特徴とする。アップルのProRes RAWコーデックで内部収録が可能。さらにカメラ内のProRes 4444 / XQ、ProRes 422 HQ、H264プロキシもサポートする。また、初の電動e-NDシステムをカメラ内部に搭載するのも特徴だ。

Kinefinity Cinema Cameras - Official Product Launch 2020

8Kや内部ProRes

RAW記録対応の

Kinefinity MAVO

Edge発表

KinefinityヨーロッパのMichel Juknat氏

外装にはカーボンファイバーボディを採用 35mmフルサイズの8K75P CMOSイメージセンサーを搭載

2020年5月6日開催

パナソニックは、IP制作やリモートビデオ制作をサポートする新製品を発表した。目玉は、解像度・画角に依存しないオペレーションが可能なIT/IPベースのライブ映像プラットフォーム「KAIROS」だ。メインフレームの「Kairos Core」が中心となり、ハードウェアコントロールパネル「Kairos Creator」、GUIソフトウェアの「Kairos Control」などで管理が可能で、システムの拡張や統合化が容易なところが特徴だ。そのほかにも、HDスタジオカメラシステム「AK-HC3900/ HC3900S」や4K/60Pリモートカメラ「AW-UE100W/K」の開発なども発表された。

Panasonic - The Future of Video Production

IT/IPベースのライブ

映像プラットフォーム

「KAIROS」などビデオ

制作の未来

パナソニックのシニアバイスプレジデント、プロフェッショナルイメージング&ビジュアルシステムズのジョン・ベイスリー氏

高感度で高画質な映像撮影が可能な放送業務用カメラAK-HC3900/HC3900S

IT/IPベースのライブ映像プラットフォーム「KAIROS」

各社のオンライン・カンファレンスから見えてくること

10 11特集1: 再現:NAB2020 -Mag Tradeshow- 各社のオンライン・カンファレンスから見えてくること

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左から、課長代理の妹尾勇氏、主幹研究員の岡村哲氏、副統括部門長の大川原裕人氏、主任研究員の小布施武範氏

再現NAB2020で見える新製品たち

キヤノンは2020年4月21日、4Kスーパー35mmDGOセンサー搭載のEOS C300 Mark IIIを発表した。4K Cinema RAW Lightの120Pハイスピードを内部記録や、業界トップクラスとなる16+Stopのダイナミックレンジ、デュアルピクセルCMOS AF搭載が特徴だ。このスペックを実現しながら約120万円という価格も魅力的だ。業界トップクラスの仕様を実現したEOS C300 Mark IIIについて、キヤノンの開発者たちに話を聞いてみた。

キヤノン「EOS C300 Mark III」

最大16+stopを実現させた奇跡。

その誕生秘話を聞く――EOS C300 Mark IIIの位置づけと特徴を聞かせてください

大川原氏:C300シリーズの第3世代でありますが、基本的な構造などEOS C500 Mark IIと共通です。実はEOS C300 Mark IIIとEOS C500 Mark IIは同時に開発しておりました。

特徴はDGOセンサー搭載です。DGOはデュアルゲインアウトプットの略です。1つの画素出力に対して異なるゲイン出力が可能で、低ノイズ・高ダイナミックレンジの映像を生成します。明るい部分は飽和優先アンプの画像を使い、暗い部分はノイズの少ないノイズ優先アンプで撮影した画像を用い、良質で幅広い諧調を表現します。

複数の画像を組み合わせて、ダイナミックレンジを拡張するという技術は以前からありましたが、

今回はそのアプローチを発展させて、プロ機材としての高画質化と高諧調性を、最小システムで実現すべく、検討しました。

システムやパッケージ的にもコンパクトにし、同時にAF機能実現を達成目標としました。結果、新開発4Kスーパー35mmDGOセンサー内に、デュアルピクセルCMOS AF技術とDGO技術とを押し込んだ事が、最大の特徴となっています。

――DGOセンサーはポスプロにどのような効果をもたらしますか?

大川原氏:EOS C300 Mark IIIは、暗部のノイズがより少なく、自然に撮影ができます。これまでは、少し露出を落とし撮影し、ポスプロ段階で少し増感させることがよく行われていました。当然

ノイズも増感しますし、なんらかのリダクション処理が必要な場合もあります。さらに色のノイズまで乗ってしまうと除去は難しくなります。それらのポスプロ作業の自由度向上や時間短縮の場面に貢献できるのではないかと考えています。

――どのような現場で活躍すると想定しますか?

最近では、ドキュメンタリー撮影でCINEMA EOS SYSTEMの使用率が高まっています。2020年1月のサンダンス映画祭ではノミネート作品の多数がキヤノン製カメラで撮影されました。映画撮影だけでなく、ドキュメンタリーの場面でも、C300 Mark III を含めたCINEMA EOS SYSTEMが益々活躍してくれることを、望んでおります。

12 13特集1: 再現:NAB2020 -Mag Tradeshow- 再現NAB2020で見える新製品たち - キヤノン「EOS C300 Mark III」最大16+stopを実現させた奇跡。その誕生秘話を聞く

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左から、副統括部門長の大川原裕人氏、部長の中川英法氏、副部長の飯島邦明氏

再現NAB2020で見える新製品たち

キヤノンは、広角25mmから望遠250mmの高倍率10倍ズームを実現した「CN10×25 IAS」を発表した。これほどの倍率を実現しながら小型機量を実現しつつ、簡単に脱着可能な高性能ドライブユニットの標準搭載が特徴だ。テレビ放送、映画制作と用途に合わせて両方に使用可能なCINE-SERVOの「CN10×25 IAS」シリーズについて、キヤノンの開発陣に誕生秘話を聞いてみた。

キヤノンCINE-SERVOに

「CN10×25 IAS」シリーズ登場。

小型軽量実現までの誕生秘話を聞く

――CINE-SERVOとはどのようなシリーズなのでしょうか?

中川氏:CINE-SERVOシリーズは、大判センサー搭載のカメラ用ズームレンズです。特に、ドライブユニットと称するズーム・フォーカス・アイリスのサーボ機構が特徴です。大判センサーを生かした画作りでサーボ機能と機動性を兼ね備え、シネマから放送制作用まで幅広い位置づけがCINE-SERVOシリーズになります。

――どのようにしてスーパー35mmとフルサイズ両対応を実現していますか?

中川氏:放送用レンズで実績のある、内蔵エクステンダー機構に発想を得たアイディアです。標準はスーパー35mmで、内蔵1.5×エクステンダーを使用でイメージサイズが拡大し、35mmフルサイズセンサーのカメラにも対応します。

大川原氏:EOS C500 Mark IIと組み合わせて

使う際にはエクステンダーをオンにすることでフルサイズをカバーできます。1.5×エクステンダーを使用した際、ワイド端からテレ端まで焦点距離は1.5倍になります。

――CN10×25 IASはなぜ小型化を実現できたのでしょうか?

中川氏:弊社は放送用レンズも手掛けていますので、CN-E30-300mm T2.95-3.7 Lの2012年発売から数年が経ち、材料・設計・製造技術を進化させ、惜しみなく盛り込んだ光学設計と機構設計で、3㎏台の重量を実現しました。T値は2.95と「CN-E30-300mm T2.95-3.7 L」と同等です。

テレ端開放のT値も3.95とほぼ同等と、光学仕様面も含めたバランスも考慮しながら小型軽量を実現した機種です。CN-E30-300mm T2.95-3.7 Lも発売から8年が経過した今でも光学性能は、高評価を頂いています。

CN10×25 IASシリーズもそれにたがわず、小型ながら同等性能を有しています。

――最後にどのような場面で活用が期待されるか教えてください。

飯島氏:CINE-SERVOシリーズには、7倍のCN7×17 KASシリーズと20倍のCN20×50 IASシリーズがあります。CN7×17 KASシリーズを2014年に発売しまして、かなり長い間、お客様に使っていただいているレンズです。その2本の中間域がないのか?というご要望ありました。

CN10×25 IASシリーズの登場で、ようやくご要望にお応えすることができ、どれを使っていただいても、お客さんの撮りたい画が撮れるようになります。ラインアップの間を埋めるCN10×25 IASシリーズをいち早く使っていただきたいなと思っています。

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再現NAB2020で見える新製品たち

01 RAW動画出力対応フォーマット。5.9K(16:9)30P/4K(17:9)60P/3.5K(4:3)アナモ 50Pに対応

02 動画RAWデータ出力対応モード

InterBEE 2019のパナソニックブースで開発中ファームウェアが参考展示されていた

パナソニックは、同社のフルサイズミラーレス一眼カメラ「LUMIX S1H」からHDMI端子で接続したATOMOS NINJA Vに12ビットRAW動画出力可能のファームウェアVer.2.0を2020年5月25日より無料公開する。アップデートの目玉である「ATOMOS NINJA V連携のS1HのRAW動画出力」と「S1Hの動画機能向上、性能改善」について紹介しよう。

パナソニック、

12ビットRAW出力対応の

LUMIX S1H

ファームウェアVer.2.0を無料公開

S1HのRAW動画出力は3つのモードに対応

S1Hはファームアップすることで、ATOMOS社製HDMI フィールドモニター/レコーダー

「NINJA V」へHDMI経由で最大5.9K29.97Pの動画RAWデータ出力が可能になる。NINJA VはATOMOSから配布されるファームアップでS1HのRAW動画出力に対応し、記録フォーマットはProRes RAWとなる。

RAW動画出力フォーマットは、大きくわけて「フルサイズ/5.9K/16:9」「スーパー35mm/4K/17:9」「スーパー35mm/アナモ/4:3」の3つ。[01]

フルサイズエリアの5.9K/16:9のモードは、30P、24P、PALの25Pのフレームレートに対応。スーパー35mmのエリアの4K/17:9のモードは、DCI 4Kの4096×2160よりも少しだけ画素に余裕をもった4128×2176の仕様が特徴だ。フレームレートは60P、30P、24Pに対応。スーパー35mmを使ったアナモ/3.5K/4:3のモードは、開発発表では触れていなかった初公開のスーパー35mmのアナモフィック(4:3)動画のモード。フレームレートは30P、24P、PALの50Pや25Pに対応する。[02]

S1Hの動画機能向上、性能改善

動画機能向上や性能改善の内容を紹介しよう。もっとも大きな改善は、動画記録中のHDMIダウンコンバート出力だ。これまでのS1Hでは、6K、5.9K、5.4Kといった4Kを超える解像度の動画記録中ではHDMI出力できない制約があった。HDMIのビデオストリームは4Kまでの解像度までしか定義がされておらず、それを超える解像度のデータ転送方法は規格として定められていないのが原因だった。

今回のアップデートにより、カメラ内部に6Kを撮りながらダウンコンバート処理を行い、HDMIには4Kにダウンコンバートした映像を出力で対応。外部モニターを使いながら6Kや5.9Kといったフォーマットを確認可能となった。

また、動画記録中のシャッターの全押しを無効化するメニュー「シャッター全押し動画記録」が新たに追加された。これまでは、シャッターボタンの半押しでピント合わせ、全押しでシャッターが切れるようになっていた。しかし、押し込みすぎて動画の記録を止めてしまうという問題もあった。メニューの「シャッター全押し動画記録」機能を使うことで、シャッターボタンをAFのコントロールだけに使うことができるようなる。

16 17特集1: 再現:NAB2020 -Mag Tradeshow- 再現NAB2020で見える新製品たち - パナソニック、12ビットRAW出力対応のLUMIX S1HファームウェアVer.2.0を無料公開

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~感覚交歓の場として存在理由~

NABSHOWは

これからどこへ行くのか?

txt:石川幸宏

2020年は、東京オリンピック開催や、4K/8K放送やHDR映像も本格化、5Gで新たな高速通信網が映像業界を激変させる…そんな記念すべき年だったはずだ。しかし世界規模で新型コロナウイルス感染拡大により、わずか数ヶ月で現存する人類が初めて直面するパンデミックが発生、先が見えない闇の中に突入してしまった。

この映像業界でもNABSHOW 2020の開催中止が発表されたことは記憶に新しい。さらにラスベガスの街自体が閉鎖になるなど、これは長いNABの歴史の中でも初めてのことだ。

改めて実感する「感覚交歓」の場

NAB開催中止で思うことは、このようなリアルイベントがコンテンツの制作活動において、いかに有意義であったかということだ。パンデミック発生後、ロックダウンや外出自粛が強要される生活の中で、ネットによる会議やライブ配信は日常茶飯事になった。様々な場でネット動画利用のソリューションが浸透し、バーチャル・コミュニケーションのノウハウやリモート作業のリテラシーもついてきた。これによって無駄が大きく省かれたとする意見も多い。皮肉にも一つの大きな収穫なのかもしれない。しかし、何でもネットを介したヴァーチャルで済むのかは大きな疑問符が付く。ネット情報だけでは実感が

湧かないといった感覚はないだろうか?展示会へ足を運び、それを目の当たりにして、実際に機器を操作し、解説を生で訊くことで、実際に参加者自身の熱量が喚起される。我々記者も会場の熱気を常に意識する。いま人々が何に関心を持ち、何が新しく、何が過ぎ去っていく存在なのか? 展示会場で行われる様々な会話や展示は、それを如実に物語ってくれる。

そしてこのネット基盤の世界になったからこそ、展示会とは、より生の意見や感触が得られ五感での「感覚交歓」の場であることを実感するのだ。人のつながりの重要な場所として機能していたことが実感できる。新しいアイディア、新たな技術、そして新たなビジネスへの創造のタネになっていたのだから。

再度開催までの諸問題

映像関連の展示会のスケジュールも世界的に大きく変更され、延期や中止が続いている。果たして再び開催できるのか?今回人類が戦っている相手は目に見えない敵だ。COVID-19への感染予防策はおそらく数年は続くものと思われ、また画期的な特効薬やワクチンが普及しない限り、何らかの予防策は講じていく必要がある。

やはりコロナ前とコロナ後では、様々なことが大きく変わってくるだろう。しかしそこを乗り越えてでも、新たなるリアル展示会の開催スタイルを見出し、ぜひ近日中に実現して欲しいと願うばかりだ。

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~JVCケンウッドGY-HC550/500開発者インタビュー~

JVCケンウッド社のハンドヘルド型業務用4K60P収録カムコーダー JVC GY-HC550/500は、ProRes 422 HQ 10bitフォーマットを採用し、高ビットレートのProResデータを汎用のSSDメディアに記録する仕様となっている。今回はJVCケンウッド本社にお邪魔して、ProResやSSD採用の経緯、開発の舞台裏のお話を伺った。

Samsung SSDを

収録メディアに選んだ理由とは?

(写真左から順に)伊東聡氏、松永義弘氏、宏哉氏、石渡正樹氏、秋山剛久氏

Samsung SSD 860 EVO M.2(右)と専用アダプター「KA-MC100」(左) 拡張スロットを利用するH.265/HEVCエンコーダー(右)※日本での発売は未定

txt:宏哉

――4K60Pを収録するフォーマットにProResを採用した理由を教えてください。

石渡氏:GY-HC500の導入市場の一つとして制作も考慮しており、ProResの採用で編集を含むワークフローを最適化でき、お客様にとって有効と判断して採用しました。

――ProResを採用することで制作フィールドにどのようなアプローチが取れると考えられましたか?

石渡氏:(ポスプロなどで)ProResを採用しているワークフローに対して、他のコーデックで収録をするとProResに変換する作業時間が凄く掛かりますが、カメラで直接ProResを収録し、そのままPCに繋ぐことができれば、効率化・最適化が望めると思います。

――ProResで4K60P収録すれば高いビットレートが必要です。当然ファイルサイズは大きくなります。それの受け皿としてSSDを収録メディアに採用した理由を教えて下さい。

石渡氏:実はメディアとして他の記録メディアも考えました。サイズ感であったり市場入手性などを考慮し、また海外でのヒアリングを行いました。検討する中で、4K60P/ProRes 422 HQ 10bitの最大ビットレートとなる1.768Gbps(約220MB/s)に対応できるのか?スペックだけで採用メディアを判断するのではなく、技術の松永が実際に様々な検証を行い、最終的にSSDでいけるという事になりました。

――SSDはSATA M.2 SSD/Type2280を専用アダプター「KA-MC100」に収容してカムコーダーに挿入する仕様になっていますね。なぜSSDを内蔵するスタイルになったのでしょうか?

石渡氏:例えばケーブルが抜けてしまうなどのアクシデントが起こると業務用としてはマズイと考え、内蔵化する事が業務用カメラとしての第一条件だろうと考えました。

秋山氏:HC500シリーズでは“拡張スロット”という形で、その中にメディアを挿入するスタイルを採用しています。CONNECTED CAMのコンセプトとして、高画質・高品質でIP接続する・高い親和性を持つという他にも、映像制作環境における周辺機器も色々なデバイスと繋がるという考えがあります。今後、拡張スロットを利用した新しい機能もリリースしていきます。

――SSD用変換アダプター KA-MC100は、USB 3.0規格対応のType-Cのコネクターが用意されており、直接パソコンに繋いでデータのコピーができますが、実効ではどれぐらいの転送速度が出るのでしょうか?

松永氏:パソコン側の性能にも拠りますが、読み込み速度で大体USB 3.0の最大データ転送速度(理論値)に対して6割以上出ます。

――HC550シリーズは高速転送と大容量を両立させるSSDを記録媒体に採用しているわけですが、SamsungのSSDを推奨メディアに選んだ経緯と特徴を教えてください。

松永氏:設計上、SSDの動作はメディアアダプターに入れてカメラに内蔵した温度環境で、安定動作できることが求められます。SamsungのSSDはこの様な環境下で、書き込み速度が非常に安定しています。ProResデータを約1.8Gbpsで書き込まないといけないのですが、常に1.8Gbps出ていれば良いわけではなく、ジッターを考慮してより速い書き込み速度が実際には求められます。その書き込み速度に Samsung SSDは対応できる性能になっています。今回、記録メディアとして推奨しているSamsung 860 EVO M.2の場合、最大容量が2TBなので、長時間の収録にも十分耐えられますし(4K60P ProRes 422 HQで151分収録可能)、連続書き込み時の安定性だけでなく、消費電力と発熱が少なかったことが、そう言える何よりの根拠だと思います。

※補足:インタビューの後日、HC500シリーズ用の最新のファームウェアVersion1.10で、HC500シリーズがApple ProRes 422 HD記録に対応。SSDメディアへのバックアップ記録に対応し、HD収録時に長時間でのProRes記録が可能になった。

20 21Samsung SSDを収録メディアに選んだ理由とは? ~ JVCケンウッドGY-HC550/500開発者インタビュー~

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筆者は個人所有で「URSA Mini Pro G2」や「BlackmagicPocket Cinema Camera」シリーズのカメラを愛用している。しかしながら現場ではFS7やαシリーズなどを使うことも多いため、バリバリの仕事カメラとしてFX9を導入した。現場での使用率や、FS7からの正統進化に加え、飛躍的に期待できる機能向上があり、かなり熟成したモデルに仕上がっている。今回はそんなFX9のAF(オートフォーカス)をチェックしていきたい。

02 SIGMAの様々なズームレンズと合わせてみた。50-100mmなどのブリージングも被写体の動きとズーム動作に混ぜるとほぼ気にならなくなる

04 F値変化の大きいレンズでもオートVNDで露出変化が軽減されるのはありがたい!

~シグマのEFマウントをMC-11でEマウント化~ソニーFX9で試す絶妙レンズの嗜み

txt:田村雄介

01 熟成進化モデルのFX9。様々な可能性を秘めている

03 AFがしっかり動いてくれる嬉しいMC-11。今後他社製などにも期待したい

基本動作の良さに加え、注目すべき部分はAFだ。まだまだ進化の余地はあるものの非常に優秀な部分もあり、使い方次第では大変強力な武器となる。[01]

普段目にする様々な現場でFS7クラスに使用されているレンズは、マウントアダプターにEFレンズの使用率が圧倒的に多い。FS7なのでもちろんMF操作が基本だ。これがFX9ではAFを活かした撮影で、さらに可能性が広がるのではないかと思う。[02]

2020年5月現在ではSIGMAのマウントコンバーター「MC-11」にSIGMAレンズの組み合わせであれば、AF機能がかなりの精度で使用可能になる。その精度は、スチルレンズのズーム動作に追従してくれるほどだ。これには正直驚いた。[03]

一般的なスチル用のズームレンズは、ズームした瞬間にフォーカスがずれるため、動きの中でズーム中にフォーカスを合わせ続けることは非常に難しいテクニックになる。しかし今回の組み合わせ、S35 4Kモードで使用する18-35mm F1.8 DC HSMや、50-100mm F1.8 DC HSM、FF 6K モードで使える24-70mm F2.8 DG OS HSM、24-105mm F4 DG OS HSMなど標準域前後のズームレンズはもちろんのこと、100-400mm F5-6.3 DG OS HSMや60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSMといった高倍率望遠ズームレンズなどでも、ズーム中に激しく前後する人物被写体にAFを合わせ続けるという離れ業が可能だった。これは当然だがEマウントネイティブの14-24mm F2.8 DG DNや24-70mm F2.8 DG DNなどのレンズも同じく動作した。

ズーミング中にもフォーカスが付いてきてくれる様を見ていると、FSシリーズを使用する現場にひとつ新しい風が吹くのでは?と思ったほどだ。さすがに重いレンズを繰り出さなければならないため、スムーズなズーミングの手法には一工夫必要だが、それを考えるのもイマドキの楽しみかたの一つでもある。

サンプル映像ではAFとオートVNDに少しいじわるなシチュエーションなども試してみた。ひとつ驚いたのが60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSMの最短撮影距離。60mm時の最短撮影距離は60cmとなっており、AFを使用しながらバンバンズームを動かしていると、時たま驚くほど近くに被写体がいるケースがあった。[04]

それともう一つ。今回60-600mmをはじめとしたF値変化のあるズームをいくつか使用したが、自動的に適正露出へ濃度調整を行う「オートVND」の追従性が良く、ズーム中の段階的な露出変化がかなり軽減されていた。自動露出のため構図内の空の分量や服の明るさに引っ張られるところはあるが、F値変化による露出変化が目立ちにくいというのは大変ありがたい。

ズームを多用するシチュエーションはそう多くはないと思うが、純正Eマウントレンズはもちろん、アダプタ経由のシグマレンズでもこんな挙動をしてOKということは、撮影に一つアクセントを加えることが可能になる。逆光時の暗部でも顔認識AFが動作してくれることもあり、顔が見えやすい大箱のライブ撮影などでは特に重宝するだろうと思った。今はEマウントレンズのラインナップの穴をシグマレンズで埋めつつ、いつの日かキヤノンのズームレンズでもなんらかの形でAFが使用できるようになり、さらにレンズ選びのバリエーションが増えることを祈ろう。

01特集2

▶作例動画

22 23特集2: Reviews -注目プロダクト- 01 ソニー FX9で試す絶妙レンズの嗜み ~シグマのEFマウントをMC-11でEマウント化~

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01 HDMI8入力/3出力を備える

02 小さいボタンはAUXやキーのソースセレクタ 03 本体モニターでのマルチビュー表示

04 PinP2系統、DSKのコントロール部 05 入力8にキヤノンXF405を接続。Recするとソース画面に録画マークが点く

今手に入れるべきスイッチャー

ローランド「V-8HD」の実力検証txt:小寺信良

多芸、多彩なコンパクトスイッチャー

スイッチャーとしてのV-8HDのスペックは、2キーヤー、2VFX(DVE)、1DSKを持つ1M/Eスイッチャーだ。ABバスで直接スプリットやVFXが設定できる点は、V-1HDやV-1SDIに近い。一方で2キーヤーやDSK、AUX BUSはV-60HDクラスの機能であり、内蔵ディスプレイでのマルチビューはVRシリーズのようでもある。加えてフットペダル機能は、V-02HD的でもある。先行機のいいところを全部集約したような設計だ。

HDMI での8入力だが、うちスケーラーが載っているのは7、8番のみとなる。カメラソースは1~6に、PCなどは7~8に、という使い方になるだろう。出力は3つあり、どの出力端子に何を出力するか自由にアサイン可能だ。ただ本体メニューが出せるのはHDMI 3のみで、そこはオペレーションモニター用という事になる。[01][02][03]

特筆すべきは、静止画のスチルストアが8枚分あることだろう。入力からのキャプチャも可能だし、USBメモリーからのファイル読み込みにも対応する。また不揮発性メモリーなので、電源を切っても内部のスチルストアが消えないのはうれしいポイントだ。対応フォーマットはBMPとPNGだが、アルファチャンネルには対応しない。

キーヤーとしては2系統。PinPとして利用するか、ルミナンスキー/クロマキーとして利用するかの選択となる。DSKはルミナンスキー/クロマキーには対応するが、PinP機能はない。またすべてのキーヤーで、エクスターナルキーには対応しない。[04]

外部コマンドの送受信

これだけの機能を、オペレーションの矛楯なく詰め込んでいるわけだが、ソースが多くなるほどやることが多くなり、ワンマンオペレーションは厳しくなる。経験豊富な「スイッチャー(人)」でも至難の技なのに、カメラマン兼任ではスイッチングに注力もできない。そのためにV-8HDには、便利な機能が用意されている。

もっとも簡単かつ効果的な機能が、フットスイッチだろう。V-02HDで初搭載された機能だが、BOSSの楽器用フットスイッチを接続して、様々な機能を割り当てることができる。FS-6というモデルなら1つの結線で2つのスイッチが

使用可能で、V-8HDはスイッチ入力が2つあるため、最大4スイッチが接続可能だ。

もう一つ便利な機能が、HDMI REC TRIGGERの対応だ。これはHDMIを経由で録画コマンドを送る機能で、まだ対応機種はそれほど多くないが、HDMI入力対応のフィールドレコーダーでは使えるものがある。

カメラを接続した際にも便利な機能がある。例えばキヤノンXF405には、「記録設定」のところに「記録コマンド」と「HDMIタイムコード」のON・OFF切り換えがあるが、この両方をONにすると、V-8HDのマルチソース画面内で、カメラが録画されているかどうかのステータスがわかる。[05]

HDMIは、SDIと比べるとランクが下のように見えるが、これらのコマンドのやり取りまで可能になってくると、「いつまでSDI使っているの?」という気になってくる。長距離の引き回しも、最近は光ファイバの変換ケーブルも出てきており、いろんな方法論が考えられる。

HDMIカメラを中心としたシステムは、どちらかというとローバジェットのように見られていたが、V-8HDはHDMIだからこそできるシステムが組めるスイッチャーだ。クライアントには内緒でかなりのコストを抑えながら、高水準の配信を実現できる秘密兵器として、V-8HDはV-1HD同様、多くの支持を受けるスイッチャーだと言えるだろう。

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24 25特集2: Reviews -注目プロダクト- 02 今手に入れるべきスイッチャーローランド「V-8HD」の実力検証

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2020年4月4日未明、Blackmagic Designは「ATEM Mini Pro」を発表した。ATEM Miniの上位版となるATEM Mini Proは、弱点をしっかり補強し機能強化され、大変魅力的な製品に仕上がっている。

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01

03 04

05 06

このタイミングに最適!

機能強化された

ATEM Mini Pro登場!txt:井上晃

待望のマルチビュー出力と、HDMI出力切り替えボタンを装備!

ATEM Mini Proは待望のマルチビュー出力が追加されただけでなく、1系統しかないHDMI出力をプログラムやプレビュー出力、更に1~4までのソースを送出するAUX出力も可能となった。また、フロントパネルに対応するボタンが新規装備され、実に簡単に切り替え可能になった。[01]

マルチビュー画面は、10分割マルチビューだが、4入力のATEM Mini Proに合わせた最適化が施されている。マルチビュー全体の割り当ては固定されており、下半分の入力ビューの上段部分にソースの1~4が割り当てられている。下段部分は左端にメディアプレーヤービューが割り当てられ、その右の3箇所には「配信ビュー」「収録ビュー」「オーディオビュー」が割り当てられた。

「配信ビュー」では、ライブ配信のON AIR、OFFの状況表示の他、配信データレート、キャッシュステータスなどを表示する。「収録ビュー」では、収録のREC・STOPの他、継続時間やドライブの空き状況などのステータスを表示する。「オーディオビュー」では、ソースのオーディオレベルやプログラム出力のレベルをモニタリング可能だ。

HDMI出力がマルチビューの出力だけでなく、切り替え式でソースやプレビューが出力可能になったことは、各ソースの詳細な確認や、クロマキーのセットアップも容易になったことを意味している。

出力タブの装備で様々な出力に対応!

ATEM Miniは、ビデオキャプチャ機能を装備し、USB接続と簡単な接続でPCなど配信エンコーダーへ映像を直接受け渡す機能(UVC対応機能)が大ヒットの要因がだった。ATEM Mini Proでは、上記の機能だけでなく、強力なH.264エンコーダーを装備したことで、ATEM Mini Proのみで直接ライブ配信が可能となった。[02][03]

ライブ配信はATEMソフトウェアの出力タブ中の「Live Stream」で設定する。配信の解像度とフレームレートはATEM Mini Proのシステム設定に準拠。つまりATEMのシステムが1080/30pなら配信も1080/30pとなる。配信するなら配信に向いたフレームレートを選ぶ必要があるということだ。ライブ配信の設定はこれだけであり、簡単ではあるが詳細な設定は現状では出来ない。

ATEM Mini Proでは、HDMI出力はマルチビューを使用し、ライブ配信にはRJ45LAN端子を使用すれば、USB-C端子が空いていることになる。これを利用しUSB-Cに外部ディスク/フラッシュドライブを接続すれば直接H.264ファイルに配信を収録することが可能となった。

本機にはディスクステータス・インジケーターが用意されており、収録メディアの状態を確認できる。フォーマット済みのメディアが検出され収録準備が出来れば、緑に点灯するので、あとは本機の「収録ボタン」を押すだけだ。

HDMI入力経由でのカメラコントロール

ATEM Mini Proでは、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K/6Kの両モデルを組み合わせると、カメラパラメーター、レンズ、タリーライト、内蔵DaVinci Resolveカラーコレクターのリモートコントロールなど、各カメラをスタジオカメラとして使用できる機能が追加された。[04]カメラコントロールがHDMIケーブル1本で可能になったことだ。[05]

総括

ATEM Mini Proは、昨今のライブ配信需要の高まりを真正面から受け止める製品であり、まさしく今の時代を正しくキャッチアップした製品だ。[06]プロ、アマを問わず多くの映像製作者をライブ配信という新しい映像制作の世界へと誘うことになるだろう。ライブ配信だけでなく、コンテンツを作成するライブプロダクションの世界が、よりプロフェッショナルな映像制作のスタイルとして定着することを望みたい。

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26 27特集2: Reviews -注目プロダクト-  03 このタイミングに最適! 機能強化されたATEM Mini Pro登場!

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発行人: 河野雅一編集人: 猪川知紀

AD/DTP: 高橋ケンイチ(beyonDesign)編集: 和田学、PRONEWS編集部

編集アシスタント: 上彩乃写真: 和田学、猪蔵、小山田有作

イラスト: Yu Nagaba広告: 中村静香

表2: 日本サムスン株式会社

01: パナソニック株式会社

03: ソニービジネスソリューション株式会社

28: 株式会社システムファイブ

表3: ローランド株式会社

表4: 一般社団法人 日本エレクトロニクスショー協会 2020年5月25日発行

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